旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


無人島に持っていくべき一冊とは。ルイス・キャロルの論理学書

 

無人島に持っていく3冊について語る会」に誘ってもらった。

参加者は3人。それぞれが3冊ずつ「無人島に持っていくならこの3冊」という本を選び、その本について大いに語ろうじゃないかというなんとも素敵な企画である。

会場は、この会を提案してくれたAさんおすすめの和食居酒屋。野菜がとびきり美味しかった。初物の菜の花とか、アンチョビとあわせたマッシュルームとか、ごぼうのから揚げとか。大好きなしめさばも。美味しいお酒も、それはそれはたくさん飲んだ。

本と、それを語る相手と、お酒と、美味しい料理と、これ以上ほかに何がいるの?ってくらい完璧な舞台だったなあ。初対面のAさんとは、本好きに加えて「妄想好き&ぎんなん好き」という共通点も見つかったし。うれしい夜だった。

選ばれた9冊(3人×3冊)は、海外小説あり、時代小説あり、エッセイあり、論理学の小編集ありと実にさまざま。どうしてその3冊なのか、という話はもちろんだけれど、選んだ本を「意外だね」と言われて「そうなのか、意外だと思われるのか」と思ったり、なんでそれなの!?とツッコミたくなったり、そもそものテーマである「無人島」をどういうイメージでとらえたのか?という話題が出たり。それぞれに個性があり、そこに人となりや考え方とかがにじみ出ていてわくわくした。本の趣味を語ることって、その人の脳のある一部分を見せることだと思う。ちょっとどきどきする。

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私が選んだうちの一冊は、『不思議の国の論理学』。ご存知「不思議の国のアリス」の作者であり数学者であったルイス・キャロルの作った謎かけや論理ゲームを、柳瀬尚紀氏の魔術的邦訳で紹介しているという迷著。中学1年生のとき、初めて書評を読んで買った本で(それまでは店頭で気に入って買うという方法しか知らなかった)、そういう意味でも思い入れの強い一冊である。その後いったん絶版になり、5年くらい前に復刊したという経緯も物語的。本の中身は、当時の私には難しい部分があった。今もまだ全部はわからない。ユークリッド幾何学とか、ちんぷんかんぷん。

まあしかし、何しろ無人島。たっぷりの時間を使って物語に没頭し、ここではないどこかの場所を思い、哲学的な思索にふけるのだ。初回にして、いいお題だったなあ。

持ってきた本の貸し借りもやって、ほろ酔い加減で店を出たら外の空気は冬に逆戻りの冷たさ。しかしもう春、第二回のお題は「春の一冊」に決定。お題を唱えながら自分の本棚を見返すことの楽しみがある。次に顔を会わせるとき、また知らない本に出会って大いに語ることをわくわくと待つ。