「推し」に人生を捧げること。なにゅなにゅオタクの私、クレーンゲームオタクの森本さん、髪オタク美容師の品田。その愛は一方通行だったはずなのに、気がつけば歪んだトライアングルから抜け出せなくなっていて……。
これと決めた対象にのめり込んでしまうオタクの様子と描写がおもしろくもあり、恐ろしくもある。
数十年前に比べたら、今は「オタク」という言葉やありようがネガティブさなしの一つの趣味ジャンルとして受け入れられてるし、「推し」という概念の登場によってさらに広くわかりやすくなってると思う。が、本来的に、オタクの熱量とか投資っぷりって、傍から見ると異様だったり理解し得ない部分があるよなーということを再確認。いわゆる「推し活」が自分が責任を持てる範囲での愛とか癒やしとかなら全然いいんだけど、執着がいきすぎて暴走を始めると他者に対する暴力になってしまうってことを、まざまざと見せつけられた。
終盤の展開はもはやホラー。それぞれの方向に欲望がむちゃくちゃに発散されてて怖いんだけど、このヤバさはひょっとしたら自分の中にもあるかも…と思えてしまうところがますます怖い。