旅と日常のあいだ

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気球飛行、氷上に不時着、地図にない島に上陸後、全員死亡。『北極探検隊の謎を追って』感想

お盆の時期。私と夫と子ども(保育園)の休みは少しずつずれていて、二人は休みなのに私だけ出勤とか、反対に私だけが休みの日もある。まとまった夏休みという感じはなく、今日が何曜日なのかの感覚がだんだん怪しくなってきている。

 

最近読んだ本。『北極探検隊の謎を追って』。今ハマっているジャンル、極地探検ノンフィクション。

 

気球による北極点到達をめざして旅立った3名が、計画に反して早々に飛行困難になり、数ヶ月の氷上生活ののちクヴィト島という未知の島に上陸する。しかしわずか数日後に彼らの日誌の記述が完全に途絶える。33年後、近くの海を通りがかった漁師が偶然に野営地跡を発見し、3名の遺骨や遺品が回収される。しかし死因は不明のまま。

まずこのエピソードに大いに興味をそそられる。なぜ彼らは死に至ったのか、著者がその謎を解こうとアプローチしていく過程にスリルと期待が高まる。が、途中で霊能力者に頼ってみたり、物的資料が少ないため過去文献の洗い直しがメインになったりで、結局真実はわかりようもなく。最後は小説的筆致の推論披露になってしまって、物足りないというか拍子抜け。ノンフィクションなのかフィクションなのかわからなくなった感があった。

とはいえ、限られた材料をもとにできるかぎり広く深い探求を試みているのはよくわかる。探検隊を追う著者の情熱はとてつもなくて、医学的見地を得るためにみずから医学部に入り直すほど。それだけこの探検隊に入れ込んでいるわけで、それは本の構成やデザインの独特さにも表れてるなと思った。

フォントの多用、地の文に挿入される記号や矢印の多用。写真の上に装飾的にキャプションを配置してみたり、縦書き文章の途中で横書きページが混在したり。手紙、日記、史実、著者の行動や心情といった、時代や体裁の違う文章が次々といりまじるなど。見た目の仕掛けが多くて面白いんだけど、同時に読みにくさも感じた…。(ちょいちょいポエムっぽい文章が挿入されたり、見開きで著者のイメージ写真がバーンと掲載されてるのも、??ってなった。これもそれも、著者の探検隊への執着心の発露なのか)

読むと、この気球探検はスタート時点での準備も知識も経験も不足しており、行われるべきではなかったのだろうと思える。探検が失敗したことを知っているからなおさら。でも、人の好奇心や冒険心は、そこに命を懸けてもいい!と思わせる魅惑的かつ抵抗できない引力によるものなんだろうね。周りからは愚かなものに見えたとしても。他の視点から書かれたものも読んでみたくなった。