嵐のような大雨の翌日、晴れた休日のこと。友人Aと、山梨県は北杜市へ行った。 目的の一つは、春に一度行った素敵なパン屋さん「ろくぶんぎ」への再訪である。お店は可愛いし、パンは美味しいし、店主は素敵だし、パンを買いに来るお客さんもみな素敵という、そりゃあもうほっこりしちゃうパン屋さん。
大きな雲がわく空の下をドライブ。「空がもう夏だなあ」「梅雨明けも間近だね」とかなんとか言いながら。実際、この三日後には東海地方で梅雨が明けた。
さて、ろくぶんぎである。以前はタクシーで通ったくねくね道を、地図と記憶と嗅覚を頼りに進む。ちょっとわかりにくい場所にあり、「このあたりだったような……」と不安になってきたところで見覚えのある建物を発見。
店主さんに声をかけたら、覚えていてくれた。非常にうれしい。話しているあいだにも常連らしきお客さんがパンを買いに来る。「ナントカさんがこのパンを欲しがっていたから買っていってやろうかしら」とか、「今度ジムで会うからそのときに渡そうかな」とか、のどかな会話がまた良いなあ。
パンをたくさん買ったのが移動中にむしゃむしゃ食べてしまい、家まで連れ帰ったのは三つ。 この食パンが、前に食べたときにもそうだったけれどモチモチと跳ね返すような弾力がすばらしくて、それはもう感涙モノの美味しさなんである。今回も、期待を裏切らなかった。
もう一軒、雑誌で見て美味しそうだったので行ったのが、「コンプレ堂」というパン屋さん。森の中の、これまたろくぶんぎ以上にわかりにくい場所にある。「本当にこの先にお店なんてあるのかな」とまた不安を覚えつつ、しばらく木々のあいだを走ったところに、その店はちょこんと建っていた。
へんぴな場所にも関わらずお客さんが途切れない。というか、このひっそりと奥まったへんぴな立地や雰囲気にこそ、ここに来たくなる価値や理由があるのかも?
ここでもまたパンをたくさん買ったのだけれど、またしても移動中の車内でむしゃむしゃと食べてしまった。というわけで、家に連れ帰ったのはやはり三つだけ。
もう一軒、別の人気パン屋さんにも行ったのだが、店のドアに「本日のパンは売り切れ」とあって買うことができなかった。私たちと同じように、近づいては遠ざかっていく県外ナンバーの車が何台もあるような有名店。いつかそこへ行けたら、それはまたその時の話。
立ち寄ったカフェで昼ごはんをしっかり食べたあと、直売所をハシゴして野菜を買いまくる。きゅうり、いんげん、じゃがいも、とうもろこし。パンと野菜をこんなにも買い込んで、一体どんな逃避行なんだか。
夕方、静岡に戻る前にもう一軒。先ほど立ち寄ったカフェでパラパラと眺めた雑誌に、心惹かれるお店があったので。店の名は、「ニコサンカフェ」。この店がもう、最強にわかりにくい場所にあった。森の中をぐんぐん入るうちに道の舗装はなくなるし、カーナビもいつの間にか仕事を放棄して場所を示さなくなってるし、でこぼこの細道を苦労して進んでみてもそれらしき店は見えず、しかし来た道を戻ろうにも車の向きを変えることもままならず。
途方に暮れそうなところでついに看板を発見。まさかこんなところに店があるとは思わんよ!っていう場所に、どうにかこうにかたどりついたのだった。
可愛らしい店内で本を読む友人。出発の前に、「カフェでゆっくり読書する時間もとろうね」と言って、お気に入りの本など持ち込んでいた我々である。文化系女子~!! 途中でバケツを100杯ひっくり返したような豪雨があった。木もテラスも何もかもがざぶざぶ濡れていくのを、窓辺で本を開きつつ眺めている夏の夕方。絵になりすぎる。
しばらくして雨は上がった。「山梨の夏といえばひまわり畑」というのを急に思い出して、有名な明野(あけの)のひまわり畑に行ってみた。ひまわりイベントは一週間後からということで、まだ花は少なく、おかげで人の姿も少なく。ちらほら咲いている花を眺めて、十分に満足した。山梨でやることは全部やった!という満足感。
翌日からの主食が、パンと、じゃがいもと、とうもろこしだったのは言うまでもない。 今回もまた、北杜はいいところだった。行きたい店がまだある。きっとまた行こう!