最近読んだいろいろ、どれもこれも物申したい感じ。
芥川賞受賞作ということであり、「アンネの日記」を下敷きにした乙女世界の設定ということであり、劇中劇のような入れ子構造でありという、私の趣味嗜好上、惹かれる要素がいっぱいの売り文句だったので手にとってみた。まあしかし、私には合わなかった。何がやりたいのかよくわからなかった、最後まで。登場人物の造形も、作中で重要な意味をなす「スピーチ」という方法も、いまひとつぼんやりとしていて「そんなものかな?」と思いながら読んでた。
ところどころ、好きな感じはあったんだけどなあ。<「吐血」という言葉が好きな外国人大学教授>とか、<京都の長屋は昼でも暗いから隠し物をするにはぴったりだ>とかいう設定なんか。小説に「わかる」も「わからない」もないだろうと思うのだけれど、しかしこれは、わからなかった。
『絶望ノート』歌野晶午
いじめられっ子の少年がノートにつづる、陰湿で救いようのない日々の記録。読んでる間、ひたすらに鬱々とする。歌野さんはいつも大どんでん返しで読者を裏切りまくってくれる作者だが、今回はそういう仕掛けのことを忘れてたよ、あまりにも暗いもんだから気持ちがふさいでさ。後半、徐々に「おやおや?」と思う場面がチラチラし出して、ラストに向けては怒涛の展開、まさかの逆転。
都合いいなーと思ったけど、そりゃそうだ、都合よく作ってあるんだから。そもそもがトリックのための小説だな。というこれは、むろんマイナス評価ではまったくない。仕掛けの面白さと驚きは楽しめるけど、しかしいじめというテーマ自体が重いからか読んだ後も晴れ晴れとした気持ちにはならぬね。こういう体裁のミステリーでは、もっとこう、単純に「やられたーーー!!」って、気持ちよく驚いて気持ちよく終わりたいのが私の趣味。