合計6人でキャンピングカーに乗って旅行に出かけた高校生のレッド。夜になって道に迷い、人里離れた場所でタイヤがパンク。動けない状況下で何者かに狙撃される。携帯の電波は届かない。そんななか、サイドミラーにかけられたトランシーバーで狙撃者から連絡が入る。「6人のうちのひとりが秘密をかかえている、命が惜しければそれを明かせ」。制限時間は夜明けまで……。
面白すぎて一気読み。睡眠時間を削ってでも読まずにいられなかった。
見知らぬ場所でキャンピングカーに閉じ込められ、秘密と命と信頼関係のどれを守るか守らないかというとんでもない極限下におかれた6人。物語のすべてが主人公視点でリアルタイムに語られるので、どこからくるかわからない狙撃に対する恐怖、車内の緊迫感や息の詰まる探り合いが、今ここで目の前で起こっているような鮮やかな生々しさで迫ってきてじつにスリリングだった。
ひとつの秘密が明かされて真実が明らかになっても、また別の秘密があり、さらなる真実が暴かれる。そのたびにその人物に対する印象や見え方ががらりと変わる怖さと面白さ。登場人物の行動に何か違和感を覚えるけれどが何なのかがわからない、その引っかかりが積み重なったところに、「これは、この秘密の、こういうことだったのか…!」とピタリとはまる衝撃ときたら。あれってつまり、そうだったの?とページをめくり直すこと多数。見事な構成だと思った。
キャラの書き分けや共感のさせ方も巧み。相手を信じたい気持ち、疑いをもつ気持ち、裏切られる気持ち、誰も信じられなくなる気持ち、守りたいという気持ち、どれもが本当で真に迫っていて、読みながらハラハラヒヤヒヤがずっと止まらなかった。
ラスト、悪い奴には鉄槌が下り、救われるべき命はどうにか守られたという勧善懲悪的な要素もありながら、すっきりカタルシス!とはいかない部分もあって、その余白というか問題提起の姿勢がこの著者の持ち味なのかなと思った。なにせ前作の「向かないシリーズ」が超絶すごかったから。ほんと、すごすぎたよね…。「イヤミス」という一言ではくくれない展開と結末、私は好きだった。
読み終えて、とにかく主人公を抱きしめてあげたい。あなたのせいではないよと言ってあげたい。難しいかもしれないけれど、彼女に心の安寧が訪れてほしいと切に願う。
▼『自由研究には向かない殺人』から始まるシリーズがむちゃくちゃ面白くてどハマリしていた。とにかく読んでくれ、つべこべ言わずに3作目まで読んで驚いてくれ!としか言えない。

