槍ヶ岳~前穂高縦走記録の3回目、「大キレット」編。前回の記事はこちら
夜明けとともに槍ヶ岳を出発し、気持ちの良い稜線を歩いて南岳に到着した我々。ここから北穂高までおよそ4時間、いよいよ踏み込む難ルート「大キレット」。緊張はありながらも、不安や心配より楽しみな気持ちのほうが大きい!
大キレット入口そばの展望スポットにて気合いを入れてからスタート。
展望スポットから見えるのはこれから進む道。いったん大きく下って、両サイドが切れ落ちた岩場を歩いて、行く手にそびえる北穂高を登りきる、と。たいへんだな!
大キレットのはじまり。ここからは緊張感あふれる写真とともにどうぞ。
クサリを使って下る人たち。急傾斜にもほどがある。
下を見るとだいたいこんな感じ。基本的に、崖っぷち。
下りのクサリ。足をかけられる場所を探しながら、そろそろと。
岩にはりつきながら、目印のマーカーに従って進む。
岩に打ち込まれたステップ。これだけ? 岩の側面を進むのに、これだけで全身を支えるのかい? 左側、崖ですけれども。本当にコイツを信用していいのだろうかと疑いつつ、しかしほかに頼るものもないので足をかける。慎重に、かつ、「なるようにしかならんわ!!!」という心境。
ぶるぶる。
足元。ヒイイィィィィイ!!
こんな調子で、大キレットは実にスリリングな道であった。持って行ったリカちゃん人形を出せる余裕はゼロ。下手するとリカちゃんとともに滑落、万が一にも私が滑落してリカちゃんだけが助かったなんてことになったら、新聞各紙やニュース番組でどんな悲劇的(もしくは喜劇的)な取り上げられ方をするであろうと想像すると、とてもとても人形を出して撮影している場合ではないのであった。
事前にルート図を何度も見て、中でも危険度の高い場所として脳に強く刷り込んでいた要注意スポットが二か所、「長谷川ピーク」と「飛騨泣き」。名前からしてなんだか恐ろしげ。ガイドブックによると「三角錐の頂点をまたぎ、右足は右の谷へ、左足は左の谷へ置く」とか「道をふさぐ巨大な岩をよじのぼって越える」とかわけのわからんことになってて、とにかくこの二つがキレットの中でも核心部、全神経をとぎすませて挑まねばならぬ!と、相当な警戒と覚悟でもって進んでいたのだが……
気がつくと、どこが「長谷川ピーク」なのかどれが「飛騨泣き」なのか、わからないまま通過完了していた。あれ?? 怖さのあまり泣いちゃうくらいかと思っていたのに、「飛騨泣き」は一体どこへ?
しかしとにかく無事にキレットを抜け、ゴールの北穂高小屋はもう目の前。見上げるほどの急な岩場の上に、小屋のシルエットが見えた!
当初はここに宿泊する予定だったが、この時点でまだ12時過ぎ。時間の余裕があるので計画を変更し、さらに進んで奥穂高山荘まで行くことに決めた。早めの進行にルンルン気分で出発した我々だが、このあと、警戒していた大キレット以上に苦しむことになろうとは、まだ知らないのであった。