金沢市寺町にある老舗和菓子店、戸水屋。くずまんじゅうの看板に引かれて立ち寄った。店頭には見本だけが置いてあり、声をかけて注文すると奥からできたてを持ってきてくれるスタイル。このときは「2、3分でアツアツのできたてが出せるけど待てる?」と聞かれ、もちろん待った。
なんとも風情あるたたずまい。年季の入りまくった調度品を眺めながら腰掛けで待つ。
ところで、くずまんじゅうが「できたてアツアツ」とはこれいかに。冷たくひやして食べるものなのでは…?と思った読者諸氏、実は戸水屋のくずまんじゅうは、そこらのくずまんじゅうとはわけが違う。冷やすのは厳禁、蒸したてに近いのを、できれば温かい状態で食べるのが正解なのである。なんて珍しい。というのも、本葛粉は使わず馬鈴薯でんぷん100%で作っているため、冷やすと白く濁って食感が悪くなるからだそう。
ほどなくして運ばれてきたくずまんじゅうは湯気ほかほか、包装フィルムは水滴だらけ。「熱くて持てないから気をつけて」と注意されるほど。「早めに食べてね。手でどうにかさわれるくらいになったらどうぞ」と念押しされた。
さて、戸水屋さんのお隣にはワザナカフェという素敵カフェがあり、和菓子の持ち込みができる。できたてを味わうべく、すぐ入店。持ち込みを告げると小皿とフォークを出してくれた。嬉しい心遣い。
まだぬくもりの残るくずまんじゅう。しっかり分厚くてぶるぶると弾力のある皮に、強めの塩気を感じるどっしりしたつぶあん。素朴さを越えて、なんだろう、力強さというか、野性味すら感じる。喉ごしつるんタイプとは正反対の、むっちりぶるんぶるんタイプ。くずまんじゅうというカテゴリ内に、こんなスタイルのものがあったのか!という驚き。何ともくせになる唯一無二の味と食感だわ。好きだった。
ワザナカフェで注文したベリーベリークリームソーダと一緒に。甘酸っぱいのと塩気、炭酸の爽快感ともちもち感が、意外といい組み合わせだった。
今回は買わなかったけど、加賀棒茶の冷たいういろうもあった。これも気になる。
戸水屋 金沢市寺町2ー3ー1