旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。



読書

森見さんの頭の中をのぞく対談集『ぐるぐる問答』

森見さんの対談集『ぐるぐる問答』を読み終えた。対談相手の顔ぶれがいい。劇団ひとり、萩尾望都、綿矢りさ、羽海野チカほか。森見さんの考えていることやお話のつくり方がよくわかって、森見ファンとしてはおもしろく読んだ。 作品の舞台を京都にすることで…

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』を読んだ。 あーおもしろかった。章によって、異なる時間軸・視点から人物像を描いていて、ミステリーぽい要素があってわくわくぞくぞく。読みすすめるごとに、登場人物の性格や人間関係を見る角度が少しずつ変わ…

食べ物と家族と暮らしのこと。宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』

宮下奈都さんのエッセイ『とりあえずウミガメのスープを仕込もう』を読んだ。雑誌に連載された、食べ物にまつわる短い文章を集めたもの。こまぎれの時間で気軽に読めそうなのと、単に私がおいしいもの系エッセイが好きだから。 食べ物がテーマだけど食べ物そ…

近未来の監視社会に、行動力と超能力で立ち向かう。森絵都『カザアナ』感想

森絵都さんの『カザアナ』を読んだ。 舞台は近未来の日本、観光戦略の一環として過剰な〈古き良き日本らしさ〉が求められる社会。人々は常に監視され、言動のいちいちに点数が付けられて評価されている。なんて末恐ろしいディストピアな設定……と思ったけど、…

読みたい本が多すぎて、図書館の本を借りまくる(読めるかどうかは別問題)

読みたい本がたまりすぎて消化が追いつかない今日この頃。今日この頃どころか、ここ一年くらい慢性的にそんな状況である。0歳児と暮らしていると自分のための自由時間なんてのはものすごく貴重で、日中に許された読書タイムは子の昼寝中くらい。そのすきに「…

愛娘への思いがあふれまくるエッセイ、角幡唯介『探検家とペネロペちゃん』

角幡唯介さんのエッセイ『探検家とペネロペちゃん』を読んだ。著者は太陽の昇らない北極での単独探検を書いた『極夜行』でノンフィクション大賞を受賞した探検家。ペネロペちゃんというのは角幡さんの愛娘の通称で、この本は、角幡さんが娘をどれだけ愛し、…

2019年の目標振り返り。体重管理とか投資とか読書とか。

あと二週間で2019年が終わる。終わっちゃうよ~、早いよ~! というわけで、年始に立てた目標を振り返るべく、手帳の1月1日のページを開いてみた。年のはじめに考えていたことと、その達成具合。 ・産後、体重を出産前に戻す →達成 出産前に立てた目標。出産…

死んでからも生き続ける子どもたちへのやさしい眼差し。小川洋子『小箱』感想

小川洋子さんの小説『小箱』を読んだ。なんてすばらしい。今年読んだ本の中でいちばん好きかも。 どことはわからないどこかの街で、元幼稚園だった建物に暮らす女性。彼女は講堂に並べられたガラスの箱の番人で、その箱は、死んだ子どもたちの未来を保存する…

夫よ、すまぬ。押入れの断捨離の前に、自分の記憶を整理すべきだった。

ふと図書館で借りて、断捨離のやましたひでこさんの本を読む。『定年後の断捨離』。定年の年齢はまだ先だけれども。 何がそんなに私の琴線に触れたのか、読んでいる最中から、どんどん捨てて身軽になりたい!という気持ちがふくれあがる。「いま見える範囲に…

生まれてくることの意味はまだわからないけれど。川上未映子『夏物語』感想

川上未映子さんの『夏物語』を読む。大長編。 独身で恋人のいない主人公・夏子には、自分の子どもを生みたいという思いがある。その方法として精子提供を受けることを考えるが、精子提供で生まれ性的虐待を受けてきた女性に出会い、「生まれてくることには苦…

8人に1人が貧困状態、でも働かない・働けない? 『貧困専業主婦』

タイトルのインパクトにひかれて読んだ『貧困専業主婦』(周燕飛/新潮社)。 ここに示されたデータによると、経済的に苦しい状況にありながら働かないことを選択している女性は少なくなく、専業主婦の8人に1人が貧困状態にあるという。衝撃的。しかし、彼女…

奇妙で不穏、でも愛おしい気持ちになる。小川洋子『原稿零枚日記』

小川洋子さんの『原稿零枚日記』を読む。エッセイや日記ではなく、日記調で書かれた小説。書き手は女性作家で、特技は他人の作品のあらすじをまとめること。その技術は天才的なのに自身の原稿はいっこうに進む気配がなく、日記の文末に書き記している原稿の…

島本理生『あなたの愛人の名前は』感想

島本理生さんの小説『あなたの愛人の名前は』を読む。6つの短編がおさめられており、ある恋愛を男女それぞれの視点から描いたものとか、同じ人物が別の話にも登場したりとか、人間関係やエピソードが少しずつ重なり合っている構成がよかった。 「足跡」「あ…

歌の向こう側にある景色や気分を読む。東直子・穂村弘『しびれる短歌』

新聞の書評欄を見てひかれた、『しびれる短歌』を読んだ。歌人の東直子さんと穂村弘さんによる対談集。私はお二方の短歌がかなり好き。穂村さんは散文も大好き。 しびれる短歌 (ちくまプリマー新書) 作者: 東直子,穂村弘 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: …

阿川佐和子『ことことこーこ』感想。親の介護と自分の生活と。

阿川佐和子さん『ことことこーこ』を読んだ。 認知症が進む実母・琴子(ことこ)と、その娘である私・香子(こうこ)の物語。症状が進んで物忘れがどんどんひどくなっていく母親に加え、関係がしっくりきてない弟とその妻、仕事での失敗といったエピソードが…

パン切り包丁のデビューと、ペリカンの食パンと、雑誌「CREA」のパン特集

結婚式の引出物にカタログギフトをいただいて、「持っていないけれどそういえばほしかったもの」「友人との関係が何かしらあるもの」がいいなーと考えていたところ、うってつけのものを見つけた。 パン切り包丁! そういえば持ってない。家でパンを切るたび…

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』感想。展開の爽快感と、読後のモヤモヤと。

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』を読んだ。あらすじも設定も知らぬまま、なんとも不思議な表紙だなあと思いながら。 久々に読む伊坂作品、終盤の仕掛けにぞわぞわと興奮した。語り手のセリフに何度も出てくる「僕が話していることには嘘がまざっている」という…

2019年10月発行予定、『十二国記』の新作が待ち遠しい

読まない本はバンバン捨てまくる!という意気込みのもとに実家の本棚を整理中、小野不由美さんの『十二国記』シリーズが出てきて片付けの手が止まる。大好きな作品だから、これは絶対に手放せない。 十二国記を初めて知ったのは高校生のとき。茶道部の友人が…

暗くて不安で、だからこそ明るさを信じたくなる。上田岳弘『ニムロッド』感想

第160回芥川賞受賞、上田岳弘さんの『ニムロッド』を読む。 よく「ビットコイン小説」「仮想通貨小説」という紹介をされているが、仮想通貨について何も知らない私のような読者でも大丈夫、作中で語られる仮想通貨の仕組みについて「ふむふむそういうことな…

悪魔のおにぎりはここで生まれた。南極調理隊員による著書『南極ではたらく』

渡貫淳子さん著、『南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる』を読了。著者は、去年話題になった「悪魔のおにぎり」を生んだ人。 調理隊員の仕事は、昭和基地における南極越冬隊の一員としてメンバーの食事を担うこと。持ち込む食材は隊員30名分×1年4か月…

未知なる胎児を見てみたら。最相葉月『胎児のはなし』を読む

産婦人科医の増崎英明先生とノンフィクションライターの最相葉月さんによる対談集。一冊まるごと「胎児」についてさまざまな角度から話題にしていて、そういえば自分は胎児のことをほとんど知らないな、というか知ろうとしたことがなかったなと気づいた。 現…

ひとりで北極を歩くための準備とは。角幡唯介『極夜行前』の感想

角幡唯介さんの『極夜行前』を読了。 太陽が昇らない極夜の北極を4ヶ月間かけて歩いたノンフィクション『極夜行』の、計画の経緯や準備の様子を描いた探検記。北極というほとんど未知の場所、しかも暗闇の中を4ヶ月間も歩き続けるというのだから未知も未知…

春の雪の日に、角幡唯介『極夜行前』を読んでいる

寒い朝。起きて外を見たらなんと雪が積もっていた。屋根や車の窓にうっすらと。嘘でしょう、もう4月だぞ。ここ石川県の金沢市では昨日4月1日に桜が開花。桜のたよりと同時に雪かぁ。4月の積雪は7年ぶりのことだそうで、全然ないってわけではないのだな、そ…

まだ見ぬおやつ、アップルシュトゥルーデルへの憧れ

世界各地の旅先で出会ったお菓子を紹介した本、「旅とデザート、ときどきおやつ」を読んで、美味しそうだなあと思ったのが「アップルシュトゥルーデル」というお菓子。名前からはどんなお菓子なのか想像もつかないのだけど、説明によると「りんご・レーズン…

共感はしないけど今っぽさはわかる。古市憲寿『平成くん、さようなら』感想

第160回芥川賞候補作になった古市憲寿の「平成くん、さようなら」を読んだ。以下、ネタバレありなので、ご承知おきのうえ読み進めてください。 率直な感想は、「いけすかない主人公だなー、勝手にしたら?」からの「えっ、実は難病もの?」、そして「ラスト…

南極探検の裏表を知るおすすめの2冊。全員生還のシャクルトン隊と、彼に消された男たち

一年前(2018年2月)に南極旅行に行ったことがきっかけで、それからずっと、南極や北極に関するノンフィクションを好んで読んでいる。 最近読んだのは、1900年代初期(今からおよそ100年前)に南極大陸横断を試みた探検隊にまつわる2冊。どちらか1冊だけを読…

どうしてこんなに洋菓子が好きなのか(しかも和菓子も好き)

最近よく眺めている、雑誌ブルータス2018年11月1日号「洋菓子好き」。年が明けてからほしくなり、バックナンバーを探し出して購入した。 紹介されている洋菓子および洋菓子店は東京のものがほとんどなのですぐには買いに行けないんだけど、誌面を見ながら美…

1冊まるごとあんこの本と、野々市【土九】のたい焼き

このブログにもよく書いているとおり生クリームと乳脂肪が大好きな私だが、それと同じくらいあんこも大好きだ。ようかんもきんつばもいいけれど、「あんこ+何か」の組み合わせが好きなので、大福、ぜんざい、おはぎあたりは大好物。 もちろん、たい焼きも。…

2018年、観てよかった映画3作&読んでよかった本5冊

2018年も残りあと3日となった。年がかわることに対して感慨も実感も特になし。年賀状は早めに出し終え、おせち料理は出来合いのものを数品購入済み、トイレもお風呂も台所も普段から掃除しているから大掃除は省略、って感じのゆるゆるな年末だ。 今年の手帳…

2018年の私的第一位、森見登美彦『熱帯』感想

森見さんの新刊(2018年11月)、『熱帯』を読み終えた。 最後まで読み終えた人が誰もいないという幻の本『熱帯』の謎をめぐる壮大な物語。冒頭には作者である森見さん本人が登場して『熱帯』の謎に迫ろうとするのだが、同じく『熱帯』にとりつかれた人物たち…