旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』がよかった

図書館でなんとなく手にとって借りて、とてもおもしろく読んだ。著者は1986年生まれ、韓国の気鋭の作家。この本は表題作を含む8編の短編集で、2020年韓国の「書店員が選ぶ今年の本」で小説部門を受賞している。

なかでも好きだったのが「助けの手」。世代や価値観のちがう年上の女性ハウスキーパーとのやりとりにモヤモヤハラハラさせられ、ラストはまさかの展開であっ!となった。

もう1編、「タンペレ空港」が印象に残った。ワーホリの経由地として訪れたタンペレ空港(フィンランド)でたまたま出会った老人から手紙が届き、返事を書こうと思いながらも出せないまま数年が経ってしまう。ずっと後悔が残っていたけれども、思いきって電話をかけてみたら……。明るくて心がじんわりあったまる読後感。すごくよかった。

しかし客観的にみて、韓国の勉強、大学入試、就活事情がとんでもなくしんどそうだ。そこまで思い詰めたりそこまで頑張らなくても…と思ってしまうのは、私が当事者ではないから。でも、おなじ今の時代の、私たちが生きてる現実世界の物語として、国は違えど深く共感できるものがたくさんあった。