昨年に続き、青春18きっぷで春の松本へ。(昨年の松本さんぽはこちら=北アルプスを見に、18きっぷで松本へ - 旅と日常のあいだ)
松本城。
片道6時間の日帰り旅、つまり1日のうち12時間以上が電車移動というお尻が痛くなりそうな旅に友人Aを誘ったところ、「いいね、相手に不足なし」との頼もしい返答。わーい! 持つべきものは、物好きな友である。
07:00 静岡発/東海道本線
07:39 富士着
07:45 富士/身延線
10:21 甲府着
10:58 甲府発/中央線
12:52 松本着
富士~甲府の身延線には約3時間、甲府~松本の中央線もまる2時間。な、長い。好きじゃなければとても耐えられないだろうが、私とAは大好きなのである。
車中では、甲府駅で買ったペットボトルのスパークリングワインをちょっとずつ飲む。一方、友人は缶ビールと焼き鳥を買っていたのだが、新幹線ならともかく乗客が向かい合うロングシートの車両で缶ビールをプシュッとやるのはなかなかに勇気がいることであり、結局最後までビールは飲めないまま。ああ可哀想に! もっとガラガラなのかと思いきや、予想外に人がいたからねえ、中央線。
松本駅の通路からはアルプスの峰々が見える。槍ヶ岳はこの日も端正であった。
お昼は、友人が見つけた素敵カフェ「amijok(アミジョク)」へ。マフィンにホイップクリーム、サラダとスープ。女子が好きそうや!
マフィン美味しかったなー。こんなにも表面がしっかり焼かれたものは初めて。特に端っこはクッキーみたいにカリカリ、中はしっとりしていて、ボソボソしたマフィンが苦手な私にはとても理想的なものであった。持ち帰り用にもひとつ買った。店員さんに「先にレンジで温めてから、トースターで5分ほど焼いてください」と言われ、なるほどその5分がカリカリの秘密なのねと納得。
amijok(アミジョク)という店名は、店主の名前をローマ字で書いて逆さにしたものらしい。 逆から読むと、kojima。ふむ、コジマさんか。
私と友人、マフィンをもぐもぐ食べながら、自分の名前を同じように逆さ読みしようと試みる。頭の中にローマ字で名前を書いて、それをゆっくりゆっくり逆から読もうとするのだが、これがもう、面白いくらいにできない。まったくできない。私たち、おバカさんなのかな?と心配になったが、とにかくできないのであった。私の名前なんてアルファベットでたった4文字なのに、それがひっくり返せないとはどういうことなんだろう。脳のつくりに一抹の不安を覚えつつ、しかし苦心の末にやっと逆さ読みをした結果は、可愛らしさもオシャレさのかけらもない、瀕死のヤギが喉からしぼり出している音みたいになった。これじゃおしゃれカフェの店名にはならないわと諦めた次第である。
古い蔵が残る通りをぷらぷら歩き、松本城に行き、川沿いのベンチで休み、ギャラリーを覗いたり雑貨を見たり、あれやこれやと過ごしていたら時間はどんどん過ぎる。終電のタイムリミットがせまっている。18きっぷの旅というものは、いつだって滞在時間が短い宿命なのであった。
駅ビル内のお蕎麦屋さんで、くるみそばを食べた。前に松本で一度食べて、何この美味しさは!と驚いたくるみのたれ、今回もやっぱり好きだった。初体験のAも絶賛。いいよね、美味しいよね。
駆け足ながらも松本を満喫し、帰りもちんたらと6時間の道中である。しかし我々、「電車の旅が好きです」とか言ってるわりには、車窓を見るでも車両を見学するでもなし。たいていはなんか食べてるか、お互いに静かに本を読むか、お互いに静かに眠っているかのどちらかなのであった。Aは「退屈すぎてぼーっとする以外にすることがない」と言い出すし、私は私で悪い魔法にかけられたようにずーっと寝ていた。向かない人には徹底的に向かない、鈍行の旅。12時間も電車に乗るときには、お互いに自由気ままなこのくらいの感じがいいよね、本当に。
Aは松本がたいそう気に入ったようで「来週もまた行きたいくらい」とのこと。松本をはじめ、小布施も、安曇野も、上高地も、長野県にはいい印象ばかりあるな。私もまた行きたいよ。