旅と日常のあいだ

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斜線堂有紀『君の地球が平らになりますように』感想

トゲだらけで地獄のような恋愛ばかりをつづった短編集。ふわふわ甘くてキュンとするような恋バナは出てこない。

「好き」の気持ちがあまりにも強くてまっすぐだと、こんなにも歪んで痛々しくさえ見えるのね…。どの物語も壮絶だし病みがち。なのに読み口や読後感がカラッとしてるのが不思議だしくせになる。作者の文体や空気感がそうさせてるんだろうな。

陰謀論にのめりこむ彼氏、正体を隠して付き合う地下アイドル、ホストに本気で恋して貢ぎまくる女性。どの恋愛も普通じゃないし自分にはほど遠い世界だと思う一方で、彼女たちの感情や思考回路に共感できたり、思い当たる節があるのも事実。考えてみたら恋に普通もなにもないね、当人にとっては常に特殊であり、たぶんどれも普遍的。気持ちの根っこはみんな同じだから、読んでてぐいぐい刺さってくる。

ホストクラブ通いの話「大団円の前に死ぬ」が一番好きだった。担当ホストとの結婚を夢見て数十万、数百万のシャンパンをオーダーしまくり、資金が足りなくなったら風俗で必死に稼ぐ。本人に悲壮感がなくて、ヤケクソでもなくて、目標に向かってひたすら一直線!なのがもはや爽やか。読んでて痛快で楽しかったー。

▼同じ作者の『回樹』もよかった。今後も注目していくぞ。

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