話題作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ。
イギリス在住ライターによるエッセイ。主役はイギリスの「元底辺中学校」に通う息子で、その日常には、人種や国籍による分断、住んでいる場所や経済事情による格差、政治問題、ジェンダーの問題など、はっきりと目に見えるものからそうでないものまでさまざまな区別や差別がある。学校生活をとおして悩み考え成長していく息子の姿を、母の目線で寄り添いながら切り取って記した1年半。
子どもって大人が考えている以上に精神がタフでしなやか、そして基本的に健気なのだよね。息子「ぼく」は特にクールで大人びた視点をもったキャラだと思うけど、自分あるいは周囲の人に向けられる偏見や差別の意識を確実に感じとりながら、でも僕はそれは違うと思う、という基準を持って行動する姿が頼もしい。そして、本文にも出てくるけど、「未来は子どもたちの手の中にある」っていうの、本当にそうだなと思った。子どもたちの感受性や可能性をなめてはいけないし、彼らがさまざまな課題や悩みを乗り越えるなかで新世代の価値観が生まれていくのかも、と思ったらなにやら壮大な希望を感じる。
著者が、難しいテーマであっても「子どもだから」と区別することなくしっかり向き合って話をする姿勢、見習いたい。我が子が中学生になったとき、真面目な会話を真面目にできる親子関係でありたいしそれをめざそうという気になった。その意味で、ある種の育児本としても読める。
母が国籍の違うパートナーと結婚しており、息子は幼い頃から海外に暮らして、さまざまな種類の格差や多様性の真っただ中にいるという点は、ちょうど先日読んだヤマザキマリさんのエッセイ『ムスコ物語』と境遇が似てる。
どちらの息子もタフにクールに賢く育っているようにお見受けする。本人の資質ももちろん大きいけど、親として子どもに見せる態度や言動や方針が、その子のあり方を作り上げているのだよなぁと思ったら、なんというか、私もがんばるぞ、と思ったのだった。
▼「ぼくはイエローで…」は続編が出たばかり。成長したぼくの姿をみるのが楽しみ。