旅と日常のあいだ

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未知なる胎児を見てみたら。最相葉月『胎児のはなし』を読む

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産婦人科医の増崎英明先生とノンフィクションライターの最相葉月さんによる対談集。一冊まるごと「胎児」についてさまざまな角度から話題にしていて、そういえば自分は胎児のことをほとんど知らないな、というか知ろうとしたことがなかったなと気づいた。

現在では超音波診断によって母のお腹の中を見ることができる。一昔前は白黒写真だったけれど、今はカラーかつ立体的なリアルタイム映像(自分の胎内をみたとき鮮明さに驚いた!)。その超音波、初めて胎児を見たときに使われたのは日本製の魚群探知機だったそうだ。それから技術が進歩して胎児を早い段階で観察できるようになるにつれ、病気を発見したり、胎内にいながら手術をしたり(!)ということまで可能になったそうだ。

先に異常を見つけて対応することで救える命がある。一方で、異常が見つかることにより出産をあきらめるという選択肢が出てきているのも事実。長い歴史上「出産するまでわからなかった」ことが、「出産前にわかる」ようになったことは、親と医療者にとって貢献以上に葛藤が多いという。このあたり、もっと科学的に深く突っ込んだ議論を聞きたい!と思ったが、先生本人が「答えがないからふれたくないね」と言うデリケートな領域。

確かにそうだよな、でも実際、ずっと神秘と未知のベールに覆われていた妊娠とか出産が、人の意思によって選択・判断できるようになるというのはどういう世界なんだろう。選択肢が増えるというのは往々にしていいことだと思うけど、命というものに関しては、倫理的な要素が混ざってきて非常に難しいなあと思う。

ほかに紹介されていたエピソードでおもしろかったのは、胎児の表情について(見方によっては笑顔に見えることがあるけれど、科学的にいえば筋肉がひきつっているだけ)、胎児のおしっこの量と回数を観察した結果とか、母体には胎児を通じて父親のDNAが混入する(なんと!)とか。胎内では肺の中が水で満たされているけれど、産まれるときの圧力でぎゅーっと絞られて水分が出ることで空気が入るスペースができて、それで赤ちゃんは産まれた瞬間に空気呼吸ができるとか(うまくできてるなあ)。

技術の進歩で姿を見ることができるようになったとはいえまだまだ未知や不思議の多い胎児。産まれる前のいわば「ヒト以前」の状態でも、確かにそこに存在して生きているわけで。なんだか懸命で健気に思えてくるよ。

内容は面白いけれど、会話そのままのラフさを再現したかったのか「ははは。」という笑い声が何回も出てくるのが途中からすごく気になった。 先生も最相さんも見開きに1~2回は「ははは」って言ってる。そして最強に気になったのが、先生の発言「我慢できないお産はない、原始時代から産んでるんだから」。いやいやいや、理屈はわかるけれどもまったく理屈じゃないよあの痛みは。我慢の限界を軽々と超えてたよと文句のひとつも言いたくなるのだった。

胎児のはなし

胎児のはなし