森見登美彦「【新釈】走れメロス 他四篇」
「山月記」「桜の森の満開の下」「藪の中」ほか、どこかで一度は目にしたことのある作品を下敷きにした森見流リメイク短編集。例によって舞台は京都、行間からたちのぼる妖しくも美しい空気は健在。
レビューなんかを眺めているとなかでも「走れメロス」の人気が高いようだが、多分にもれず私もこれが一番おもしろかった。とにかく巧い!モリミー最高っ!何がおもしろいって、太宰治の原作に対する大胆不敵な改変ぶりがたまらん。それでいて話の筋は破綻せず、しかも前作『夜は短し歩けよ乙女』との絶妙なリンクも楽しめるというおまけ付き。読みながらニヤニヤがとまらなかった。
友情と信頼を示すため、人質となった友の元へ走って帰ってくるというのがご存知原作でのメロスなのだが、森見氏の手にかかると一筋縄ではいかんのだ。ふらふらになりつつも京都の街を駆け回るのは、ただ桃色のブリーフのため。とっても痛快な作品なので、ぜひ一読されたい。もちろん、ほかの四篇も。