旅と日常のあいだ

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気軽でシンプルで、土井善晴さんの姿勢に惚れるレシピ本

最近土井先生が好き。忍たま乱太郎ではなく料理人の土井善晴さんのほう。忍たまの土井先生も好きだけど、これは最近ではなくもう二十年来なので……ってどうでもいいか。

土井先生の「食事は一汁一菜で十分、具だくさんの味噌汁があればそれでよろしい」という考えに大共感なのだけど、私が「土井先生いいっ!」となった決定的なエピソードはいつかの料理番組でのひとこま。「ある日、前日余った鶏の唐揚げを味噌汁に入れた」という土井先生に対して、驚いたアナウンサーが「味噌汁に唐揚げ!ありなんですか?」と言ったら、「ありとかなしとか関係ない、自分が入れたくて自分が食べるんだからそれでいいでしょう」みたいな返答をしたのをすごく面白いと思ったのだった。なんて自由で明快で楽しい姿勢、こういう考え方なら料理も食事も愉快でいいなと。ほんと、ありとかなしとか、誰かが外側から決めるものでもないよね、そんなの人それぞれだよね。

最近手にとった土井先生のレシピ本がものすごくよかった。タイトルは『土井善晴の素材のレシピ』、内容はもうそのまんま、素材を生かした実にシンプルな料理が淡々と紹介されている。

土井善晴の素材のレシピ

土井善晴の素材のレシピ

  • 作者:土井善晴
  • 出版社/メーカー: テレビ朝日
  • 発売日: 2019/04/05
  • メディア: 単行本
 

素材は、野菜も肉も加工品もひっくるめて五十音順に掲載。1つの素材に対してレシピは4つ。掲載サイズはすべて同じで、見開き2ページの4等分。構成も誌面デザインもシンプルなところがまたいい。

どの料理も少ない材料ですぐに作れる手軽さで、たとえば「エリンギ」のページには「エリンギの焼きそば」が載っているのだけど、具はなんとエリンギのみという潔さ。肉もキャベツも入れない。そんなのありなの?って言いたくなるけど、もちろん何でも「あり」。そして、そんなの本に載せるほどのもの?って言いたくなるけど、こうやって掲載されているのを見て初めて、「ああ、焼きそばって豚肉とかキャベツを入れなくてもいいよな、好きな具だけを好きなように入れればいいんだな」と気づくという。「あれがないから作れない」という思い込みから自由になる瞬間。

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エリンギやきそば。(と言いながら、冷蔵庫にあったキャベツの残りも投入…)

 

春菊をたくさんもらった日にも、春菊のページを見たらかき揚げが載っていて、これもまた春菊に衣をつけるだけの潔さ、桜えびとか玉ねぎとかなし。「あ、春菊だけでいいんだ」って思うと、作るハードルがうんと下がってやる気が出るってもんよ。しかも春菊を包丁で切ることすらしない。「手で2つに折る」と書いてあって、もう、土井先生最高~!!って思わずうなった。春菊のみのかきあげは、過不足なく純粋に春菊の味がして、実においしかったのでした。よい本です。