旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。



読書

たいやきからドーナツへの一時的な浮気

図書館の雑誌コーナーを見ていたら、ダ・ヴィンチ最新号(2021年2月号)がセーラームーン特集だった。表紙のセーラームーンがかわいくて目が吸い寄せられる。セーラームーン、ストーリーや結末にはそれほど関心も思い入れもないのだけど(単行本は途中で買う…

青山七恵『みがわり』感想。文章に引き込まれ、虚構世界に飲み込まれる。

文句なしにおもしろかった。帯に「予測不能のラストに向かって疾走」とあるけれどまったくそのとおり。二転三転の展開にとてつもない衝撃を受け、呆然。同時に、物語に翻弄されることの幸福を感じた。 新人作家の律は、ファンを名乗る女性から亡き姉の伝記を…

2020年の読書記録まとめと、特に好きな小説3選

2020年に読んだ本の記録を時系列で。★はよかったもの、★★はその中でも特によかったもの。印象深い三冊をあげるならば、『ザリガニの鳴くところ』『なめらかな世界と、その敵』『わたしの美しい庭』かな。 探検家とペネロペちゃん(角幡唯介) カザアナ(森絵…

年末は三浦しをんまつり。『政と源』『のっけから失礼します』

三浦しをんさんの『政と源』を読んだ。国政と源二郎、それぞれ70歳を過ぎた幼馴染ふたりの、友情と人情味あふれる日常の物語。全体的にドタバタしてコミカルな印象で、ものすごーく軽く、さらっと読み終わった。 政と源 (集英社オレンジ文庫) 作者:三浦 しを…

伊吹有喜『雲を紡ぐ』

伊吹有喜さん『雲を紡ぐ』を読んだ。夫が図書館で借りていたものを横取りして先に読了。 主人公は東京に暮らす不登校中の女子高校生。母は職場の悩みを抱え、父は家に居場所がないと感じており、家族の心はバラバラな状況。そんななか、主人公は岩手にある祖…

凪良ゆう『わたしの美しい庭』

凪良ゆう『わたしの美しい庭』を読んだ。すごく好きだった。読後感さわやか。屋上庭園にあふれる光や緑、そこに集う人たちの優しさやまっすぐさを思って、心がキュッとなる。開放感のあるカバーイラストが、読後の印象にぴったり。 登場人物の多くが世間の「…

小説『ザリガニの鳴くところ』感想

『ザリガニの鳴くところ』読了。 各所で評価の高い小説。とてもよかった。どんなふうによかったのかを伝えたい反面、一切の前情報・先入観なしで読んだほうがいいよ!と強く言っておきたい。そんな矛盾をはらみつつ、以下ややネタバレあり。 親も兄弟もなく…

知られざる初登頂者の謎に迫る。高橋大輔『剱岳 線の記』

探検家・高橋大輔さんの『剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む』を読んだ。 記録に残る剱岳の初登頂は明治40年、測量技術者の柴崎芳太郎によるもの。このとき柴崎は山頂でとんでもないものを見つける。それは、古代に造られたものと思われる錫杖と…

本を読みたい気持ちにさせる、Eテレ「本の道しるべ」

静岡銘菓の追分羊かん。実家の母から送られてきた。過去にも何度か書いてるけど、この世のようかんで間違いなく一番好きだと断言できる。むっちり詰まっていて、しっかり固くて、きめこまかい。ベタベタせずさっぱりした食感。ようかんを包んである竹の皮ご…

静かなスタバで、大学芋フラペチーノと読書の秋

平日昼間にどうにか時間をひねり出し、久々のスターバックスへ行った。年内に有効期限がきれるドリンクチケットがあったのと、期間限定の大学芋フラペチーノを試してみたかったから。 店内をぱっと見たところ半分以上が空席ですいてるなーと思ったけど、いざ…

少女たちの苦悩と救いと未来への希望。安壇美緒『金木犀とメテオラ』

とても好きな小説だった。少女が主人公の作品に私が期待するものが全部詰まっていた感じ。少女ならではの自意識や清冽さや意地や純粋さは、読んでいて息が詰まりそうなほど苦しいのに、同時にまぶしくてきらきらして見える。 舞台は北海道に新設された中高一…

凪良ゆう『流浪の月』感想。孤独と、誰にも名付けられない二人の関係性と、救済。

凪良ゆう『流浪の月』を読んだ。2020年本屋大賞受賞作。 流浪の月 作者:凪良 ゆう 発売日: 2019/08/29 メディア: Kindle版 読んでいる間ずっと夢中になり続けるようないい時間だった。おもしろくてやめられず没頭しながらも、ふとページから顔を上げて思考を…

吉村昭『漂流』感想。観察と経験と応用力が大事。生き抜くためにはボーッとしてちゃダメだなと思った。

吉村昭『漂流』を読んだ。このところ吉村氏にはまっており、高熱隧道、羆嵐についで3冊目。 www.tabitoko.com www.tabitoko.com 漂流、めちゃくちゃおもしろかった。現時点の吉村作品で第1位(まだ3冊しか読んでないけど)。 絶体絶命の苦境にひとりきり…

中身は秘密の「はてなパック」と、バターが香る1冊

週に一度は行く図書館で、貸出図書のおもしろい企画をやっていた。その名も「はてなパック」。紙袋にテーマが書いてあり、図書館員が選んだ本が1~3冊入っているというもの。袋を開けるまで中にどんな本が入っているのかはわからない。 「手紙」「災害」な…

実際にあった、恐怖のヒグマ被害事件。吉村昭『熊嵐』

吉村昭『羆嵐(くまあらし)』 先に読んだ黒部ダム建設の記録小説『高熱隧道』がおもしろかったので、吉村昭さん第二弾。北海道のある村で実際に起きた、ヒグマが民家を襲って人間を殺害したという三毛別羆事件に取材した小説。 まず、ヒグマが人を食べると…

異世界に没頭させるSF集『なめらかな世界と、その敵』

伴名練『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)を読んだ。 短・中編が6作入ったSF集。この人とは趣味が合うなぁと一方的に信頼しているブログの主が、「びっくりするほど面白かった」と評していたのがきっかけ。 作者の名前も作風もあらすじも知らないまま…

難関トンネル工事の『高熱隧道』、読書の友には細長いパン

1歳児との暮らしにおいて実感していること……平日も休日も関係なく、「自分の時間」をとるのが難しいということ。子が起きている間はかかりっきり、子が寝ている間は家事全般やること山盛り、ひととおり片付いて「よしやっと自由時間!」と思う頃には体力が…

パンにまつわるおいしいアンソロジー、『こんがり、パン』

河出書房新社『こんがり、パン』を読む。小説家、随筆家、詩人、翻訳家など41人が書いたパンにまつわる文章を集めた本。1編が4~6ページと短めで、細切れ時間に少しずつ読めるのがいい。 こんがり、パン(おいしい文藝) 作者:原平, 赤瀬川,佐和子, 阿川,夏…

森見さんの頭の中をのぞく対談集『ぐるぐる問答』

森見さんの対談集『ぐるぐる問答』を読み終えた。対談相手の顔ぶれがいい。劇団ひとり、萩尾望都、綿矢りさ、羽海野チカほか。森見さんの考えていることやお話のつくり方がよくわかって、森見ファンとしてはおもしろく読んだ。 作品の舞台を京都にすることで…

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』を読んだ。 あーおもしろかった。章によって、異なる時間軸・視点から人物像を描いていて、ミステリーぽい要素があってわくわくぞくぞく。読みすすめるごとに、登場人物の性格や人間関係を見る角度が少しずつ変わ…

食べ物と家族と暮らしのこと。宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』

宮下奈都さんのエッセイ『とりあえずウミガメのスープを仕込もう』を読んだ。雑誌に連載された、食べ物にまつわる短い文章を集めたもの。こまぎれの時間で気軽に読めそうなのと、単に私がおいしいもの系エッセイが好きだから。 食べ物がテーマだけど食べ物そ…

近未来の監視社会に、行動力と超能力で立ち向かう。森絵都『カザアナ』感想

森絵都さんの『カザアナ』を読んだ。 舞台は近未来の日本、観光戦略の一環として過剰な〈古き良き日本らしさ〉が求められる社会。人々は常に監視され、言動のいちいちに点数が付けられて評価されている。なんて末恐ろしいディストピアな設定……と思ったけど、…

読みたい本が多すぎて、図書館の本を借りまくる(読めるかどうかは別問題)

読みたい本がたまりすぎて消化が追いつかない今日この頃。今日この頃どころか、ここ一年くらい慢性的にそんな状況である。0歳児と暮らしていると自分のための自由時間なんてのはものすごく貴重で、日中に許された読書タイムは子の昼寝中くらい。そのすきに「…

愛娘への思いがあふれまくるエッセイ、角幡唯介『探検家とペネロペちゃん』

角幡唯介さんのエッセイ『探検家とペネロペちゃん』を読んだ。著者は太陽の昇らない北極での単独探検を書いた『極夜行』でノンフィクション大賞を受賞した探検家。ペネロペちゃんというのは角幡さんの愛娘の通称で、この本は、角幡さんが娘をどれだけ愛し、…

2019年の目標振り返り。体重管理とか投資とか読書とか。

あと二週間で2019年が終わる。終わっちゃうよ~、早いよ~! というわけで、年始に立てた目標を振り返るべく、手帳の1月1日のページを開いてみた。年のはじめに考えていたことと、その達成具合。 ・産後、体重を出産前に戻す →達成 出産前に立てた目標。出産…

死んでからも生き続ける子どもたちへのやさしい眼差し。小川洋子『小箱』感想

小川洋子さんの小説『小箱』を読んだ。なんてすばらしい。今年読んだ本の中でいちばん好きかも。 どことはわからないどこかの街で、元幼稚園だった建物に暮らす女性。彼女は講堂に並べられたガラスの箱の番人で、その箱は、死んだ子どもたちの未来を保存する…

夫よ、すまぬ。押入れの断捨離の前に、自分の記憶を整理すべきだった。

ふと図書館で借りて、断捨離のやましたひでこさんの本を読む。『定年後の断捨離』。定年の年齢はまだ先だけれども。 何がそんなに私の琴線に触れたのか、読んでいる最中から、どんどん捨てて身軽になりたい!という気持ちがふくれあがる。「いま見える範囲に…

生まれてくることの意味はまだわからないけれど。川上未映子『夏物語』感想

川上未映子さんの『夏物語』を読む。大長編。 独身で恋人のいない主人公・夏子には、自分の子どもを生みたいという思いがある。その方法として精子提供を受けることを考えるが、精子提供で生まれ性的虐待を受けてきた女性に出会い、「生まれてくることには苦…

8人に1人が貧困状態、でも働かない・働けない? 『貧困専業主婦』

タイトルのインパクトにひかれて読んだ『貧困専業主婦』(周燕飛/新潮社)。 ここに示されたデータによると、経済的に苦しい状況にありながら働かないことを選択している女性は少なくなく、専業主婦の8人に1人が貧困状態にあるという。衝撃的。しかし、彼女…

奇妙で不穏、でも愛おしい気持ちになる。小川洋子『原稿零枚日記』

小川洋子さんの『原稿零枚日記』を読む。エッセイや日記ではなく、日記調で書かれた小説。書き手は女性作家で、特技は他人の作品のあらすじをまとめること。その技術は天才的なのに自身の原稿はいっこうに進む気配がなく、日記の文末に書き記している原稿の…