旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2015年夏、雪と花と池の白馬岳へ(1)

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白馬岳 @2,932m
2015年7月25日(土)~26日(日)晴れ

◆1日目=猿倉6:40-8:00白馬尻山荘8:30-9:00雪渓入口9:30-11:40葱平12:30-13:10小雪渓入口13:30-15:40白馬山荘着(小屋泊)

◆2日目=4:45起床・朝食-6:00山荘発-6:30白馬岳山頂-10:20白馬大池(お昼)11:30-12:00乗鞍岳山頂-13:30天狗原
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この夏、雪渓で有名な北アルプス「白馬岳」に登った。読み方は「はくばだけ」でなく、「しろうまだけ」が正しい。富山県と長野県が接するあたり、つまり静岡からはずいぶん遠い場所にある。雪渓を登るのは想像以上に長くてハードでくたびれたけれども、天候に恵まれて素晴らしい山行となった。

夜中に静岡を出発し、朝方、八方駐車場に到着。ここからタクシーで、登山口である猿倉へ。猿倉から先、しばらくは沢沿いの緑の道を歩く。ちろちろとした水の流れは気持ちがいいねえ。

白馬尻山荘では大きな看板が出迎えてくれる。書かれた文字は「おつかれさん!ようこそ大雪渓へ」。休憩の後、少し進んだ場所にある岩場で軽アイゼンを装着。この先が、いかにも「白馬らしい」風景である大雪渓のはじまり。梅雨明けのあとの晴天の土日、大雪渓は混んでいた。

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行列の先が見えない。立ち止まってこんな写真を撮っている場合ではない。途中には犬が歩いて(登って?)いた。足は冷たくないのかな、寒くないのかな。

 

まるまる2時間もの雪渓が終わって一息。すてきなアルプス的風景。

お花畑の中を進む。白馬は、雪渓とともに花の山としても有名だ。このあたり、風が強くて大変だった。さっきの雪渓で脚はもうクタクタだし、ああ、早く小屋に着きてえなあって思ってるころ。

だんだん霧も出てきて、稜線に出るとあたりは真っ白に。もやの中に浮かび上がる白馬山荘が要塞のようである。

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800人も泊まれる巨大山荘。よくもまあこんなところに建てたよね!!

到着早々、スカイプラザという名前のカフェスペースで一服。大きなガラス窓からは北アルプスが目線の高さに丸見え(だってここは標高3000メートル)、ロケーション最高!のはずなのだけれど外は霧。数メートル先も判別できない真っ白な世界のなかで、だから外に広がるであろう絶景に気を取られることなく、ビールとケーキに専念したのだった。

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白馬でモンブラン。標高3000メートルで美味しいケーキが食べられるとは幸せだ。

 

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夕食はハンバーグでした。これまた美味しい。ありがたや。

就寝スペースは、個室ではないが雑魚寝でもなかった。部屋の中央に通路があり、その両脇に足を通路に向ける格好で寝床がずらりと並ぶ。布団2~3枚が敷ける広さごとに肩ぐらいの高さの壁で仕切られており半個室のような造り。私たちは3人組だったのだが、壁で仕切られた一つのスペースを3人で使えたのでとても過ごしやすかった。座ってしまえば(そして寝てしまえば)両隣の壁の向こうはもうまったく気にならない。あまり広くはなく1人あたり布団の幅は0.7枚、他人だったらこの近さは厳しいが、気の知れた友人ならまあいいよね。

布団の柄が妙に和風(頭の下は、徳澤園で買った手ぬぐいです)。

この写真、友人たちに超不評だった。「怖い」「ホラー」「ぞっとする」などと言われ放題。そう? 怖いかな? 本当に怖いのは布団に横たわるリカちゃんではなく、山小屋の薄闇の中で、人形を布団に入れてコソコソと写真を撮っている私だと思うよ。ぞっとする。

tokotoko.hatenablog.jp

 

2015年秋、南アルプス・甲斐駒ヶ岳へ

山梨県にある甲斐駒ヶ岳に行ってきた。雲の上の世界。写真は山頂から下るところ。白砂の道が特徴的です。

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甲斐駒ヶ岳、楽な山ではないと知ってはいたが想像以上にハードであった。高山病らしき症状も出て後半はすっかりバテてしまった。登りながらも下りながらも、「もう山なんて登らない」って100回以上思った。「向いてない。しんどい。きらい。何日か経ってこのつらさを忘れて、うっかりまた山に行こうなんて思わないようにしよう、絶対だ」って強く思った。

それなのに、だ。下山してわずか二日後の今、なんと私ときたら、山はいいなあなどと思っているのである! 我ながらあきれる。しかしキツめの山に挑戦すると本当にキツいので、次はゆるくて気持ちのいい山を選んで行きたい。確か6月の八ヶ岳でもそんなことを言ってた気がするけど。「ゆるめのトレーニング」と称して天狗岳のふもとに行ったのに、「せっかくだから山頂に登りたーい、我慢できん!」って天狗岳に登った気がする(https://tokotoko.hatenablog.jp/entry/2015/06/19/203000)。どこまでも懲りない私。

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甲斐駒ヶ岳 @2,967m
2015年9月5日(土)晴れのち曇り  

◆北沢峠7:30-長衛小屋7:55-仙水小屋8:35ー仙水峠9:15-11:25駒津峰11:55-13:25山頂13:40-14:40駒津峰15:00-17:15北沢峠(長衛小屋にてテント泊、翌日帰路)
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楽だったのは初めだけ。なだらかな苔と森の道が気持ちいいなー、南アルプスの懐の深さを感じるわーとか言っていたのだが、このあとの急な登りで、誰もが無口になった。

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森を抜け、岩が積み重なった斜面を登る。陽射しが注ぐわ照り返しが強いわ足元がゴロゴロするわ、まあ歩きにくい。このあと仙水峠という小広場に出る。

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仙水峠から見た景色、左が甲斐駒ヶ岳のピークで、右の丸いのが摩利支天(まりしてん)。二つの山頂間は往復40分くらいということだが、今回は甲斐駒で精いっぱい、足をのばして摩利支天にも……は無理だった。

ここまでの写真で全行程の15%くらい。ここから急な登りになり疲れがのしかかり、写真をほとんど撮っていない。げんなりするような岩場を乗り越えたり、傾斜がきついうえに滑りやすい砂の道をちょこまかと登ったり、なんとも体力を消耗した。山頂の下は花崗岩特有の白い砂の世界、この非日常感あふれる眺めが何よりも特徴であり見どころであり感動ポイントであるはずなのだが、そこを歩きながら考えていたのは冒頭のとおり「もう登山なんかやめよう」ってこと。

今にして思えば、あの無気力感は完全に高山病の症状である。同行者の励ましでなんとか山頂を踏んだ時にはもちろん達成感があったのだが、そのまま座って石にもたれてぼんやりするばかり。山頂に来たっていうのに、結局一枚もシャッターを押さなかった。(だから今回、本当に写真がない!)

天気は悪くなくて、暑すぎず、雨にも降られず。昼前から雲がわいてきたので遠望はかなわなかったけれど、雲の間には青空が見えていて気持ちのよい空だった。下りは、登りとは違うルートでスタート地点の小屋まで一直線。ペースが上がらずコースタイムをだいぶ超えてしまったがなんとか無事下山。ホッとした。

アルプスの登山シーズンは遅くても10月のあたままで。もう絶対に登りたくないと確かに思ったのに、なんとかまた予定をやりくりしようとしている自分がいる。今回、下山後に息が止まるようなトラブルが起こった。それを、みんなで知恵を絞って役割分担して全力で動いて解決したことも、「山と、山の仲間はすばらしい」っていう思いを増幅させてるな。

自分の体力を過信することなく登山靴のひもをギュッと締め直して、あと一回くらいは、間違ってもキツすぎない山へ、時間にも体力にも余裕がありすぎるくらいの山へ行けますように。

2015北八ヶ岳・天狗岳(3)

北八ヶ岳の二日目。しらびそ小屋に泊まった前回の記事はこちら。

 午前6時40分、しらびそ小屋を出発して中山峠へ。

昨日下ってきた道を今日はひたすら登る。とにかく急斜面で歩きにくいあの道、あれをまた登るのかと思うと気分は沈みがち。標準タイムは1時間半ってことだけどそんなのムリムリ、2時間はかかるつもりでゆっくり行こうぜ。

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こんな道を登っていきます

かなり慎重な気持ちで進んだところ、「さあいよいよここから苦しい登りが始まる!」と思ったらそこがもうゴールの中山峠だった。えっもう着いたの、信じられないんだけど。きっかり1時間半。あんなに警戒していたのに、終わってみたらそうでもなかった。あらかじめ道の様子がわかっていて、ちゃんと心の準備ができていればこんなふうにスイスイ歩けるものである。「私たち、やればできる子!」調子づいた我々、このまま駐車場に戻る当初の計画を変更し、ひとつくらい山頂を目指そうよってことで天狗岳に登ることにした。

天狗岳に登る前に、昨日も立ち寄った黒百合ヒュッテへ。リュックはここに置いていき、身軽になって山頂まで往復しようというステキな作戦である。

 

黒百合ヒュッテから少し登った場所。天狗岳は、二つの頂上が並んだ形をしている「すりばち池」の向こうに、東天狗(左)、西天狗(右)。頂上間は往復40分。

天狗岳への道はそれなりにしんどかった。目指すべき山頂が見えているのにそこまでが遠い。道も割と単調だし、途中で霧が出てまわりの山々も見えなくなってしまったし。

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リュックは置いてきたが、リカちゃん人形は持ってきた。何やってんだか。ちなみにこの一帯には「天狗の奥庭」という名前がついていた。面白いな。1時間40分で、まずは東天狗の頂上に到着。頂上手前の分岐点から頂上までが思いのほか長くて疲れた。登頂の記念撮影。数年前、初の八ヶ岳登山で買った手ぬぐいをおもむろに広げてシャッターを押したが……

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「私は今ここにいます」

カメラを構える私のために手ぬぐいを持ってくれていた友人から、「これ、ここで撮る意味あるの?」という冷静なツッコミが。た、確かに。頂上じゃなくても、自宅でもどこでも撮れるね。。。そそくさとリカちゃんをしまい込み、前方に見えるはもうひとつの頂上「西天狗」。

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友人は「疲れたから私は行かない。ここで待ってるから行っといで」と言う。それじゃあちょっくら行ってきます。友人を東天狗に残し、ひとり西天狗へ向かう。稜線は気持ちが良くて、疲れているはずなのに思わず駆け足になる。ノンストップで走り続けていたら、すれ違った登山者に「すごいね、トレランやってるの?」と聞かれた。いや違います。ただウキウキしちゃって脚が前に出ているだけなんです。

西天狗に到着。振り返って友人のいる東天狗を見てみたけど、

あいにくの霧の中。来た道をまたピューーッと走って帰る。

少し雨がぱらついてきた。リュックを屋外に残してきた私たち、やや焦りながら下山。登りはげっそりしていた友人も「下りは得意!」と言いながらピュンピュン下っていった。登山が趣味と言いながら、基本的に登りはきらい、平らな道または下りの道が好きな我々である。

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黒百合ヒュッテに着いてリュックを回収し(濡れていなかった)、小屋のカフェでお昼ごはん。ストーブが燃えるテーブルで、温かいスープとフランスパンを食べる。黒百合ヒュッテいいなあ、可愛いな! すごく居心地のいい小屋なので、今度はぜひ泊まってみたい。

帰りは、ルート上にある高見石にも寄った。高見石小屋という山小屋のすぐ横に岩場の頂上があり、登るのがちょっと大変だけれどここからの眺めがとても素敵なのであった。 

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高見石より、白駒池を見る。森と池と空と山。いいなあ、静かだなあ。よくここに来るのだという先客がいて、「冬には白駒池が完全に凍って上を歩けるようになるよ」と教えてくれた。それもまた楽しそう。真冬の登山は無理だけれど、ガイドさんと一緒に森を歩いたり、凍る湖の上を歩いたりするのはとても魅力的だ。

八ヶ岳は奥が深い。北と南とで様子がまったく違うし、山の数もたくさんあってまだまだ登り甲斐がある。山頂を目指さなくても、点在する小屋や湖をめぐって遊ぶこともできる(まあ、今回はそのつもりだったのに物足りず、結局山頂に行くことにしたわけだけど)。やはりあれだな、真夏は北アルプスの高山に登って、秋や冬の入口のころに八ヶ岳に来るのがいいかもしれないな。また手ぬぐいを持って、「その写真は家でも撮れるでしょ」と言われながら。

2015年北八ヶ岳天狗岳しらびそ小屋の登山記録、おしまい。

2015北八ヶ岳・天狗岳(2)

北八ヶ岳のつづき。(前回、白駒池~しらびそ小屋の話はこちらです

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白駒池駐車場から歩くこと約5時間、今日はこの「しらびそ小屋」に宿泊する。

手前の本館が受付と食事スペース、奥の別館が宿泊部屋と談話室。窓からはみどり池と天狗岳が見える。窓辺には小鳥やリスもやってきた。夕方の気温は15度と肌寒く、ウールの長袖シャツにフリースを重ね、あかあかと燃える薪ストーブを囲んで暖をとる。友人と私、夕食が待ちきれずにワインを注文。グラスで出てくるのかと思ったら、ボトル1本買いきりだった。ええー、こんなに~!と言いつつ、いい気分でぐいぐい飲み干す(主に私が)。

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夕食は、アジフライにポテトサラダにかき玉汁、そして生まれて初めて食べる鯉の洗い。どれも美味しかった。ワインもね。

消灯は20:30、明日の朝食は5:30。山小屋というのは、立地の素敵さやごはんの美味しさやリスの可愛さに関わらず、そして疲労度や達成感や明日の起床時間に関わらず、だいたいは「すぐに寝つけない」「何度も目が覚める」「なかなか朝が来ない」という三重苦に見舞われがちなものである。

この日はここに「おしゃべりすぎる山ガールたち」という第四の災厄が降りかかり、もうほんと、寝付けないなんてもんじゃなかった。登山を始めたばかりらしい若きガールたち、どうやら初めての山小屋泊であるようで、うきうきとはしゃぎすぎであった。彼女らを含め大広間に15人が雑魚寝なのだが、全員がもう布団に入っているのに、そして消灯が20:30だっつってんのに、なんで21時になっても隣室の荷物置き場でくっちゃべってるんだあんたらは!! お作法がなっとらん!

眠れぬまま横たわって静かにブチ切れた私、布団の上に憤然と立ち上がった。そして、それまでついていた大広間のこだま電球を消し、室内を真っ暗にしてガールズをびびらせるという小さな反逆に出た。まったく、反逆としてはあまりにも小さかった。荷物置き場を離れて部屋に入ってきたガールたち、「(くらいね!)」「(よく見えない!)」「(しーっ、しずかに!)」などと大きなヒソヒソ声を響かせ、やがて静かになった。こっちはまだ眠れないというのに、入ってくるなりスヤスヤと眠りやがってもう!

羊を数えたり腕を無意味に上げ下げしたりしてやっと眠りに落ちたと思ったら目が覚めて、時計を確認したらまだ0時。時間の進まなさに絶望する。早く朝になってよー、もう起きてしまいたいよーともぞもぞしていたら、隣の友人が急に明瞭な声を発したのでびっくりした。いわく、「風邪が治ってよかったねー!」。いや、風邪なんて引いてませんけど。続きを待ったがあとはゴニョゴニョ言うばかり。あの脈絡のなさ、どうやら寝言であったようだ。まったくもう、どいつもこいつも!

 

午前5時。待ちわびた朝がやってきて起床。まったく眠った気がしないが、顔を洗って外に出て、池と空と山を見たら元気になった。単純!

来るときに歩いた中山峠~しらびそ小屋の道を再び歩くのがイヤで(高低差がきついから)夜のうちに代替ルートを検討していたのだが、やはり当初の予定どおり来た道を戻ることにした。ほかのルートは時間がかかりすぎたり、道案内が十分でなく迷う危険性があったから。とにかく一歩ずつ進もう、ひとまずはそれが目標だ。

朝食を食べていざ出発。ちなみに朝食はとろろご飯だった。しらびそ小屋は、「薪ストーブで焼く厚切りトースト」の朝食が超・超・超・超有名なのだけれど、あちこちで紹介されてあまりにも有名になりすぎたせいか供給が追い付かないらしい。今はもう、宿泊予約時に「なんとしても厚切りトーストを!」と伝えておかないと食べることができないのであった。

そうとは知らず、私たち(そして前述のガールズも)、やや拍子抜けの気持ちでとろろご飯を食べる。とろろご飯は非常に美味しかったのだが、トーストを食べられなかった悲しみをやわらげるために、私もガールズも「パンよりごはんの方が腹持ちがいいよね」「実際、トーストってそこまでめずらしいものじゃない」「和食の方が健康的」などと必死に正当化していた。めんどくさい女子たち。

というわけで、朝ごはんで力をつけたところでキタヤツ登山二日目のはじまり。 

2015北八ヶ岳・天狗岳(1)

夏山シーズンに向け、足慣らしを兼ねて友人と計画した1泊2日の北八ヶ岳。今回はあくまでも本格登山の前のトレーニング、山頂を目指すことはせず森の中をのんびり歩こうねって言っていたのだが……。

私という人間は、道さえあればどれだけでも歩きたくなってしまうこと、そして登山道に入ったからには山頂を目指さずにいられない性分なのだということがよーくわかった。2日目なんて歩行4時間の予定が結局10時間近くも歩いて二つの山頂を踏むことになり、トレーニングどころか初回から本番。

以下、初めての北八ヶ岳、通称「キタヤツ」の登山記録。

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2015年6月13日(土)~14日(日)くもり・晴れ
◆1日目=白駒池駐車場8:50-11:10にゅう11:25-12:45中山峠-12:50黒百合ヒュッテ(昼食)13:50-15:15しらびそ小屋(宿泊)

◆2日目=5:30朝食6:40-8:10中山峠-8:20黒百合ヒュッテ(荷物を置く)8:45-10:20東天狗・西天狗11:10-12:10黒百合ヒュッテ(昼食)13:40-15:50高見岩16:10-17:10白駒池駐車場
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北八ヶ岳の特徴は「森と苔」だと言われるが、歩き始めてすぐにそれを実感した。果てがないほど奥まで続く樹木と、その根元を覆う苔。それはもう、いちめん緑色の世界。

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そこにふと現れる白駒池。葉っぱの向こうに見えるのは空ではなくて湖面である。透明すぎて、写真で見てもよくわからん。風もなく静か。

湖の周囲には木道が整備されている。ここを歩くだけならハイキング気分、登山の装備は必要ない。緑がきれい~、湖がきれい~、空気がおいし~。うれしくなってリカちゃんも飛び出すよ。 

キタヤツには470種類以上の苔が生息しているそうな。

イワカガミ。たくさん咲いていた。

しばらく歩いて、岩が突きだした展望地「にゅう」に到着。にゅうって変わった名前だな。登山道の看板には、ところによって「ニュー」とか「にぅ」とか「乳」とかいろいろな書かれ方をしていた。口にしたくなる響きだよね、にゅうって。(てっぺんの、人が立っているところがにゅう)

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にゅうからの眺め。眼下に先ほどの白駒池が見える。

ここでおもむろにリカちゃんを取り出して撮影していたら、関西弁の愉快な三人組が「うわあ、いいな!私たちにも写真を撮らせて!」と言い出した。リカちゃん撮影会 in にゅう。しかしあとで振り返ってみると、このときを最後にリカちゃんの帽子が紛失した模様。裏地がリバティプリントの可愛い帽子だったのに悲しいねぇ。今頃、にゅうの岩場にあの小さな帽子が引っかかっているのかな。

にゅうから下って中山峠をこえ、お昼休憩は山小屋「黒百合ヒュッテ」にて。 表にはこんなかわいい看板が。チョコレートリリー=黒百合。私はカレーライスを、友人はカレーそばを食べた。

休憩後、再び中山峠を経て次に目指すは「しらびそ小屋」。

この道が予定外の悪路であった。悪路っていうか私たちの調査不足なんだけど、森の中をゆる~く下る気楽なつもりで考えていたところが「ヒイッ」て息をのむくらいの急な下り。これがまた歩きにくいわすべりやすいわで、もう心底うんざりした。うんざりの最大の要因は、「明日の朝はこの道を登らなければいけないのか」ってことである。それはイヤすぎる。同じ道を行って帰ってという計画だったけれど、これはちょっとルート変更を考えたいね。そんなことを話しながら、しらびそ小屋へ到着。

小屋の前にひろがるのは「みどり池」。今夜はこのしらびそ小屋で宿泊である。このあと、若き山ガールたち(我々のことではない)と、小さな反逆と、寝言の話は次回に続く。

 

熱海で登山、神秘の池を隠した玄岳(くろたけ)へ

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最近登った山、静岡県熱海市にある玄岳(くろたけ)。くねくねと伸びる道路は伊豆スカイライン。右側は相模灘、海に突き出た真鶴半島。山頂から見る、こういう奥行きのある風景がたまらない。左下には池が見える。氷ケ池というのだって。

 

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池のほとりまで歩いて行くことができる。山中に不意に現れる池はなんだか神秘的だ。昔、冬にこの池に張った氷を切り出して市街地に運んでいたらしい。

久々の登山で、山に向ける気持ちが盛り上がってきた。ああ、もっと長く歩いて、もっともっと高い山に登りたい。夏山の季節はすぐそこ。

秋の山歩き、山梨県の三方分山と不完全な味噌ラーメン

山の友と、「年内にあと一回はどうしても山に登りたい。歩きたい。よい景色を見たい。近すぎず遠すぎず、高すぎず低すぎないこと。歩行時間は3~4時間。何より重要なのは、疲れすぎないこと」という点で意見が完全一致。晴れた秋の日に、さあ山へ登ろう!ということで山梨県精進湖へと向かった。めざす山は、湖の北西にある「三方分山(さんぽうぶんざん)」。

途中の朝霧高原に、富士山がきれいに見える場所がある。ちょうど友人が「先日、ススキの名所である箱根の仙石原に初めて行ったけれどススキ草原が狭くて拍子抜けした」という話をしていた矢先、車の右手には一面のススキ草原。きらきら光る穂先がどこまでもどこまでも続いており、果てが見えないくらいの広がりの向こうに富士山がそびえているのであった。ススキを見るなら仙石原より朝霧だよ、スケールの大きさが違うもの。

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車を降りて歩いていたら、ススキ越しの富士山を撮影中のカメラマンに「いいね、そこにいて!もうちょっと前!」と立ち位置を指示され写真を撮られる。「君らの背中と、ススキと、富士山と、太陽。いやあこれはベストショットだ。この写真は年賀状にするよ。二科展にも出すよ!」とカメラマン。この調子の良さ、嫌いではない。二科展入賞を楽しみにしております。

再びのドライブ、車内でしゃべりまくっているうちに目的地である精進湖を華麗に通り過ぎる。いかんいかんと来た道を戻って精進湖へ。いざ登山開始というときに、「そういえばお昼ごはんの準備がない。パンもおにぎりもない。チョコレートしかない、これはまずい」ってことになり、また来た道を戻って最寄りのコンビニへ。いろいろと適当すぎる。

カップ麺とパンとお菓子を買って今度こそ出発。車を降りたら湖畔に吹く風がめちゃくちゃ冷たい。「さむっ!ムリムリ!歩けない!」 逃げるように車に戻りドアを閉める。寒さのあまりやる気をなくしかける。ウールのインナーにフリース、ゴアテックスのアウター、毛糸の手袋に毛糸の帽子。足元はスパッツの上に保温機能のあるパンツを重ね履きという今季一番の防寒仕様。行くしかない。震えながら車を降り、さむいさむいさむいーーー!!!と連呼しながら歩き始めたのだった。 

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湖畔の集落を抜け、舗装路を少し歩くと山道になる。林の中、緩やかな登り坂を進む。木々の葉は半分ほどが落ちており、足元にふんわりと積もっていた。小一時間で峠に出る。そこから40分ほど尾根を歩き、三方分山の頂上に出た。

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頂上は一方しか視界が開けておらず、そこも木が多くてあまり広い眺めを得ることはできなかった。精進湖と富士山を見ながらここでおひるごはん。お湯をわかしてカップ麺をつくる。持って行ったのは味噌バターラーメン。いやあ、温まりそう! 

 お湯を入れ、静かに待つこと3分間。山頂で食べるアツアツのラーメンは最高だ、やっぱり冬は味噌ラーメンに限る、体の温まり方が違うわ! あっという間に完食。ふと視線を下に向けると、土の上に「味噌バターラーメンのスープ」と書かれた小袋が落ちている。え、スープ……? まさかそんなはずはないと思いたかったが、それはどう見ても、カップ麺に入れるべきスープのもとなのであった。そういえば私、スープを入れた記憶がない。麺にお湯だけをかけて食べていたようだ。それってつまり、味噌の味もバターの味もしてないってことだよね。味のないラーメンを食べ、しかも「味噌バターはさすがに温まる」とまで思い込んでいた自分は一体どこまで適当なのか。それにしても思い込みの効果がこんなにも大きいとは驚きである。使い損ねた味噌バタースープは持ち帰った。白いご飯にでもかけて味噌バターご飯にしよう。

 というわけで山頂でのお昼を終え、軽いアップダウンを繰り返しつつ次の峠に出て、さらに縦走するコースもあったけれど体力や時間や気分と相談したうえで下山することにした。下りの傾斜はかなり急。落ち葉が降り積もる道を、すべらないよう注意しつつずんずん進む。

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前日の夜中に作ったボーダータイツがお似合いです

 再び戻ってきた湖畔はやっぱり風が冷たくて、山より寒い!って言いながら急いで車に戻ったのだった。休憩を除く歩行時間は3~3時間半くらいか。秋の山は寒いけれど、汗をダラダラかきながらの夏山はそれはそれでつらいので、私には秋のほうが歩きやすい。たぶん、味噌バターラーメンに味噌バターをちゃんと入れていたら、ちょうどいい感じに体も温まってなお快適だったんではなかろうかと推測する。

 このあと、カフェに寄ってから、ご当地名物の吉田うどんを食べに。

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浜石岳の山頂から富士山を見る

最近登った中で特に気に入った山、静岡市にある浜石岳(707m)。

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なんといっても山頂からの眺望がすばらしい。そこに行くまでの登山道は木が生い茂るばかりなのだが、山頂でぽっかり視界が開けて、360度全方位の景色が見渡せる。駿河湾伊豆半島、箱根の山々、富士山、南アルプスの峰々。山頂は芝生広場になっていてとても広い、そのことも素敵に感じた。お弁当を持って行ったらぜったい気持ちいい!

 

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一緒に行ったカメラマンもひとときの休憩。(お仕事だったのです)

2014冬 入笠山で雪山ハイキング

日帰りで、長野県富士見町の入笠山(にゅうかさやま)に行ってきた。2014年の初登山であり、私史上はじめての雪山である。グローブもパンツもフリースも新調して防寒対策ぬかりなし。夏の北岳で活躍したアイゼンも持って、いざ雪上へ。

入笠山は富士見パノラマリゾートというスキー場の上部にあり、登山口まではゴンドラで行ける。ゴンドラの乗客は二種類、すなわち、「降りるために乗る人=スキーヤーやボーダー」と、「さらに登るために乗る人=我々のような登山組」。

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ゴンドラを降りてすぐに登山口が現れる。山頂まで60分。看板に「ハイキングコース」とあるとおり、ガツガツ登るというよりは花や湿原を楽しみながら気持ちよく歩くコースである。もちろんこの時期には花も湿原も関係ない。すべてが雪に覆われた上を歩くのである。

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靴にスノーシューをつけて歩く。金色の枠が見えているのがそれ。スノーシューをつけると表面積が大きくなって、深さのある新雪の上でもグイグイ歩ける。といっても、ときに深みにはまって膝までズボッといったり、そのたびに笑い転げたり。

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シラカバの林をぐんぐん進む。なんという青い空。

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動物の足跡もちらほら。これはどうやら、ウサギのもの。

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休みながら歩くこと1時間30分くらいで頂上に到着。登山者の姿はなかなか多い。入笠山に来るのは三度目だが、こんなにも眺望がよいのは初めて。まわりの人も「今日の天気は完璧だね」と。

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北アルプス方面、雪をかぶった峰のうち中央の一番低い部分が大キレット。その左側の高い部分が北穂高、さらにその左が奥穂高。大キレットの右側はなだらかな稜線がのびていくつかピークがあるが、いちばん右の高いところ(ちょっと黒いところ)が槍ヶ岳だ。去年歩いたルートがよく見える。山の達人に解説してもらい、どれが何の山かちゃんとわかって感動する。自分の知識ではちっとも区別がつかないし覚えられないし、いつまでたっても富士山しか見分けられないのよね、情けないけど。

さあそして、今回楽しみにしていたのがソリ遊び。登ったあとのご褒美として下りでは存分に滑るぞーと意気込んでおり、ほどよい斜面を見つけては滑る。

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イエーイ!

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ズザザザザァァ!

かなりの傾斜とスピードで大いに盛り上がった。この日のために100円ショップで買ったソリ、今日を限りに壊れても構わないぜと思っていたら2回目の滑走で本当に壊れなすった。さすが100円。雪のしぶきを浴びて帽子も顔もびちゃびちゃ、濡れた髪や顔が凍りそうな冷たさであるがそれでもなお滑っては登り、また滑っては登り。いやあ、おもしろすぎた。登山中は防寒防水ばっちりだったのに、白熱のソリ対決で背中にも靴にも雪が入ってくる始末、これを克服するために次はスパッツが必要だなという課題も見えた。増税前に購入だな。

2013秋 北アルプス、槍ヶ岳~大キレット~前穂高縦走!(7)

槍ヶ岳~前穂高縦走記録の最終回、「前穂高上高地」編。前回の記事はこちら

 

槍ヶ岳から始まった縦走も遂にクライマックス、稜線上にある8つの3000m峰の最後、前穂高岳へ。

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穂高山頂までの道、というか、岩。山登りというより岩登りである

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前穂高岳山頂に到着!3090m!

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雲が切れて青空が出て、中央左にピョコッと突き出た三角は槍ヶ岳

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別方向に目をやれば、ひょろひょろと噴煙を上げる焼岳

全方向に視界が開けて天気も良くてあまりにも素晴らしい眺め、ここまでの長かった道のり(といってもたったの二日間なのに!)を思い返して並々ならぬ達成感と満足感に浸り、同じような顔をして登ってくる人とカメラのシャッターを押しあう。昨日から抜いたり抜かれたりしている70歳ご夫婦とここでも一緒になり、その体力の秘密を聞いたところ、「毎日ふたりで10~15キロ散歩している」との答え。そりゃあ健脚なはずだ!! そんなこんなで30分間くらい山頂を堪能し、もうじゅうぶんに槍・穂高連峰を目に焼き付けた!というところで下山開始。

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ザックを置いた「紀美子平」まで戻ってきた。帰りは道しるべの左側、「岳沢・上高地」へ

ここからは、「重太郎新道」と呼ばれる道を一気に下る。この重太郎新道がまたくせもので、標準所要タイムは登りが3時間30分、下りが2時間20分とかなりの時間差、それだけ急傾斜だということだ「下るのはいいけど登るのは絶対にイヤ」と言う人もいれば、「脚への負担が大きいから下るのは絶対にイヤ」と言う人もいる。まあつまり、とにかくしんどい道であるのは間違いない。

そのしんどさを覚悟して下り始めたのだが……

結論から言うと、重太郎新道の下りはしんどくなかった。確かにハシゴやクサリは多く、これは登りだったら相当嫌だなあと思ったが、下る分にはまったく問題なし。この二日間の悪路の上り下りで神経だか度胸だかが強くなったのかしら。むしろ短時間でどんどん高度を下げられてゴールに近づいている感じがしてうれしかった。

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途中にこんな展望ポイントも。このあたり、木々の葉が黄色く色づき始めていた

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空はすっかり秋の風情

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すいすい歩いて休憩ポイントの岳沢小屋に到着

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お昼は小屋でうどんを注文。持参していた焼鶏の缶詰も開けて一緒に食べる。

食べていたら先ほどの夫婦が後からやってきて隣のテーブルに座り、りんごをむいてくれた。まさかここでりんごが食べられるなんて。チョコレートや飴に飽きていたところに、甘くて水分のあるものは本当に貴重。下界ではほとんどフルーツを食べない私だが、初日に食べたマスカット、小屋で出てきたオレンジ、いただいたりんご、どれも非常に美味しかった。すっかりフルーツに夢中になり、下山後、もう山には登らないのにスーパーマーケットでマスカットを購入したほどである。

お腹も満たされ、残るは2時間ほどの道を下るばかり。ゴールが近いと思うとウキウキがとまらない。いつもそうだが、登りたくて登っているのに、なんでこんなに下山がうれしいのか。下りながらも、出発地点の河童橋に戻ったらソフトクリームを食べるんだ!という夢(?)がパンパンにふくらんで爆発しそうなほどであった。

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14時ちょうど、河童橋に到着。念願のソフトクリームを食べた。木いちごのジェラートも食べた(食べすぎ)。

お天気に恵まれて、憧れの大キレットを含め予定通りの行程をケガなく行って帰ってこられて、素晴らしい景色をたくさん見て、カメラにおさめて、またうれしい山の記憶が増えた。そしてこれで、国内にある標高3000m以上の山21座のうち13座に登頂したことになった。半分を越えた! 我ながら不思議なほど登山にはまって高い山ばかり登っているが、そうなると残りの8つに行かないわけにはいくまい。そちらはまた、来夏以降の目標ということで。