ここ最近の読書記録。
『宇宙百貨活劇(ペンシルロケット・オペラ)』 長野 まゆみ
どこにもない、いつの時代でもない、透明のようなセピア色のような群青色のような小さな街が舞台。<少年のための物語に必要なもの>がちゃんと出てくる。鉱石とか、きらきら光るソーダ水とか、太った陽気な叔父さんとか。超ファンタジーなのに、超リアル。これまでに読んだ長野まゆみ作品の中でいちばん好きかも。

宇宙百貨活劇(ペンシルロケット・オペラ) (河出文庫―文芸コレクション)
- 作者: 長野まゆみ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1995/02
- メディア: 文庫
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『チーム・バチスタの栄光』 海堂 尊
書店で文庫を衝動買い。楽しく読めたけど、次作もぜひ!とはならなかった。うまくできていて、楽しかったんだけど。自分にとって何が物足りなかったのかわからない。公開中の映画はどんな風になってるんだろ。
『誘拐逃避行―少女沖縄「連れ去り」事件 』 河合 香織
千葉に住む47歳の男性が、10歳の少女を連れまわして沖縄で逮捕された。警察は少女を保護するが、少女は家に帰りたくないという。実はこの「連れ去り」の主導権を握っていたのは、男性ではなく少女だった。お金を管理していたのも、沖縄への航空券を買ったのも。・・・というこれは作り話ではなく、2004年に実際に起こった事件。怖いもの見たさで読んだけど、読後感モヤモヤ。肉親から愛を受けられずに育った少女と、生活保護を受ける中年男性が擬似的家族、擬似恋愛の関係をもつことをどう考えたらいいんだろう。両者の言い分を聞いているとどこにも加害者がいない気がしてくるけど、そんなはずはないよな。必要とされたい気持ちは誰でも持っているけど、その切実さを満たすすべを持たないことは恐怖でしかない。10歳の少女には、絶望かもしれない。47歳の男性にも、絶望かもしれない。
『金春屋ゴメス』 西條 奈加
導入の数十ページがものすごく面白かった。映画を見ているようだった。カメラが切り替わるたびに場所も時代もまったく違う絵が次々に映し出されて、「えっ、今すごいこと言ったよね?」「なになに、これってそういうことなの!?」みたいな。この舞台設定は小説史上初じゃない?鎖国体制を敷いている江戸(現在の関東~東北あたりの一帯。金持ちがカネにまかせて作った人工の街)と、それを自治国家として認めている日本が共存する、少し未来の世界(月に人が住んでる程度に未来)。日本から船で江戸入りした主人公は、長崎奉行(人工の「江戸」には長崎なんてないのに)から重大なミッションを授けられる。
この設定にすごいワクワクした。もう、ワックワク。でも、せっかくの素晴らしき設定なのに、その必然性が物語の中で感じられなかったことが残念。いろいろ、消化不良だった気がする。登場人物の過去とか、江戸と日本の関係とか、もう一歩つっこんでほしかった。続編を作ればもっと世界をはっきり構築できる気がするなー(と思って調べたら、続編出てたっけ)。いやいやしかし、面白かった。破天荒な試みに期待して、これは次作も読もうと思う。時代劇にしてSFかあ。いいなー。発明だね、これは。