SF短編集。どの作品も、やさしさや静けさの余韻があたたかく残るものだった。
表題作の、もの悲しく美しい映像が浮かぶような舞台が好き。宇宙の片隅で見捨てられたステーション、4人掛けのベンチが並ぶ誰も来ない待合室、大きなガラス張りの窓の外は星空。そこに居座る老女は、時代が変わり環境が変わっても自分の信じるものを変えず、思うままに行動する。そのまっすぐさが切ない。
「共生仮説」もおもしろい。すべての新生児の脳内には、成長するにつれて忘れてしまう同じ原風景があって…という設定にぞくぞくした。
どこか遠い未来、遠い場所のことを描いていながら、人の心がもっている孤独や淋しさ、他者とのつながりを求める気持ちはどうしたって不変なのだと気づかされる。
全編をとおして、柔らかな体温を感じる1冊だった。よかった。