旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2023年10月に読んだ本。『意識のリボン』『前の家族』『銀二貫』など。

さあ年末が迫ってきたぞ、たまっていた振り返りを進めるぞ、の一念。必死。といっても10月に読んだ本は少なくて5冊だけ。仕事がたてこんで本を読む時間がとれなくて、だからこそ読書を渇望している時期だった。書名のあとの数字は今年の読了冊数。

キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』(70)

ここではないどこか遠い風景が、なぜか懐かしく親しみのあるものとして思い起こされるようなSF短編集。好きな世界観だった。

 

綿矢りさ『意識のリボン』(71)

この著者の、言葉の選び方やテンポがとにかく好き。おもしろみの出し方の量と方向がツボ!!! ずっとずっと読んでいたい。12月5日に新刊『パッキパキ北京』が出たばかり。タイトルだけでもう最高やん。早く読みたい読みたい。

 

青山文平『約定』(72)

小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱することになった行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た奇妙な頼み事と劇的な顛末を描く「三筋界隈」。果し合いの装束のまま、なぜか独りで腹を切った侍の謎を追う「約定」。他、武家としての生き方に縛られながらも、己れの居場所を掴もうともがき続ける武士の姿を浮き彫りにした本格時代小説。

前月に続き青山文平にハマる。落ち着いていて理知的な文章が非常に心地よい。出てくる人物みなに顔があり人生がありそれぞれの思いがあるということが、過不足なく伝わってきて腑に落ちる感じ。すごいよ。収録された6編のなかでは「乳房」が好きだった。青山作品、未読のものがまだまだある。来年も読み進めよう~。

約定

約定

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高田郁『銀二貫』(73)

大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す…。

高田郁さん、初読み。一難去ってまた一難の繰り返しにハラハラしつつ(江戸時代の火事こわすぎる)、人の情の細やかさや大らかさに胸を打たれてほろり。時勢を見て機を見てここだっ!というところでパァーンと大金を使う大阪商人のあり方にうなったり、寒天作りにかける職人の意気込みに本気で感情移入したり…。緩急のある展開といい心の揺さぶられ具合といい、ぞんぶんに楽しめる読書の時間だった。すっと読めて心に温かさが残る。ファンが多いのわかるし、映像化が多いのも納得だわ。

 

青山七恵『前の家族』(74)

積み重なった好意がだんだんと狂気じみていく怖さ、なんか変だなと思いながらも変さに慣れて浸かっていく怖さ。おもしろかった。

www.tabitoko.com

 

以上の5冊でした。