旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


すぐそこにありそうな幻想と不穏。村雲菜月『もぬけの考察』

先日読んだ村雲菜月さんの『コレクターズ・ハイ』がよかったので、同じ作者の『もぬけの考察』を読んだ。これまた、キモおもしろホラーな読後感だった。

冒頭の一文でまず明かされる主人公の趣味がヤバすぎて震える。うわっ変な人が出てきたぞと思いながら読んでいくと、さらに上をいく変な人が登場して事態は思わぬ方向へ。短編4つが収められているのだけど、読み進めるうちに、なんか変、なんかずれてる、なんか気持ち悪い…という感覚がじわじわ重なっていって、得体の知れない恐ろしさが迫ってくる。不条理の連続。文鳥の話がいちばん印象に残ったな。

舞台は、どこかの街のどこにでもあるような賃貸マンションの一室。過去の住人たちの迷いや狂気が発生し蓄積した場所に、そんなことを知る由もない次の住人が暮らし始める。考えてみたら、これってなかなかのホラーだよな。現在の私も同じ住環境にあるわけだけど。

余談だけど、図書館でこの本の有無を検索したところ、誰も借りておらず貸出可能な状態だった。が、あるべき棚を見てもそこに本がない。誰かが館内で読んでいるのかなと思って再検索したら、今度は「貸出中」に変わっていた。なんてこと、タッチの差で誰かが借りたらしい。犯人はまだ館内にいるはず!と鼻息を荒くしつつ夫にこのことを話したら、本を借りたのはなんと夫であった。マジか~、気が合うな。そして、ちゃっかり夫より先に読み終えて、感想を記した次第。

村雲菜月さん、がぜん注目の作家となった。これからも読む。