やや気恥ずかしい種類の本を買うときに、レジの店員さんの目が気になる。自意識過剰だとわかっていても、気になるものは気になる。
恥ずかしさをやり過ごす手法としては、「請求書をください」って言ってあくまでも仕事のふりをするパターン(別に趣味じゃないんです、必要だから仕方なく買ってるだけなんですアピール)と、それとは別に真面目な本も買うパターン(一冊だけだと目立つから、たくさんの中の一つというふうにしてまぎらわす作戦)がありますね。まあたぶん、店員さんからしたら「あー、はいはい」って感じだろうけどね。
さて先日、書店を物色していたとき、思わず手に取ったのがこの本。
「世界の絶景 お城&宮殿」 学研パブリッシング。
見つけた瞬間、心がきゅーんとなった。小さいころは、おとぎ話のお城とかお姫さまとかに無条件に憧れていたなあ。そんなのしばらく忘れていたのに、この表紙を見たとたんに、お城!舞踏会!ひみつの階段!開かずの間!という連想がどんどん広がって、今すぐわたしを非日常な世界に連れて行っておくれ!という気持ちになった。ところで、昨今のガイドブックや写真集は「絶景」が大流行。絶景すぎる〇〇とか、死ぬまでに見たい〇〇とか、売り場を見渡せば右にも左にも「絶景本」。そんな中で、「お城」というジャンルにやや強引に「絶景」という単語をくっつけるこの感じ、あざといな~と思いつつもハートをつかまれてしまったよ。
まあそれで、前置きが長くなったが、そもそも買いたかったのは、これ。
「アラサーちゃん無修正」 著・峰なゆか。扶桑社。刺激的なキャッチコピーに、ややひるむ。
本当に、嘘も偽りもない真実として、この本だけを堂々と買うつもりだったのである。そこに、ちょうど目についた「お城と宮殿」が素敵だったので一緒に買うことになったわけだが、そこでまた私の過剰すぎる自意識が発動。
待てよ。この二冊を一緒にレジに持っていったら、きっと店員さんには、「ヒヒヒ、このお客、『アラサーちゃん』だけを買う勇気がなくて、その恥ずかしさをごまかすために、わざわざ『お城と宮殿』みたいなメルヘン成分の強い本を選んで一緒に持ってきたんだな」と思われる。それどころか、「ぷっ、そんなことをしてもムダムダ。その古くさい小細工がかえってダサいわ」って馬鹿にされる可能性すらある。
違う! 断じて違う! そんな小細工をせずとも、アラサーちゃんの一冊や二冊、ぜんぜん平気、堂々と買える! 本当にたまたま偶然、お城の本もほしくなってしまっただけなんだ!
心の中で誰にともなく弁解を叫びつつ会計を済ませ、そのあとスタバに寄ってさっそく「アラサーちゃん」を開いたら、思いのほかエロスなシーンが満載であった(アラサーちゃんは漫画です)。さすがにこれはスタバで読むには不適切だと判断し、仕方がないので「お城と宮殿」をぱらぱらと眺めつつも、ああ、早く家に帰って誰の目も気にすることなくアラサーちゃんを読みふけりたいぜと切に思った、アラサー真っ只中な私のリアル。