朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』を読んだ。
あーおもしろかった。章によって、異なる時間軸・視点から人物像を描いていて、ミステリーぽい要素があってわくわくぞくぞく。読みすすめるごとに、登場人物の性格や人間関係を見る角度が少しずつ変わっていって、一体どういうことなのだろう、どこに着地するのだろうと気になり続けた。
第一章で親友を献身的に見舞っている青年(雄介)への印象が、最終章でがらりと変わる構成の面白さ。雄介という人物の言動の数々、読み始めはたいして意識していなかったけれど、読むほどに違和感、恐ろしさ、引っかかりがじわじわと湧いてくる。
この小説、「螺旋プロジェクト」という企画の一環で書かれたもの。8人の作家が、同じルールのもとに日本の古代から未来までを競作するという試みで、ルールのひとつが【山族と海族という2つの種族の対立構造を描くこと】だそう。この小説はそれを知らなくてももちろん読める。けど、設定や展開に「対立」要素が多いのをやや強引だなーと感じる点もあったので、それは対立というルールがあったからだと思えば納得。
終盤、それまで散りばめられていたエピソードがザーッと重なり合っていろいろなことが明らかになっていくのが快感だった。そして最終章のもどかしさと恐ろしさ。ラスト1行に希望があったのが救い。それにしても巧みなタイトルだなー、「死にがいを求めて生きているの」とは。