旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


雪のない金沢、忍者のいない忍者寺

友人を訪ねて金沢へ。すごく久しぶりだと思ったが1年ぶりか。そのときは途中の米原あたりは雪で真っ白だったが、今回は道中でまったく雪を見なかった。福井を通過しても、金沢に到着しても。

金沢に向かう途中の電車では、隣り合ったスペイン人男性から熱烈アタックを受けるという現象が起きた。乗り換えのために電車を降りるまでの30分間みっちりである。現在は滋賀県在住だという彼、最終的には「金沢に行くのはやめて一緒の駅で降りないか」と。「琵琶湖のほとりでキャンプをしよう。テントを張ってたき火をして。料理も作るしお酒も用意するよ。星がきれいだよ。たき火を見ながらいろいろお話ししよう」。いや、残念ながら、話したいことなど何ひとつない。

キャンプの罠にハマることなく金沢に住む友人と合流し、深夜までぞんぶんに飲み食いしたあと彼女は自宅へ、私はホテルへ。翌日の昼に再び待ち合わせることにして別れた。いかなるときにも最高レベルに寝起きのいい私は酒量をものともせず4時間睡眠ですっきり目覚め、朝から周遊バスに乗ったり美術館に行ったりという身軽さを発揮。友人に会いに来たはずなのに完全なひとり旅状態である。

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21世紀美術館の「タレルの部屋」。冬の金沢でこんな青空もめずらしい

お昼前、そろそろ合流しようかなと友人に連絡したら「さっき起きたばっかり」とのこと。どこまでもマイペースな君を愛す。一緒にランチという夢は消え(なぜなら私は腹ペコすぎて待てなかったから)、ひとりで甘味処に入った。五郎島金時(加賀野菜のさつまいも)のぜんざい、美味しかったなー。

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改めて友人と合流したのち、北海道から飛んできたもうひとりの友人を迎えに行く。ここからカウントして2泊3日の金沢であるが、今のところ決まっている予定といえば、今日の夕食(予約済み)と、明日の昼食(予約済み)のみで、何を見るとかどこに行くとかは何ひとつ計画していないのであった。いつものことである。

何か金沢らしいところに行ったりする?どうする~?とか言いながら、気がつくと私たちは駅近くのファッションビルにあるアクセサリーパーツの店にいて、3人仲良く並んでアクセサリー作りに励んでいた。前々からアクセサリー作りが共通の趣味でしたってわけでもないのに、謎の展開。いやしかし楽しかったな。なんだかんだで2時間弱も夢中になってしまった。今度から毎回、3人が会うたびにひとつアクセサリーを作るっていうのもいいかもしれない。

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武家屋敷。壁に吊られた雪よけも、この冬はまだ活躍ならず

ノープランの割には、ひがし茶屋街や長町の武家屋敷という有名どころにも行き、行ってみたかったカフェにも行き(フルーツパーラーむらはた、ひらみぱん)、食べるものもお酒もぜんぶ美味しく、このメンバーだったらそりゃそうなるわって感じでほぼ常に笑い転げていた。その笑いっぷりときたら、翌々日まで耳の痛みが残るほどである。

今回、一か月前からばっちり予約して楽しみにしていた一大イベントが、「天ぷら小泉」での昼食。予約必須のカウンター9席のみ、店主が目の前で一品ずつ揚げて供してくれるという、なんとも背すじがのびる天ぷらのお店である。最初に出てきた天ぷらは、5センチ角くらいの海苔を揚げて生うにとわさびを載せたものだった。この海苔の天ぷらが、そのカリカリ感が、かつて人生でこんなにも完璧なカリカリ感を味わったことはない!!っていう鮮烈な食感でして、海苔の香りとカリカリ+ねっとり濃厚で甘い生うにの組み合わせ、この導入によってがっしり心をつかまれた。その後もめくるめく天ぷら体験が続き、ひとつお皿に乗るたびに興奮と感動が。

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だってこの、わかさぎ。泳いでいたのをすくってそのまま揚げたような姿を見よ (赤いのは金時人参。あ・ま・い)

あと面白かったのが、妙立寺。堂内に隠し階段や秘密部屋が多いことから別名を「忍者寺」と呼ばれており、パンフレットにも「人呼んで忍者寺」と書いてあるのだが、この別名っていうのがくせもの。

忍者寺とはあくまでも通称であり、まあそれはいいんだけど、案内放送で「このお寺は忍者とは関係がありません、伊賀か甲賀かと尋ねるお客様がいらっしゃいますがどちらも無関係です、忍者寺とはいいましても忍者とは関わりがありません」としつこいくらいに牽制してくる。誘導してくれるガイドさんも、「当寺は忍者とはいっさい関係がございません」とくぎを刺してくる。

しかし! もらったパンフレットには、「忍者寺は当寺の登録商標です」と書かれているのであった。ええっ。忍者寺の称号を手放すのがそんなに惜しいのか。ていうか、忍者と関係なくても忍者寺の商標って取れるのか! どこまでも忍者とは無関係なれど、私たちをはじめ何人もがお寺の前で指を組んで「ニンニン」のポーズをしちゃってた。そのあたりが、「人呼んで」忍者寺たるゆえんですな。仕掛けがとっても面白いのでおすすめ。拝観料1000円は強気だが。

あとで友人から送られてきた写真、何この毛布のかたまりは?って思ったら、友人宅のリビングで寝てしまった私なのだった。意味不明な寝言を発していたとの証言もあり、まったくどうしようもない。これほどまでにリラックスできる関係性ってことだよね、ありがたい。決して、何かの忍術とかではない。

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毛布の下で、何がどうなってるんだか