旅と日常のあいだ

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夏山2012 南アルプス、仙丈ヶ岳

この夏はアルプスの3000メートル峰に3つ登った。 南アルプス仙丈ヶ岳北アルプス乗鞍岳奥穂高岳。 以下はその第一弾である仙丈ケ岳の山行記録である。

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仙丈ヶ岳(3,033メートル)
2012年7月16日 晴れ
北沢峠7:20-五合目(大滝ノ頭)9:00-小仙丈ヶ岳10:00~10:20-仙丈ヶ岳11:40
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登山前日、山梨県は早川沿いのキャンプ場でテント泊。翌早朝、バスで登山口へ向かう。登山口は北沢峠、標高2030メートル。北沢峠には山梨方面、長野方面へのバス停があり、登山客でにぎわっていた。

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7:20登山開始。出発点の気温は15度ほど。はりきって元気に出発~!なのだが、慣れぬテント泊のため実はスーパー睡眠不足であり、このことが後に悲劇を生む。

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しばらくは森の道。日差しも強くなく快適な歩き。足元は木の根がもりもりで平坦ではないが、たいした傾斜ではないので楽。朝の光がきれい。木漏れ日や、葉の陰や、苔や、キノコを見て写真を撮ったりおしゃべりしたり。まだまだ余裕。

そのうち緩やかな登りに変わり、一合目、二合目……の札を目標に登っていく。基本的にずっと森の中。視界はまだ開けない。

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五合目、大滝ノ頭近く。木々がひらけて山々が見えた。鳳凰三山(ほうおうさんざん)。 この連なりが鳳凰三山なる山であることは、帰ってから調べて知った。

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しばらく先で見えたこちらは、摩利支天(まりしてん)。先に登っていたおじさんが「マリシテンが見えるぞ」と教えてくれたので、何だろな?と思いつつ撮影。 写真中央の丸く盛り上がったのが摩利支天で、甲斐駒ケ岳(左の雲に隠れてる)から張り出した岩山である。というようなことも、後で調べて知ったもの。こういうの、たくさん覚えたいなあ。

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9:30頃、森林限界。木々がとぎれて視界が一気に開ける。目指すべき山が目前に見え、テンション急上昇。しかしこれを登るのも一苦労だ。しかも目の前に見えているあれは最終ゴールの仙丈ケ岳ではなく、前座とでもいうべき小仙丈ケ岳。もう暑くなって、このあたりは汗をふきふき半袖で進む。

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標高2,800メートルあたり。振り返り、登ってきた道を見下ろしたところ。奥の中央右の丸っこいのが摩利支天。その左側(相変わらず雲に隠れがち)が甲斐駒ケ岳。さらにその左側、雲の間に青く連なって見えるのが八ヶ岳。写真では、山なのか空なのかよくわからん。あれがそうかな?と思いながらなんとなくご覧ください。

10:10、小仙丈ケ岳に到着。出発から3時間弱、標準タイム通りの順調な進行である。さて、あとちょっと歩いて、真のゴールである仙丈ケ岳を目指すべし。

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富士山が見える(写真中央、雲の後ろの青いの)。ほかのどんな山より圧倒的に気分が上がるなあ。右側は北岳、日本第二位の標高3192メートル。つまり今、日本のツートップが並んで見えている。でもこれ、直線距離で言ったら富士山の方が圧倒的に遠いからね。北岳はこの仙丈ケ岳の稜線上だけど、富士山は県ひとつを隔てた向こうにあって、それがこうやって同じくらいの高さに見えるんだからその巨大さが知れるというものだ。

仙丈ケ岳を出た後、稜線をひたすら歩く。歩いてもいっこうに近づかない仙丈ケ岳。山頂は近くに見えておりそこがゴールのつもりで歩いていたのに、回り込みながら進むうち、山頂だと思ったものはただの小高い盛り上がりに過ぎず、実はそのずっと先に山頂があることがわかってしまった。地図をちゃんと見ていない自分が悪いのだが、それにしたって遠すぎる。

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いま私がいる場所がここで、山頂は、写真の右奥のいちばん高いところ。 ちょっとちょっと!どんだけ上り下りさせる気だ!

このあたりから調子が悪くなる。先の長さに絶望&圧倒的な眠気に襲われてテンション急落。まあ、この眠気は自業自得の睡眠不足に起因する部分が大きいのだが、このやる気のなさ、これはちょっと高山病っぽい感じだなという自覚がありつつ、なんとか自分を奮い立たせて歩を進める。登山のたびに、「あーもうしんどい、つらすぎ、もう帰りたい、二度と山なんか登りたくない」と思う瞬間が絶対あって、体は痛いわ疲れるわ、それなのにすぐにまた次の山のことを考えてしまうというね、このループから抜け出せないマゾな私である。そうやってどうにかこうにか励まし合いながら歩くこと1時間強。

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11:40、仙丈ケ岳登頂。3,033メートル。富士山以外で初めての3,000メートル越え!!

山頂から360度の景色を楽しみ、ここでお昼ごはん。お湯を沸かしてカップラーメンを食べる。山頂でのごはんはごちそう。なのだが、ちょっと胸がムカムカしてる今、よりにもよって普段たべない豚骨ラーメンなんぞをチョイスしていたためにいっそう調子が悪くなる(阿呆です)。山頂で撮った写真を見返すと唇の色がおかしいもの。眠気と頭痛と疲労の三拍子をそろえ、帰り道、またひたすら長い小仙丈ケ岳への稜線をだらだらと歩いているときがいちばんつらかった。わたくしのことなぞ山の中に捨て置いてくださって結構ですとか言いたくなるくらい歩くのがしんどくて。しかし、高度が下がるごとに調子は回復、再び森の道に戻ってくる頃には元気を取り戻して唇にも血色が戻り、高山病ってなあに?ってな感じでスピードアップして、ぐいぐい下山。出発点であった北沢峠に、無事に帰ってくることができたのだった。

今回学んだこと
・行動中のおやつに、こんにゃくゼリーは最高
・睡眠不足は大敵
・豚骨ラーメンはもたれがち

つらい記憶は割とあっさり都合良く上書きされ、また早く山に登りたい!となって、この仙丈ケ岳から3週間後には3,026メートルの乗鞍岳に、さらに一か月後には3,190メートルの奥穂高岳に登ることになる。