最近読んだ、春日武彦&穂村弘の対談集がおもしろかった。あらゆる本を読みまくっている精神科医と歌人が死をテーマに語りつくす。このふたりの組み合わせにはいつだって知的好奇心を刺激される。
なかでも、穂村さんの言葉に、ああ本当にいいなあと思う箇所がいくつかあって、メモを取りながら読んだ。
僕は、苦悩と自殺とが結びつかない。自分の理想の図書館や理想の灯台のイメージがあって、そこにはたくさんの本と、本を読むのにぴったりなテーブルと椅子があって、外に出なくても満ち足りた時間を過ごせる。そういうものへの強い憧れさえあれば、死にたいと思う気持ちが生まれることはないと思っている。
穂村さんのいう「理想の図書館」像に共感するし、そのイメージに救いや癒やしを感じるの、わかる! それが実在するとか自分の手に届くとかとは別次元の話。そういう場所を想像して、想像の中では自分はそこにどれだけでもいられると思うことが、自分を支えてくれる感じ。
あと、仕事に関するこの発言が印象に残った。
人間は一生のうちにだいたい20年分くらい働けばノルマ達成になるものだと思ってた。あれもこれもきちんとこなそうとする、「地に足が着いている」ことこそが苦痛の根源な気がする。
穂村さんのこの考えに、なんだか妙に勇気づけられた。私自身、仕事も家事も育児も趣味も、全方位しっかりやって充実させねば!という思いがあって、それは誰に強制されているわけでもなく自分がそうしたくてしているはずなのにわりと常にしんどくて、ああ今日も思うようにできなかったな・・・と思うこと多数。でもそんなふうに思う必要なんて別にないんだよな。「地に足が着いている」という、世間的多数的にはどちらかというと望ましいであろう状況が、穂村さんには苦痛の根源に見えているという価値観の違い。私も、もっとゆるくとらえてもいいのかもなあ、みたいな。
奇妙なタイトルは作中でちゃんとオチがついてます。あと、映画「君たちはどう生きるか」が話題になるなか、この本のコピーが「俺たちはどう死ぬのか」なところも気が利いてて好きだわー。
▼過去に読んだこのふたりの対談集の感想。穂村さんのフレーズにいちいちぐっとくるの、何年も前から変わらない。