旅と日常のあいだ

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『ガウディの遺言』にツッコみつつ、スペインに行きたい熱が燃えてきた

『ガウディの遺言』下村敦史

1991年、バルセロナ。現地で暮らす佐々木志穂は、夜中に出掛けたきり帰ってこない聖堂石工の父を捜索している最中に、父の友人であるアンヘルの遺体がサグラダ・ファミリアの尖塔に吊り下げられているのを発見してしまう。父の失踪もこの殺人事件に絡んでいると考えた志穂は、手がかりを求めてサグラダ・ファミリア建設に関わる人々を調べ始めるが、その過程でガウディが遺した「ある物」を巡る陰謀に巻き込まれていき……。

どこかの書評で紹介されていておもしろそうだなと手にとったが、うーむ、これは……となった。

バルセロナには2回行ったことがあって、もちろんサグラダ・ファミリアにも行ったし、そのほかのガウディ建築も見て回ってどれもとても印象に残っている。その風景を思い出し、頭の中に映像を浮かべながら読めたことは楽しかった。

しかし登場人物みんなが、不自然なほどスペインの歴史やガウディ史に詳しすぎてもう…。ここぞという場面で必要な情報をとにかく語りまくる。キャラクターたちがそうせざるを得ない必然性が感じられず、作者の都合と物語の進行上必要だからしゃべらせてる感。途中はもう、小説ではなくてガイドブックか参考書を読んでる気すらした。

言語と時刻表現をめぐるあるトリックはおもしろいけど、読んでるこっちが簡単に気づけちゃって驚き小さめ。サグラダ・ファミリアという舞台装置が壮大で立派な分、ほかの何もかもが薄くて拍子抜けした感じだった。読み始める前の期待がふくらんでいただけに余計に。

(だいたい、夜中にサグラダ・ファミリアの塔の先っちょに何かがぶら下がってるのを見て、それが人の遺体でありしかも知人の顔だと見分けられるってどんだけ視力がいいんだい?)

しかしこれが引き金になって、サグラダ・ファミリアへの興味とかまた見に行きたい思いは相当増した。ガウディ建築もそうだし、景色も人柄も料理のおいしさも、スペインの印象は総じてものすごく良い。再訪したい国ナンバーワン。滞在中にスリに遭う、唇が腫れてものが食べられなくなる、乗継便が欠航して予定通りに帰れなくなるなどのハプニングもあったというのに、それらを含めてなおスペインは良い!

……小説の内容はすでに忘れかけてるんだけど、スペイン愛が募る結果となった。

 

▼2014年の初スペイン(リカちゃんも一緒)。バルセロナ、トレド、マドリードも。

▼2度目は2016年。唇問題が勃発し、マスク探しに奔走。