能美市【御菓子處たなか】の、昭和九年という和菓子がとてもおいしい。初めて食べたとき、見た目とはうらはらな組み合わせに驚きおいしさに感動した。それ以来ずっとファン。何度食べても飽きない。
渋い包み紙。
見た目も渋い。文字の並びと書体に風格を感じる。たてよこ6センチ、高さ2センチくらい。あんこが詰まってずっしり重いだろうと思いきや、手に乗せると想像より軽い。
その中身は……
粒あん+バタークリーム+カステラ。
この三者が、量といい甘さといい本当に素晴らしいバランス。あんこはしっとり、カステラはふわふわ、クリームはコクがあってまろやか。もなかの皮は固すぎず柔らかすぎず、もちろんパサパサ感などまったくなく、軽くて歯切れがよい。一口のなかに押し寄せる味の広がりが豊かすぎて、いちいち陶然としてしまう。ありそうであまりない、他の追随を許さない発明だと思う。和菓子のようなケーキのような、いいとこどり。あとくちも軽くて何個でもいけそう。
今のところ、人にあげると例外なく喜ばれる。もなかはパサつくから好きじゃないとか、あんこぎっしりだと甘くてしつこいとか、そういうハードルを超越してる。石川銘菓としてもっと知られていいと思う。
ちなみに「昭和九年」の名前は、昭和九年に石川県で起こった大水害が由来。例年にない大量の雪解け水と豪雨により手取川が氾濫したことを忘れないため、ということだ。このお菓子のおかげで知識が増えた。おいしくて、ためになる!