旅と日常のあいだ

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愛娘への思いがあふれまくるエッセイ、角幡唯介『探検家とペネロペちゃん』

角幡唯介さんのエッセイ『探検家とペネロペちゃん』を読んだ。著者は太陽の昇らない北極での単独探検を書いた『極夜行』でノンフィクション大賞を受賞した探検家。ペネロペちゃんというのは角幡さんの愛娘の通称で、この本は、角幡さんが娘をどれだけ愛し、かわいがり、デレデレしまくり、その存在や行動に夢中になっているかを書いたもの。

探検家とペネロペちゃん

探検家とペネロペちゃん

  • 作者:角幡 唯介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2019/10/24
  • メディア: 単行本
 

角幡さんは、実際に子どもをもつまでは、自分がこんなにも子どものことを考えて生きていくことになるとは思わなかった、という。その意味が、去年初めて子どもをもった私には、もうわかりすぎるくらい深く深く、心の底からしみじみと共感できる。出産以前にこれを読んでも、言ってる言葉の意味はもちろんわかるけど、その言わんとするところを実体験と重ねてリアルに理解することは絶対にできなかった。

「子供が様々な何かをなしとげるときに感じる喜びは、親になってみなければわからない完全に新しい経験である」という文章ひとつとっても、その「喜び」の度合いとか、「新しい経験」の新しさ・未知さ・鮮烈さとかが、ほんとこれ、親になってみなければわからないレベルの感情なのだよね。子どもと接していると、自分のこれまでの人生にはなかった種類の感情がどんどん湧いてきてびっくりする。日に何度か、子を見ているとそのかけがえのなさが大きすぎて胸が震えたりするからな……。

角幡さんの、子どもとの体験によって生まれた感情やそれをめぐる考察がおもしろくて、「わかる~!」と共感したり、「こんなとらえ方をするのか」と発見したり、「この先こんな経験が待ってるのね」と楽しみになったり。あと、角幡さんの場合は「父親から娘へ」の愛情や興味だけど、それは果たして「父親から息子」や「母親から娘」に向けるものと同じなのかどうなのか、そこらへんも興味深い。ちなみに角幡さんは、将来ペネロペちゃんから、かっこよくて頼りがいのある父親だと思われることが目標らしい。それでいうと、私がなりたい母親像は、やさしいとか料理上手とかよりも「とにかく愉快なかあちゃん」。息子が外で「うちのお母さん超おもしろいんだー」とか言うようになったら最高だな。

お題「好きな作家」

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