旅と日常のあいだ

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毎日、異世界通い。上橋菜穂子「守り人」シリーズ

会社の本好きKさんがおすすめして貸してくれた、上橋菜穂子の小説<守り人>シリーズに夢中だ。異世界ファンタジーなのだが、「こんなにもしっかり世界観が構築されている」かつ「その世界観の幻想性や神話性が自分のツボ」っていう作品はちょっとほかにないかも。あと、文章そのものも明快で美しいと思う。読書のための読書、っていう楽しみが感じられてとてもうれしい。

全10巻のシリーズのうち、はじめの『精霊の守り人』『闇の守り人』を読み終え、昨日から『夢の守り人』を読み始めた。序盤に登場人物が夢を見る場面があるのだが、その描写が素晴らしくって感嘆。見てる夢の内容も素敵なら、それを表現する文章も素敵なのだ。通勤電車の中で自分だけが異世界にイッちゃってんじゃないか、ってくらいの心地よいトリップを味わってしまった。あと、旅の歌い手がとっておきの歌を披露する場面。これまた通勤電車の中で私の耳にだけこの世のものとも思われぬ喜びの旋律が流れてきてですね、心があたたかく満ち足りるあまり寿命さえのびちゃう感じ? まあとにかく、毎日しあわせな気持ちで読み進めてます、ありがとうKさん。

主人公は、短槍を操る三十過ぎの女性。物語中では「中年の槍使い」という表現をされることもあって、一般的に「異世界ファンタジー」というイメージから連想される主人公に比べると年齢は高い。最初は私もびっくりした。が、考え方とか行動とかがその分シビアで、筋が通ってて、セリフにも納得できる部分が多い。っていうか、三十過ぎるともう中年呼ばわりなのか。あと数年で同年齢になってしまう私にはそれがいちばん恐ろしいのだが。

ひとまず異世界ものとしては、小野不由美の<十二国記>シリーズ、エンデの『はてしない物語』と並んで、私の心の殿堂入り。こんなにハマるとは思わなかった。「文庫化されたものしか買わない」とKさんは明言していたので、どんどん文庫化することを切に願う。