旅と日常のあいだ

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エリン・モーゲンスターン『夜のサーカス』感想。幻想とたくらみに満ちた世界に引き込まれる

『夜のサーカス』エリン・モーゲンスターン

世界各地で神出鬼没に出現し、夜にだけ開くサーカス。表紙イラストのとおり、黒と白のみで構成された世界観が美しくて魅惑的。ひしめくテント、白い炎と光、雲の迷路、氷の部屋。絵的にとても印象深いシーンが多くて、その場の空気までもが映像として目に浮かぶようだった。ここではない非日常が待っていて、ページを開くたびにそこへ連れて行ってもらえる幸せ。ファンタジー好きにはたまらない時間だった。

魔法の力を持つシーリアとマルコの「対決」が全編をとおしての主軸なのだけど、一体何のために? 何がゴール?どうやったら勝敗がつくの?という肝心なところが不透明だったよね…。私は、常人ならざる力を持ったふたりがどうしようもなく惹かれあうラブストーリーとして読んだ。互いに対決相手だと知りながらもおさえられない、壮大で宿命的な恋。あと、登場人物たちが自分のあり方に疑問を持ち始めるメタな要素にどきどきした。

物語があっちへいったりこっちへいったりでわかりにくいんだけど(対決って結局何だったのか)、魔法に満ちたサーカスの描写の素晴らしさ、引き込まれる感じが大好きだった。映画化の話も出ているようで、ぜひ見てみたい。