旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2023年7月の読書記録。20年ぶりの『青の炎』と、直木賞『木挽町のあだ討ち』がよかった

読書の振り返りをまとめるのがまた出遅れて、今さら7月の読書記録。引き続き3か月遅れ。7月は、北海道旅行に行ったりコロナで寝込んだりであまり読書がはかどらなかった。タイトルを見てもなんかあまり印象に残ってない。すでに記憶が遠い…。カッコ内は今年の読了冊数。

 

『この夜が明ければ』岩井圭也(45)

季節バイトをしに北海道に集まった七人の男女。ある晩一人が遺体となって見つかり、荷物から脅迫状が発見された。警察を呼ぼうとした工藤秀吾は、携帯電話を他のアルバイトに奪われ、通報を反対される。どうやらこの場の人間は、こぞって警察を避ける理由があるようで……。一夜にして世界が反転する、驚愕のサスペンス!

登場人物全員に裏があり言えない過去をもっているというの、浅倉秋成の『嘘つきな六人の大学生』を思い出した。ラストがきれいにまとまりすぎというか、いい話みたいに終わらせるのは違うんじゃないの?

 

『青の炎』貴志祐介(46)

秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。

20年前(!)に読んでものすごくおもしろかったのを再読。結果、おもしろさはまったく薄れてなかった。被害者が人としてクズすぎるので、秀一の犯罪計画がどうか成功しますようにと祈る立場で読んでしまう。細かいトリックをうまいこと忘れていたため初読のように楽しめた。スピード感があって手に汗握る緊張があってドキドキしっぱなし。最後、どう決着がつくんだっけとこれもうまいこと忘れており、えっ、嘘でしょ……!?とショックを受けた。当たり前の幸せを取り戻す方法として、もっとなんとかならなかったのかと考えてしまってつらい。

 

『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子(47)

すばらしくおもしろかった。構成がうますぎる。これは一切の前情報を入れずに読むべき。なんとも粋で痛快で、登場人物みんなの生き方が愛おしくなった。ハッピーエンドばんざい。

 

『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒(48)

少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……

題材や設定はおもしろいけど、人の感情や行動に共感できないことが多かった。「ここでこんなこと言うか?」とか「こういう思いになるか?」とちょいちょい引っかかる。主人公はイケメン設定なのだけど、そのことが文章であまり書かれないので忘れがちだし、そもそもイケメンであることがストーリーの役に立ってるとも思えなくて、なのにときどき思い出したようにイケメンに言及されて、一体どういうつもりで読めばいいの?っていう。主人公の秘密の過去も、実際に何があったのかを明かすのが遅くて私が読み落としてるのかと不安になったし、主人公より2歳上のチェロ講師(29歳)が年齢的立場的にそうとは思えないキャラと口調でもやもやしたよ~! 上司の人となりもさっぱり伝わってこず、つまり誰も魅力的に思えなかった。話の落としどころが気になってどうにか読み切ったけど、本屋大賞2位とか。私の価値観とだいぶ違う。

辛口になってしまうのは、同作者の『金木犀とメテオラ』がとても好きだったから。そのぶん期待が大きくて、待ちに待って読んだからこその素直な感想。

 

『墨のゆらめき』三浦しをん(49)

書家のお仕事小説。いいあんばいにBL風味で「しをん節」のど真ん中だった。 

以上、7月に読んだ5冊でした。しかしあれね、読んだ直後に、ちゃんとまとまってなくてもほんの一言でもいいから感想を書いとかないと、あとから振り返ってもさっぱり出てこないね! その時の気持ちを忘れないよう自分のために記録を残しているのに、書くのめんどくさ、後回しにしよう、って結局そのままになっちゃって、あとから思い出せずに苦労してる。そうならないための記録のはずなのに、本末転倒なことこのうえない。