旅と日常のあいだ

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仮想通貨でどこまで行けるか? チャン・リュジン『月まで行こう』感想

スピード感ありリアリティありで、あまりのおもしろさに一気読み。

メインキャラは韓国の大手製菓会社に勤める女性3人。20代後半・一人暮らし・経済的に余裕なし・会社での評価はまあまあ・未来への希望が見えづらい、という共通点を持っている。このうちのひとりが仮想通貨(イーサリアム)投資を始めて大儲け。あとのふたりも誘われて、懐疑的ながらも始めてみたら……という展開。

偶然にも、私も少し前に初めてビットコインを買ってみて、ラッキーなタイミングだったのでみるみる価値が上がり何もせずとも利益が出て、仮想通貨すごいな…!と興奮状態だった時期。なので、作中、仮想通貨をやってることをあとのふたりにまだ明かしていない段階での、スマホでチャートをちらちらチェックしては評価額が上がっているのを確認して顔がにんまりしちゃうのを隠しきれない描写とか、めちゃめちゃわかるわー、私も同じ! と思った。言いたいけど秘密にしたい、宝くじが当たったことを明かしたいけど教えたくない、みたいな心情。

3人ともが投資を始めてからは、価格のアップダウンにみんなで一喜一憂する高揚や連帯感がまたおもしろい。リスクと隣り合わせなぶん刹那的でヒリヒリした部分もあって、読んでるこっちも手に汗にぎりっぱなしだった。

未来に待っているのは大暴落かと思いきや、そうでもない着地。読んでハッピーな気持ちになれたことがよかった~。現実社会では夢を見られない3人の、お金をめぐる夢物語。そう、うまくいきすぎの夢物語なんだけど、実際に仮想通貨で大成功をおさめた人も少なからずいるわけで、絶対にあり得ない夢というわけではないんだよな。一攫千金、もしかしたら自分も…!という変な希望がわいてくるわ。

お金があれば万事幸せとは限らないけど、お金で解決できることはたくさんあるよな。韓国の(特に女性の)働き方とか社会での境遇とかしんどい住宅事情とかにも触れていて、そのあたりをもっとよく知りたいという興味も広がった。

 

▼同じ作者の『仕事の喜びと哀しみ』も好きだった。これからも注目。

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