３月１日に早稲田大学大隈記念講堂で開催された「春のみみずく朗読会」に行ってきた。村上春樹さんと川上未映子さんの朗読を主軸に、友情出演ということで村治佳織さん、小澤征悦さんも登場。これまでに味わったことのない種類の、なんとも贅沢で得難い時間だった。
その日の朝、私は金沢駅から新幹線かがやきで東京へ。一緒に参加する関東居住の友人Ｓちゃんと早稲田駅で待ち合わせた。ほんの少し先に到着した私、何も考えずに２番出口から外に出たところすぐ目の前に郵便局発見。風景印コレクターの習性として無意識的に吸い寄せられてしまい、「ごめん、新宿馬場下郵便局にいる」とLINEを送る。駅集合のはずがいきなり郵便局集合に…。勝手をしてすまぬ。おかげで無事に風景印ゲット。局員さんの押し方が丁寧で好印象！ 風景印には早稲田大学の時計塔が描かれており、この日のよい記念になった。
18:30の開演まで数時間、早稲田周辺散策。大学前のカフェでお昼を食べ、村上春樹が住んでいた寮の横を通り、Ｓちゃんおすすめの東京カテドラル聖マリア大聖堂へ行き、伝説的においしい塩大福を求めて群林堂をのぞき（売り切れていて買えず）、護国寺へお参り。たくさん歩き、たくさんしゃべった。
夕方、大学に戻ってきて、構内にある村上春樹ライブラリーへ。建築は隈研吾氏。
吹き抜け階段の両脇に天井まで伸びた書棚が圧巻。いつかのブルータスの村上春樹特集で表紙撮影に使われていた。このライブラリーを象徴する場所なので記念撮影する人多数。スタッフが笑顔で撮ってくれる雰囲気だったので、私とＳちゃんも階段に並んで座り、写真におさまった。撮影時のスタッフの声かけが忘れられない。「せっかくなので、『ハルキー』で撮りましょう。せーの、『ハルキー！』」
そういうわけで、写真の我々は「ハルキー」の口の形をしている。
ライブラリー地階のカフェでおやつ。本を自由に眺めながら食べてよい。至福。キャラメルドーナツとカフェラテにした。パスタも何種類かあった。村上春樹のカフェは当然そうでなくては。
上階のギャラリーでは安西水丸氏の作品展示をやっていたので興味深く見た。村上春樹の長編小説は結構読んでるけど、安西さんがイラストを手掛けているエッセイとか工場探訪とか、まだまだ読んだことのない作品がたくさんあるなと気づく。Ｓちゃんは、工場見学がおすすめだと言っていた。読もう。
外に出て、大隈重信像の前でも写真を撮った。腕を伸ばしてスマホで自撮り。もちろん、「せーの、『しげのぶぅ～』」の掛け声で。十年後くらいにこの写真を見返したとき、なんで唇を突き出してるのかちゃんと思い出せるかな……笑
席は２階の前から４列目という悪くない位置だった。村上さん川上さんとも自作の一部を読み、この日のための書き下ろし短編をまるまる読んだ。小澤さんも両氏の作品を朗読。さすが俳優、めちゃくちゃうまい。声の出方や響き方、聞かせ方が気持ちよくて、これがプロの技術…！！とほれぼれした。村治さんも加わって4人並んでトークする場面も。村上さんの話題の投げ方の奔放さに対して、うまく笑いもとりながらまとめる小澤さん。全体が終わってみての私の感想、小澤さんがすごくよかった。いやあ、始まる前には予想してなかった角度での刺激であった。
村上さんの新作書き下ろしはちょっとツッコミどころが多くて消化しきれてない。川上さんの新作は好きだった。川上さんが朗読した『ノルウェイの森』の抜粋もよかった。ノルウェイの森、読んだのは20年くらい前か？ そのうち再読したい。小澤さんが読んだヘヴンもよくて、また読みたくなった。
小説の朗読って今まで経験がなくて（オーディオブックもほとんど聞いたことない）、読んだことのない作品を耳で初めて聞いてすんなり入ってくるものなんだろうかと疑問だったのだけど、そういえば何の違和感もわかりづらさもなかったことに、あとから気づいた。これはいい発見。
21:00過ぎに終演。16時にドーナツを食べたきりなので空腹。焼き鳥の気分で駅前を歩くもほどよい店を見つけられず、目にとまったのが喫茶ルノアール。ぎりぎりラストオーダー前だったので駆け込み、ビーフシチューセットを注文。30分後には閉店という逆境のなか、よりにもよってアツアツメニューを選んでしまった！ 熱をもった芋や肉のかたまりをハフハフと咀嚼しつつ、湯気の上がるシチューで厚切りトーストを流し込む。なんの修行なのか。
遅い夕食を終え、朗読会の感想などぽつぽつと語りつつ電車に乗った。良い一日。
▼ちなみにこちらが８年前の群林堂の記録。東京三大豆大福のひとつ！
