旅と日常のあいだ

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浜松市「バネバネの里」で、再び流れ始める時間

週末、友人への贈り物を探すべく、浜松市引佐町にある骨董雑貨店「バネバネの里」へ出かけた。半年ほど前にこの店を取材して気に入ったというライターKさんとである。その店は、くねくねした山道を進んだ先の森の中にあった。

建物を増築し、部屋を広げてはつなぎ、また広げてはつなぎを繰り返していたらこんな不思議な作りになりました、というような店。玄関を入ってそこが1階だと思っていたら、さらに下に2つのフロアがあった。階段を上がったり下がったり、ドアや通路を行ったり来たり、そうして現れる空間ごとに、日本の家具あり、ヨーロッパのアンティークレースあり、どこか遠い国のアクセサリーや器あり。時間も空間も超えた品々が所狭しと置かれており、ここは迷路か宝箱か?というぐあい。(映画「耳をすませば」の地球屋をもっと明るくしたようなイメージ)

友人への贈り物に選んだのは、大正時代に作られたらしきゼンマイ式の壁掛け時計である。店の時計のいくつかは、主人であるおじさんいわく「振り子がどこかへいってしまったからもう動かない、ただの飾り」ということだったが、私たちは動く時計を選んだ。時計ですもの、せっかくだから針が動いて時刻を示してくれるほうが頼もしいからな。

おじさんが、「ちょっと動かしてみよう」とネジと振り子を持ってきた。もう長いことネジを巻かれていないであろう沈黙の時計の、底面にあるふたを開けて内部をのぞいてみる。小さな部品が機構を成しているのが見える。手を入れて、鉤に振り子を引っ掛ける。それから、文字盤に開いた二つの穴にネジを挿して回す。指先に、キリキリという手ごたえがある。

「動くかな?」

息をひそめて見つめていたら、数秒の後にカチカチという定期的な音が聞こえてきた。振り子が動いているのだ。時計が生き返った! この時計は一体いつぶりに時を刻んだのだろうかと感慨深いような心もちになる。

 「時刻を合わせておこう」と、おじさんが長針を指でぐるりと回した。針が文字盤の<6>を差したところで、「ボーン」という音が鳴った。さらに半周して<12>を差したところで、また「ボーン」。

 「いい音ですねえ」

「これはいいね」

 Kさんと私は深く満足し、時計を抱えて店を後にしたのだった。この夜に時計をプレゼントした友人にも喜んでもらえてよかった。

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値札がなくてどきどきしたけれど、手の届く値段だった。いい買い物をした。

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店の一部。下の階は天井が低くて体をかがめなければ入れない。上階にはカフェスペースもあった。素敵なダイニングテーブルがあって「売約済」と札が貼られているのだが「このテーブルがなくなるとカフェ営業ができなくて困っちゃうから、次のテーブルが入荷するまで配達を待ってもらってる」のだそう。

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私は古い薬瓶を買った。波打ったガラスの表面が素敵だ。Kさんは鳥の形をした金属製のカードスタンドを買っていた。