旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2023年4月の読書記録。さよならドビュッシー、ルーティーンズ、爆弾、黄色い家など

3ヶ月前の記憶をさかのぼり、なんとかリアルタイムに追いつこうと焦りながら記す。4月は8冊読んだ。中山七里にハマってたなー。この期間でいちばんおもしろかったのは、小川哲『君のクイズ』。2023年になってから小川哲を推しまくりである。数字は今年の読了冊数。

『さよならドビュッシー』中山七里(21)

ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する…。

「本の雑誌」でどんでん返しがすごいと紹介されていて手に取る。どんでん返しが起こることを知ってて読んでるわけなので期待値も跳ね上がるのだが、それでもなお、あまりのことに相当驚いた! 人物Aが、実はB……おっと、これ以上は言えない。音楽演奏の表現がよくて、音や風景が映像として思い浮かんだ。主人公というか探偵役の岬先生が、超絶技巧のピアニストで難聴で推理力ありすぎで過去に謎を秘めていてという設定過多気味なキャラ。こんな人いないだろと思いつつ、気づけば心を奪われて好きになっちゃうよ~! というわけで、ここから始まる岬洋介シリーズにこのあとズブズブと…。

 

『ルーティーンズ』長嶋有(22)

無数のルーティンで、世界は回っている。作家と漫画家夫婦と2歳の娘がおくる、コロナ下のかけがえのない日常。長嶋有デビュー20年目の家族小説。

誰も経験したことがないコロナの時代に、作家は何を感じるのか、それを文章でどう表現するのか、コロナは作品にどんな影響を与えるのかというようなことに興味があって、いろんな人のいろんな文章を読みたいという思いがある。『ルーティーンズ』には、それでも続いていく日々のことが、だから何だというオチや教訓をつけるわけでもなく淡々とつづられていた。読みながら、自分の気持ちやあのころの出来事を思い出す。

 

『爆弾』呉勝浩(23)

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

爆弾犯であるらしいスズキタゴサク!! 憎らしくてウザいイヤな奴キャラが濃い。濃すぎて胃にくる。言ってることがもう心底気持ち悪くて、イライラムカムカさせられた。架空の人物の物語上の言葉にこんなにイライラさせられるって何?と思いながら。タゴサクと警察の言葉遊びによる頭脳戦はわくわくした。が、その答えがぴったりハマる快感!とまではいかず。う~~ん??となった。(あと作中に似たようなキャラがたくさん出てきて、見分けがつかなくなる部分も。)

爆弾

爆弾

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『川のほとりに立つ者は』寺地はるな(24)

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。

ある種の障害とか発達上の特性とか人の過去とか、外からはわからない個々の事情にもっと思いをはせろというメッセージが、それはそのとおりなんだけども、とにかく説教くさいなあ~と思いながら読む。登場人物が全員まっすぐすぎて、心情を説明しすぎで、それゆえに印象に残らないというか。私にはいまいちだった。子どもを持つ身としては、我が子に対しては絶対的全面的に味方でいよう、まずは必ず本人の話を聞こう、とあらためて思った。

 

『君のクイズ』小川哲(25)

▼おもしろすぎたので、読んだ直後にブログを書いた。小川哲にはずれなし。

『おやすみラフマニノフ』中山七里(26)

『いつまでもショパン』中山七里(27)

岬洋介シリーズをじりじりと読み進める。常人離れしたキャラが際立ってきたよ。

 

『黄色い家』川上未映子(28)

十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。

お金に取り憑かれ、振り回され、そのために危うい関係を築き、気分を病み、バランスが崩れて関係性が崩壊していく。どのページもどの瞬間も苦しくて息が詰まるような、もっとなんとかなる分岐点が人生にはあるはずなんじゃないかと思えて悔しいような。大長編だけど、のめり込んでページをめくっていたらあっという間。お金に執着する花ちゃんが同居する友人を管理下におこうとしていくあたりの変化、怖くておもしろくてゾクゾクした。しかし生まれ育った環境による負の連鎖の影響がおそろしすぎる。人が(というか子どもが)、教育や文化的な生活を得て、将来の自立をまっとうに思い描けることって本当に重要。それは子ども本人の責任や意志で得られるものではなくまずは親の責任によるものだから、なんとしてもしっかり果たさねばと思う。

黄色い家

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