旅と日常のあいだ

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悪魔のおにぎりはここで生まれた。南極調理隊員による著書『南極ではたらく』

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渡貫淳子さん著、『南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる』を読了。著者は、去年話題になった「悪魔のおにぎり」を生んだ人。

調理隊員の仕事は、昭和基地における南極越冬隊の一員としてメンバーの食事を担うこと。持ち込む食材は隊員30名分×1年4か月分、南極上陸時にすべて用意し、期間中の途中補充はなし。食材のほとんどを冷凍保存するので生野菜がものすごく貴重で、いろいろ試したところきゅうりの冷凍は意外といける、レタスは7ヶ月くらい保存できることを発見。お好み焼きが食べたいなあと思っても、キャベツを加熱するのがもったいなくて作るのをためらう。そんなエピソードの数々に南極という非日常ならではのリアルを感じた。

舞台は非日常だけど、「作る飲む食べる」という行為じたいは人間にとって日常で身近なものだからか、非日常感にドキドキ…!ということは少なめで割と淡々と読み終えた。基本的には屋内での仕事であり、たまの屋外活動も冒険やスリルを求めるものではない。私がここ最近読んできた極地ものは遭難だの転覆だの狩猟だのが当たり前のシビアな内容だったので、設備が整った基地での生活では刺激が足りないというか(勝手なこと言ってるけど)。いや、実際にはもちろん想像を超える苦労があるだろうけれど、著者の語る内容と表現に盛り上がりが少ないので、読み物としてやや物足りないなあという、そんな印象だった。

▼こちら、シビアでしんどいタイプの極地ものノンフィクションたち。

tokotoko.hatenablog.jp

本書にはレシピ集があって、いわゆる「悪魔のおにぎり」の作り方も紹介されている。めんつゆ+天かす+あおさ を混ぜたおにぎり、美味しいに決まってる組み合わせだよ。もともとは余った天かすの有効活用として夜食用に作ったもので、ある隊員から「夜にこんな高カロリーは危険だとわかっているけど、美味しいからつい食べてしまう悪魔的存在」と言われたのが始まりとのこと。わかる……。最近になって天かすの美味しさに目覚めた私としてはわかりすぎる。

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釜揚げしらすと合わせるために天かすを買って以降、そのカリカリ感、香ばしさ、ちょっとしたコク、油の香り、それらの美味しさにハマってしまった。白ごはん+佃煮+天かす、これ最高。全体的な味としては悪魔のおにぎりに近いものがあると思う。天かすの万能感と影響力は、これ本当に悪魔の仕業かなってくらいやみつきになるね。

南極ではたらく:かあちゃん、調理隊員になる

南極ではたらく:かあちゃん、調理隊員になる

 

▼私が南極に行ったときの旅行記はこちら。