旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。



読書

柚月裕子『盤上の向日葵』感想

盤上の向日葵 柚月裕子 盤上の向日葵(上) (中公文庫) 作者:柚月裕子 中央公論新社 Amazon 実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ?さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ…

笑いながら落下できればそれでいい。一穂ミチ『パラソルでパラシュート』 感想

一穂ミチ『パラソルでパラシュート』 パラソルでパラシュート 作者:一穂ミチ 講談社 Amazon 大阪の一流企業の受付で契約社員として働く柳生美雨は、29歳になると同時に「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた。その記念すべき誕生日、雨の夜に出会った…

17歳の、友情や希望のきらめき。乗代雄介『パパイヤ・ママイヤ』

乗代雄介『パパイヤ・ママイヤ』 パパイヤ・ママイヤ 作者:乗代雄介 小学館 Amazon これは、わたしたちの一夏の物語。 ほかの誰にも味わうことのできない、わたしたちの秘密。 この冒頭の2行。これだけでもうまぶしい。夏が起こした奇跡のような出会いを予…

綿矢りさ『オーラの発表会』。著者の感情描写と言語センスが炸裂してる

綿矢りさ『オーラの発表会』 オーラの発表会 (集英社文芸単行本) 作者:綿矢りさ 集英社 Amazon 主人公、海松子(みるこ)のキャラが独特でぶっとんでる。海松子が、というか綿矢りさが面白すぎてびっくりした。人物描写のすくいあげ方と言葉選びのセンスが秀…

じわじわと恐ろしい、道尾秀介『いけない』

いけない (文春e-book) 作者:道尾 秀介 文藝春秋 Amazon 読者が参加する謎解きゲームのような趣向のミステリー小説。全4章。 以下、構成や内容に関する記述あり。 各章を読んだあと、章末にある図(写真)を見て、本文には書かれていない事実を知るという趣…

西加奈子『夜が明ける』感想

若年層の貧困、児童虐待、ブラック企業での地獄のような労働といった問題を織り込みながら、30代男性どうしの友情や絶望や救済を描いた長編小説。 夜が明ける 作者:西加奈子 新潮社 Amazon 児童虐待とか子どもの貧困って、当人には何の落ち度も原因もないの…

話題のSF小説『三体』が面白い。『三体』第二部はもっと面白い。

SF界隈で超話題の『三体』を読んでいる。三部作のうち一部と二部を読了。時間的距離的なスケール感がものすごく大きいのと、著者の知識と想像力の果てしなさに圧倒され続ける。面白いなんていう一言ではおさまらない、桁違いの興奮だった。 内容を超ざっくり…

科学と技術と友情は強い!『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー 早川書房 Amazon アンディー・ウィアー著『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読了。 文句のつけようがなく、素晴らしく面白かった。文字どおりの意味で「宇宙規模」な一大プロジェクトの、スケー…

推理小説の前提を揺るがす『虚無への供物』中井英夫

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫) 作者:中井英夫 講談社 Amazon とても独特で型破りなスタイルの推理小説だった。 氷沼家で起こる密室の連続死に対して、登場人物たちが推理合戦を繰り広げる。全編をとおして、ひたすら互いに推理の披露。その内容に…

戦国×ミステリーがばっちりハマる面白さ。米澤穂信『黒牢城』

米澤穂信さんの『黒牢城』読了。ここ数ヶ月に読んだ小説でいちばん好き。 ミステリー各賞を総ナメしていたのでミステリーなんだなということはわかってたけど、歴史小説かつミステリーってどういうことなのか想像もつかず。前知識なしで読み始めたら、これが…

ひらみぱんのカヌレ、『十角館の殺人』、踏切の世界

|ひらみぱんのカヌレ ののいちカレード(図書館)に行ったついでに、併設のパンコーナーをのぞき、ひらみぱんのカヌレを買った。表面はがっちり固めで、ナイフを「入れる」というより「突き刺す」くらいの容赦なきガリガリぐあい。中はむっちりムニムニで、…

ミスドのヴィタメールドーナツで一番おいしいのはショコラノワゼットだと思う

ミスドブーム到来中で、この5日間で3回購入した。ヴィタメールのチョコドーナツがおいしすぎてどうしようもない。先日の健康診断で「中性脂肪に気をつけなさい」と指摘されて危機感を覚えたはずなのに、心の底から確かに反省したような気がするのに、ドー…

文学への愛と尊敬がほとばしる。『ものがたりの賊』真藤順丈

『ものがたりの賊(やから)』真藤順丈を読んだ。 ときは大正時代、関東大震災の被害と軍部台頭の混乱のなか、富士の樹海で生まれた悪鬼が正体不明の感染病をまきちらしながら東京に侵略。帝都を、日本を守るため、時を超えて結集した人物たちが立ち向かう!…

祝・懸賞当選、そして図書館POPコンテストの結果発表

秋に加賀しずく(石川県産の梨)キャンペーンに応募したら、忘れた頃にメールがきて「おめでとうございます、当選しました。つきましては3つのうちから賞品を選んでください」と。トートバッグ(売るほど持ってる)、お皿(ペアならうれしいけど1枚だけか…

記憶力はまずいけど、趣味はブレてなかった

職場の昼休みに本を読むことを何よりの楽しみにしている私だが、今日はショックなことがあった。急いでパンを食べ終え、さあ読むぞと図書館で借りた小説を開く。表紙をめくったところに見開きのイラスト地図があり、それはどうやら物語内の世界地図らしいの…

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に自分の育児を考える

話題作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ。 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon イギリス在住ライターによるエッセイ。主役はイギリスの「元底辺中学校」に通う息子で、そ…

朝井リョウ『正欲』 想像の外にあるものを「認める」ことはできるのか

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」これは共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 正欲 作者:朝井リョウ 新潮社 Amazon 読み終えたあとしばらく、頭の中に渦巻く感情を言葉にまとめられず。人のレ…

記憶と違うドーナツ、ただただ楽しい森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』

コロナワクチン2回目接種後のだるさはすっかり消えた。翌日と翌々日午前中は全身が使いものにならない感じだったけど、その後はぶり返すこともなく。どこも痛くないというのは、それだけで素晴らしくありがたいことよのう。 ミスドのオールドファッションが…

村上春樹が気になるこの頃。「多崎つくる」と「騎士団長殺し」の考察本ほか。

夏の初めごろから私の中で村上春樹ブーム。長編『騎士団長殺し』を読み終えたあと、長編『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、自伝的エッセイ『職業としての小説家』を読んだ。 『騎士団長殺し』をおもしろく読んだという感想は前に書いたとおり。…

身近な人が日常から逸脱してしまったら。『水たまりで息をする』感想

高瀬隼子『水たまりで息をする』を読んだ。 水たまりで息をする (集英社文芸単行本) 作者:高瀬隼子 集英社 Amazon ある日、夫が風呂に入らなくなった。夫は、水道水がカルキくさいといい入浴を拒み続ける。妻はペットボトルの水で体を洗うように言うが、夫は…

土九の五郎島金時たいやき。毒吐き大盛りの「文学賞メッタ斬り!」がおもしろすぎ。

久しぶりに、野々市は土九(つちく)のたいやきを買う。暑い間はご無沙汰していたけど、やっと涼しくなってきて焼きたてが恋しい季節。 9・10月の限定味は五郎島金時あん。一年ぶりにいただきます。ひとくちかじると記憶以上においしくて震えた。ねっとり…

ケーキが食べたくなる小説『西洋菓子店プティ・フール』

栗のお菓子がならぶシーズン到来。バームロールのマロンクリーム味、キットカットのモンブラン味……栗好きにはうれしい季節。キットカットのパッケージかわいいなあ。おいしいモンブランを求めてケーキ屋さんに行きたくなる。 * * * いま読んでいる千早茜…

気球飛行、氷上に不時着、地図にない島に上陸後、全員死亡。『北極探検隊の謎を追って』感想

お盆の時期。私と夫と子ども(保育園)の休みは少しずつずれていて、二人は休みなのに私だけ出勤とか、反対に私だけが休みの日もある。まとまった夏休みという感じはなく、今日が何曜日なのかの感覚がだんだん怪しくなってきている。 最近読んだ本。『北極探…

性に奔放な生き物たち。『南極探検とペンギン』がおもしろい

『南極探検とペンギン』ロイド・スペンサー・デイヴィス著 「本の雑誌」および日経新聞書評欄の紹介にひかれて手に取った。数年前から南極および北極探検ものが好きでときどき読んでいるのでおもしろかった。歴史や知識がつながって「あ~、あれね!」ってな…

評判はいろいろだけど私は好き。村上春樹『騎士団長殺し』

村上春樹『騎士団長殺し』を読んだ。上下巻で1000ページ超えの長編。とてもおもしろかった。読む前に想像していたのよりずっと、意外なほどおもしろかった。 村上春樹の小説を読むのはたぶん『海辺のカフカ』以来。数えてみたら18年ぶり(そんなに経つ…

『爆弾魔 続・新アラビア夜話』小説3冊分くらいのエピソードと読みごたえ

『爆弾魔 続・新アラビア夜話』 R・L・スティーヴンソン、ファニー・スティーヴンソン 「本の雑誌」の新刊紹介がめっちゃおもしろそうだったので図書館で借りてきた。タイトルのとおり前作があっての続編なのだけど、作者による前書きで書かれているように前…

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』さくさく読んだけど、さらなる爽快感がほしかった

本日6月16日は「和菓子の日」だそうな。さっき知った。和菓子をつまみながらこのブログを書いていますと言いたいところだけど、いまシュークリームを食べている。美味。このあとリングフィットアドベンチャーをするから、その分のカロリーの前借り(?)…

コロナ禍で心の余裕をなくしていく世界。桜庭一樹『東京ディストピア日記』

桜庭一樹『東京ディストピア日記』を読む。 桜庭さんが私的に書いていた日記を加筆編集して本の体裁にしたもの。桜庭さんが経験して感じた、コロナ禍の今のリアルが書かれている。おもしろいというよりは、淡々とした記録集のよう。読みながら、自分自身の記…

家族の情と、お菓子がつなぐ縁。西條奈加『まるまるの毬』

西條奈加さんの『まるまるの毬(いが)』、続編の『亥子(いのこ)ころころ』 を読んだ。心にあたたかい気持ちが静かに灯るような、いい読後感。 ちょっと前に読んだ同じ作者の『心淋し川』もそうだったけど、誰もがなにかしらの痛みや秘密を抱えていて、ど…

人生はしんどいけど、ささやかな希望は必ずある。西條奈加『心淋し川』

直木賞受賞作、西條奈加さんの『心淋し川』を読んだ。タイトルの読み方は「うらさびしがわ」。漢字変換に手間どる。 江戸のとある小さな町、よどんだ川べりにひしめく貧乏長屋に暮らす人々を描いた6つの短編の連作集。1話ずつ登場人物が異なり、趣も展開も…