旅と日常のあいだ

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勧善懲悪のスポーツ✕お仕事小説。池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』『陸王』

昨年秋からハマっている池井戸潤。下町ロケットと半沢直樹のシリーズ全作を読み終えて、最近読んだのが『ノーサイド・ゲーム』と『陸王』。どっちもおもしろかったー。

 

大手自動車メーカーのエリート社員が左遷させられ、成績不振のラグビー部ゼネラルマネージャーを兼務することに。ラグビーに関しては完全な素人でありながら、ビジネスのノウハウを活かしつつラグビー部の再建に挑む。

ラグビーのルールもよく知らないのに、選手がプレイしている姿を思い浮かべたりそこに至るまでの胸のうちを思って、泣いた…! 旧態依然だったり権威を傘に着た人や組織を、まっとうな論理と行動でギャフンとやり込めるのはお約束の半沢直樹スタイル。そこにうまいことラグビーのフェア精神とかチームメンバーの想いがミックスされて、ビジネスとスポーツどちらの側面から見てもめちゃおもしろい話だった。

 

創業百年の足袋メーカー「こはぜ屋」は地方の零細企業。会社存続のための新規事業としてランニングシューズの開発に着手する。世界的スポーツブランドとの競争、素材探し、開発力不足など次々に難問が立ちはだかるなか、一世一代の勝負に打って出る。

こはぜ屋メンバーの、「靴を作っているのではなく、走る人を支えている」という姿勢、理想よね。働くすべての人の目指すべきところであり、ものづくりの原動力となるべきものだなと思う。そして、こはぜ屋を社外からサポートする元銀行マンの坂本がすごくいい。社長に共感し、なにかと親身になってここぞという場面で的確なアドバイスをくれる。物語的には、ある意味すごく便利に使える万能キャラというか、半沢直樹でいうところの渡真利的ポジションだな。あと、自社を倒産させた元社長の飯山も、登場時は超いけすかないけど、芯に熱いものを持ってるいいキャラ。

仕事に関わる人物がそれぞれの立場や思惑で考えをめぐらせつつ、チームならではの力を発揮してゴールに向かうストーリーは池井戸潤の定石。ピンチがあり、ひらめきあり、教いの手あり、情熱ありで少年ジャンプ的ともいえる。開発したシューズをめぐる駅伝のシーンでも3度くらい胸をぎゅっとつかまれてこみ上げてくるものがあった。もー、まんまと感動させられちゃうぜ。

池井戸作品、安定の面白さと満足感。読書で不必要にしんどい思いもしたくないし、波乱やドキドキがありながらも確実にスカッと心地よい読後感を求めてるときに最高。パターン化してる感があるけど、それがほしいんだから問題なし。まだまだ読むぞ。