高村薫の『李歐』を読む。大陸をまたにかけた殺し屋・李歐と、そのカリスマ性に惹きつけられて人生抜き差しならなくなってる一彰の、冒険譚っていうか、青春小説っていうか、恋物語っていうか、恋物語っていうか、恋物語って・・・(以下略)。そこの男ふたり! その熱すぎる友情! 李歐の色気は反則だって! 鼻息が荒くなるのを押さえるのに、私が電車の中でどんだけ苦労したと思ってるんだ。
まあとにかく、李歐がカッコいい。そして李歐と一彰の関係性が、まっすぐで透き通っている。絶対的に信じあっていて、揺らがない。っていうかベタぼれ。
で、二人の背景にあるものは、妖しいまでに美しい桜の木。記憶をなくした神父。血なまぐさい闘争。拳銃、拳銃、拳銃。ああ、生きて、誰かと同じ未来を信じて、命運を預けあうっていうのは、なんて魅惑的なことなんだろうか。心の悶えがやまない今日この頃。長く長くあたためた、魂が響きあうような友情。夢のように美しい未来の予感。「五千本の桜を植えて君を待つ」、とかね、もうね・・・くっ!! いろんな意味で、これまでに読んだ高村作品の中で一番好きだ。
白眉は何といっても、李歐のこの台詞。
「惚れたって言えよ」
ふっ。ふふっ。直撃!
殺し屋の無慈悲な弾をもろにくらって、うれしくて心がだめになりそう。こんなしがない一女子読者のハートまでかすめ取るとは、李歐め、一彰だけでは飽き足らないというのか。私も罪な男に惚れてしまったものだ。しかしなんという幸福感。