子どもにとって、大阪でやりたいこと圧倒的ナンバーワンだったのが、無人運転のニュートラムに乗ること。私はその存在をつい最近までまったく知らなかったのだが、子はYouTubeのキッズ乗り物チャンネルでニュートラム動画をしょっちゅう見ており、いつのまにかナレーションを完コピしているほどの熱烈ぶりなのであった。
そもそも大阪に行くことにしたのは、どこでもいいから旅行に行きたいなあという思いと、福利厚生の特典で大阪のとあるホテルに安く泊まれるタイミングが重なったから。海遊館も天保山もあとづけの動機なのだけど、子に「今度大阪に行こうと思ってる」と告げたら、「おおさかといえば、ニュートラムがあるところ! のれる? のりたい!」と言い出して、なるほどそれは絶好のチャンスだね、となったのだった。
ニュートラム、正式名称は「南港ポートタウン線」。始点であるコスモスクエア駅から乗車する。子が夢にまで見たニュートラム。ホームにたどりつき、停車中の実物をついに目にしての第一声は「わあああ!ニュートラムゥゥゥ!さざんか色!!!」
そう、ニュートラムのカラーリング呼称は赤とか緑ではなく、さざんか、竹、あじさい、といった植物の名を使用しているのだ。赤い車両を見て「さざんか色!」とはしゃぐ子に、ホーム上にいた女性が「さざんか? なんておしゃれな表現…!」的な感想をつぶやいていたのだけど、確かにびっくりするよね、4歳児が自発的にこんな色表現をしてたらどんだけ風流なのかと思うわ。
無人運転なので運転席がなく、進行方向の最前ぎりぎりまで客席になっている。広い窓から線路の先が見通せるベストポジションには、スマホで動画撮影中のお兄さんが座っていた。お兄さんは、我が子の姿を認めると隣の空席をすすめてくれた。なんてやさしいの。
というわけで、前方にかぶりつくふたり。まったくの他人だが、同じ趣味を持ち合わせている後ろ姿が微笑ましい…。我が子は、発車するやいなや解説をつぶやき始めた。YouTubeで言ってた内容をなぞりながら、線路の仕組みや特長、分岐の様子、すれちがう車両の色やなんかを実況しまくっている。大声ではなくささやき程度なのだけど、お兄さんの撮ってる動画におそらく声が入りまくり。申し訳なくて気を揉む私だが、乗客の振る舞いとして、動画を撮影するのも自由なら、許容範囲の音量でおしゃべりをするのも自由だろうし……とかなんとか現状を正当化しつつ、ニュートラムは進んでいく。
終点の住之江公園駅までは9駅18分。あっという間の完乗であった。子はずっと上機嫌で、集中して前方を見ていた。ニュートラムはゴムのタイヤで走ってるとか、3本のレールがあるとか、やたらと詳しい知識を披露しつつ。私と夫も楽しんだ。元来の鉄道好きなもので。
さてこのあと、夜ごはんにお好み焼きを食べるべく町をさまよう。