旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


読書

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』を読み、心地よい空間のことを考える

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』 ファン・ボルム (著)、 牧野 美加 (翻訳) 会社を辞めたヨンジュは、ソウル市内の住宅街に『ヒュナム洞書店』をオープンする。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコー…

2024年本屋大賞発表。上位3位までの予想が的中。

2024年本屋大賞の結果が発表された。期待どおりに成瀬が大賞、しかも圧倒的。うれしい〜。個人的に一番推していたのが『成瀬は天下を取りにいく』。今期は文句なしにこれだよね、成瀬が取らずに一体どの作品が取るんだよというくらいなので、全国書店員…

勧善懲悪のスポーツ✕お仕事小説。池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』『陸王』

昨年秋からハマっている池井戸潤。下町ロケットと半沢直樹のシリーズ全作を読み終えて、最近読んだのが『ノーサイド・ゲーム』と『陸王』。どっちもおもしろかったー。 ノーサイド・ゲーム (講談社文庫) 作者:池井戸 潤 講談社 Amazon 大手自動車メーカーの…

仮想通貨でどこまで行けるか? チャン・リュジン『月まで行こう』感想

スピード感ありリアリティありで、あまりのおもしろさに一気読み。 メインキャラは韓国の大手製菓会社に勤める女性3人。20代後半・一人暮らし・経済的に余裕なし・会社での評価はまあまあ・未来への希望が見えづらい、という共通点を持っている。このうちの…

パワーアップした成瀬にまた会える!『成瀬は信じた道をいく』が期待以上のおもしろさ

宮島未奈さんの『成瀬は信じた道をいく』を読んだ。あまりにもおもしろくて一気に魅了された前作『成瀬は天下を取りにいく』の続編。シリーズもので最大限に期待がふくらむなか、こんなにも裏切らない、むしろ上をいく作品が現れるとは。 www.tabitoko.com …

殺し屋たちに愛着がわいてくる。伊坂幸太郎『777 トリプルセブン』

やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結…

早稲田大学へ。村上春樹ライブラリーへ行き、村上春樹と川上未映子の朗読を聞く。

3月1日に早稲田大学大隈記念講堂で開催された「春のみみずく朗読会」に行ってきた。村上春樹さんと川上未映子さんの朗読を主軸に、友情出演ということで村治佳織さん、小澤征悦さんも登場。これまでに味わったことのない種類の、なんとも贅沢で得難い時間…

小説はすばらしいけれど人間性はむちゃくちゃ。浅井まかて『ボタニカ』

朝井まかて『ボタニカ』を読んだ。 日本植物学の父と称される牧野富太郎の生涯を書いた小説。ひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類にのめりこみ、莫大な借金を抱え、学会や権威との軋轢を繰り返しながらも、まあなんとかなるだろうの精神を貫く富太郎。…

来週、村上春樹と川上未映子の朗読会に行く

早稲田大学大隈記念講堂で開かれる「春のみみずく朗読会」が一週間後に迫ってきた。村上さんと川上さんが登壇し、書き下ろし作品の朗読やトークをするもの。楽しみでたまらん。 そういうイベントがあるらしいと知ったのが昨年末。村上春樹好きの友人Sちゃん…

チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』がよかった

図書館でなんとなく手にとって借りて、とてもおもしろく読んだ。著者は1986年生まれ、韓国の気鋭の作家。この本は表題作を含む8編の短編集で、2020年韓国の「書店員が選ぶ今年の本」で小説部門を受賞している。 なかでも好きだったのが「助けの手」。世代や…

本屋大賞の候補10作品と、読んだ4作の感想

2024年本屋大賞ノミネート作品が発表されている。全10作。毎年この時期に、「本好きがおすすめする読むべきリスト」として活用している。 本屋大賞の初期の頃は、まだ知られてないおもしろ本を発掘して「こんなのがあったのか!」とうなる要素が多かった気が…

綿矢りさ『パッキパキ北京』感想&万城目さんの直木賞待ち会エピソードが楽しい

綿矢りさの最新作は、コロナ禍まっただなかの北京が舞台。 コロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲(アヤメ)。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ…

万城目学『八月の御所グラウンド』感想。来週は森見登美彦と成瀬あかりの新刊も。

直木賞が発表されましたね、今回はダブル受賞で河崎秋子さん『ともぐい』と万城目学さん『八月の御所グラウンド』。『ともぐい』の受賞は絶対あると思ってた。先日の感想ブログで、これが受賞すると思うと予想してたのが当たった。だってものすごいもの、書…

河﨑秋子『ともぐい』感想

明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。 河﨑秋子さんの『と…

2023年12月に読んだ本。まいまいつぶろ、アーモンド、君が手にするはずだった黄金について、ほか。

読書記録を1ヶ月毎にまとめる試み、2023年分を完走。2023年は93冊読んだ。年間ベストはそのうち記事を書くとして(たぶん)、12月分の振り返り。 森バジル『ノウ・イット・オール』(84) ソン・ウォンピョン『アーモンド』(85) 池井戸潤『ロスジェネの逆…

2023年11月に読んだ本。下町ロケットと半沢直樹にハマり続けていた。

12月31日、大晦日。多くのブログで「2023年に読んだ本」とか「2023年におもしろかったベスト10冊」とかの振り返り記事がアップされてるのを眺めつつ、一歩遅れて「11月に読んだ本」を大急ぎで書いている。紅白が始まるまであと1時間ちょっと。目の前に2024年…

2023年10月に読んだ本。『意識のリボン』『前の家族』『銀二貫』など。

さあ年末が迫ってきたぞ、たまっていた振り返りを進めるぞ、の一念。必死。といっても10月に読んだ本は少なくて5冊だけ。仕事がたてこんで本を読む時間がとれなくて、だからこそ読書を渇望している時期だった。書名のあとの数字は今年の読了冊数。 キム・チ…

2023年9月に読んだ本。『卒業生には向かない真実』『深く、しっかり息をして』『女人入眼』ほか

大慌てで9月の読書の振り返り。この月は10冊読んだ。なんといっても『卒業生には向かない真実』がすごかったーーー!!! あと川上未映子のエッセイ集もよかった。 ホリー・ジャクソン『優等生は探偵には向かない』(60) 永井紗耶子『女人入眼』(61) 穂…

高瀬隼子『うるさいこの音の全部』感想

ゲームセンターで働く長井朝陽の日常は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから軋みはじめる。兼業作家であることが職場にバレて周囲の朝陽への接し方が微妙に変化し、それとともに執筆中の小説と現実の境界があいまいになっ…

2023年8月の読書記録。自由研究には向かない殺人、ヒエログリフ、朝星夜星など。

8月の読書記録をやっと書く。(あと20日もすれば師走だというのに!) 村上春樹『街とその不確かな壁』(50) 西加奈子『くもをさがす』(51) 鈴木忠平『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』(52) 恒川光太郎『真夜中のたずねびと』(53) …

じわじわと恐ろしい、青山七恵『前の家族』。不穏と好意、ほしかったものと失ったもの。

青山七恵さんの小説、『前の家族』を読んだ。 37歳、独身、小説家・猪瀬藍は、中古マンションの購入を決意。夫婦と娘2人の4人家族が暮らす物件を内見し、理想的なマンションに出会えたと契約を結ぶ。しかし、マンション購入はその物件だけではなく周りの環境…

笑えて独創的で、ときに鋭い切れ味。綿矢りさ『意識のリボン』

それぞれの立場でままならない世界を生きる女性たちの8つの短編集。どれも小説のようなエッセイのような味わい。綿矢作品は、視点の特異さやそれを文章にするときのうまさ、ユーモアやコメディタッチの加減が好きなんだけど、その意味でこの作品集も最高だ…

2023年7月の読書記録。20年ぶりの『青の炎』と、直木賞『木挽町のあだ討ち』がよかった

読書の振り返りをまとめるのがまた出遅れて、今さら7月の読書記録。引き続き3か月遅れ。7月は、北海道旅行に行ったりコロナで寝込んだりであまり読書がはかどらなかった。タイトルを見てもなんかあまり印象に残ってない。すでに記憶が遠い…。カッコ内は今…

『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ

SF短編集。どの作品も、やさしさや静けさの余韻があたたかく残るものだった。 表題作の、もの悲しく美しい映像が浮かぶような舞台が好き。宇宙の片隅で見捨てられたステーション、4人掛けのベンチが並ぶ誰も来ない待合室、大きなガラス張りの窓の外は星空。…

清々しく前向きになれるお仕事小説。永井紗耶子『大奥づとめ』

永井紗耶子さんの『大奥づとめ』を読んだ。 上様の寵愛こそすべて、とは考えなかった女性たちがいた。御手つきとは違い、昼間の仕事に励んだ「お清」の女中たち。努力と才覚で働く彼女たちにも、人知れず悩みはあって……。里に帰れぬ事情がある文書係の女、お…

穂村弘・春日武彦の対談『ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと』感想

最近読んだ、春日武彦&穂村弘の対談集がおもしろかった。あらゆる本を読みまくっている精神科医と歌人が死をテーマに語りつくす。このふたりの組み合わせにはいつだって知的好奇心を刺激される。 ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと 作者:春日 武…

2023年6月の読書記録。成瀬あかりとネネと青山文平にハマる。

9月になった。稲刈りのあとの草の匂いや、夜の虫の声。季節は移ろうが私の読書記録は3か月遅れのまま。6月は9冊読んだ。カッコ内は今年の読了数。 齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』(36) 平野啓一郎『空白を満たしなさい』(37) 宮島未奈『成瀬は天下…

夫と本の趣味が合うらしい

現在の我が家の本棚。夫婦で読みたい本とタイミングが重なるとこんなことになる…! 「木挽町のあだ討ち」がすばらしくおもしろかった。構成がうますぎる。これは一切の前情報を入れずに読むべき。なんとも粋で痛快で、登場人物みんなの生き方が愛おしくなっ…

日本近代化を支えた、長崎発の洋食店。朝井まかて『朝星夜星』感想

幕末から維新、明治と激動の時代の外交を料理で支えた男がいた。長崎生まれの料理人・草野丈吉で、店の名は「自由亭」。貧しい農家に生まれた丈吉は、18歳で出島の仲買人に雇われ、ボーイ、洗濯係、コック見習いになる。21歳でオランダ総領事の専属料理人に…

『ヒエログリフを解け』古代エジプトへの興味が開かれる刺激的な読書

エドワード・ドルニック著『ヒエログリフを解け ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース』を読んだ。 千年以上、誰も読むことができなかった古代エジプトの謎の文字"ヒエログリフ"。解読のきっかけは、ナポレオンのエジプト遠征でヒエ…