旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2025年に読んだ本、特に好きだった10冊

2025年に読んだ本を振り返ってみる。例年、小説が9割でたまにエッセイもという案配なんだけど、今年の後半はノンフィクションをよく読んだ。小説には場所や時間を超えた普遍的な真実が書かれておりそれが魅力だと思っているのだけど、ノンフィクションはノンフィクションで、場所や時間が超個別的かつ具体的だからこその切実な真実味があるなと気づいて、そのスリルや高揚感、創作を超えるようなドラマに胸を打たれている。

というわけで、年間で特に好きだった10冊と、読んだ順にすべての記録。

2025年に読んで好きだった10冊

 

『火山のふもとで』   松家仁之

静謐でゆったりとした時間や生活の空気というようなものが全編に満ちていて、その筆致や雰囲気が最高に好きだった。本を閉じることなくいつまでも彼らの日々を見ていたいという気持ち。この作品で著者を知りそのあと何作か読んだけれども、今のところこの『火山のふもとで』が一番好き。

 

『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』    R・F・クァン

時は19世紀、魔法が存在するイギリスが舞台。この世界における魔法の原動力は『翻訳』。異なる言語を翻訳するとき、両者の間にはどうしてもニュアンスや印象の違いが生じてしまう、そのズレを物理的な力に変えて薬を作ったり交通インフラを整えたりという設定がまずめちゃくちゃおもしろい。史実を思いっきり取り入れた、スケールの大きなSF偽史。世界観の作り込みがすさまじくて没頭した。

 

 『鳩の撃退法』   佐藤正午

とにかく奇妙で感想を語りにくい。これは創作なのか何なのか、ずっと翻弄され続けてるうちに1000ページを読み終えてた。主人公の(あるいは作者の)思考の過程がしつこいくらい克明に言語化される、その内容と構成がなにより面白かったな。これが初読みで、ここから私の佐藤正午ブームがきた。

 

『フォース・ウィング』    レベッカ・ヤロス

いまいちばん続編が待ち遠しい海外ファンタジー小説。身も心も焼き尽くすような恋と死の物語に、こちらも身悶えしまくりながら読んでた。あ~、どっかにものすごく強くてカッコよくてぶっきらぼうで、触れるとやけどしそうな熱烈さで愛してくれる竜騎士の先輩がいないかな~と夢見てしまって困る。

▼シリーズ三作目は1月21日発売。もうすぐ!!!

 

『ハジケテマザレ』金原ひとみ

キャラクターの痛快さや文章の疾走感が最ッ高なのはいつものこと。加えて、ほんのちょっとした選択や考え方次第で、自分をとりまく世界の見え方や価値観は変わりうるんだという希望を持てた。読む前の自分とは、何かがちょっと変わったような気がするよ。

 

『たのしい保育園 』滝口悠生

育児する日常を徹底的に冷静に観察し、子どもの心理を推察し、正確に言葉で写し取る、その著者の視線と筆力に圧倒されっぱなし。こういう見方で、子どもや世界や自分に接したい…と強く思った。(なかなかできることではない)もう戻れない過去を寂しがるのではなく、「思い出せなさに向かい合えばいい」、ていう考えにハッとした。

たのしい保育園

たのしい保育園

Amazon

 

『約束の果て 黒と紫の物語』高丘哲次

古代中国的な架空世界で繰り広げられる、誰も想像したことのないような設定のファンタジーであり、壮大なボーイ・ミーツ・ガールもの。彼と彼女の間のあと5メートルが届かなくて、それを埋めるために五千と七十年の月日がかかったという果てしなさ…!

 

『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ

一人の男の人生を淡々とつづる、その淡々さ、静けさ、揺るぎなさみたいなものに強く惹かれた。いま書いていて気づいたが、どうも私は、細かいディテールを緻密かつ淡々と描写していく系が好きみたいだ。そういうくくりで考えたことがなかったけど、上に挙げた『火山のふもとで』『鳩の撃退法』『たのしい保育園』はその意味で共通項があるな。

 

『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』    村岡俊也

夭逝の画家・中園孔二さんの伝記。知れば知るほど中園さんのことがわからなくなり、なんとかもっと知りたいと思わせる、そういう人間性であり作品の数々だった。ピュアさと危なっかしさは紙一重で、そのぎりぎりの線の上を裸足でスキップしてるような人だったんだなと思う。

 

『挑む人たち。』    奥野武範

山や岩や海や北極で、自然と向き合って挑戦を続ける人たちへのインタビュー集。全員が自分なりの確固たる理由や目的をもっており、達成するための準備や技術や仲間との信頼関係を大切にしており、それはもう生き方であり哲学。タフでフェアな精神と身体は、何の異論もなくただかっこいいなと思った。話しぶりもおもしろいんだよね、特に高野秀行さん。著作が多いから、このあとたくさん読むぞー。

 

≪小説≫

1    ハリー・ポッターと謎のプリンス    J.K.ローリング
2    宙わたる教室    伊与原新
3    ハリー・ポッターと死の秘宝    J.K.ローリング
4    方舟をもやす    角田光代

5    マイクロスパイ・アンサンブル    伊坂幸太郎
6    生殖記    朝井リョウ

7    銀の夜    角田光代
8    ミスター・チームリーダー    石田夏穂
9    オリエント急行殺人事件    アガサ・クリスティ
10    うさぎ玉ほろほろ    西條奈加
11    恋文の技術    森見登美彦
12    火山のふもとで    松家仁之
13    光の犬    松家仁之
14    ひきなみ    千早茜
15    優雅かどうか、わからない    松家仁之
16    ハリー・ポッターと呪いの子    J.K.ローリング
17    PRIZE    村山由佳
18    死んだ山田と教室    金子玲介
19    バベル    R・F・クァン
20    spring    恩田陸
21    鳩の撃退法    佐藤正午
22    あえのがたり    加藤シゲアキ、小川哲ほか
23    天使も踏むを畏れるところ    松家仁之
24    フォース・ウィング    レベッカ・ヤロス
25    禁忌の子    山口未桜
26    月の満ち欠け    佐藤正午
27    ハジケテマザレ    金原ひとみ
28   たのしい保育園    滝口悠生
29    YABUNONAKA    金原ひとみ
30    二人の噓    一雫ライオン
31    君の顔では泣けない    君嶋彼方
32    キネマ探偵カレイドミステリー①    斜線堂 有紀
33    キネマ探偵カレイドミステリー②    斜線堂 有紀
34    キネマ探偵カレイドミステリー③    斜線堂 有紀
35    約束の果て 黒と紫の国    高丘哲次
36    楽園の楽園    伊坂幸太郎
37    フォース・ウィング② 鉄炎の竜たち    レベッカ・ヤロス
38    永遠の1/2    佐藤正午
39    最果ての泥徒    高丘哲次
40    熟柿    佐藤正午
41    天使は見えないから、描かない    島本理生
42    森田繁子と腹八分    河崎秋子
43    贖罪    湊かなえ
44    めぐり糸    青山七恵
45    あかり    瀬尾まいこ
46    アタラクシア     金原ひとみ
47    謎の香りはパン屋から    土屋うさぎ
48    六つの村を越えて髭をなびかせる者    西條奈加

49    それは令和のことでした、    歌野晶午
50    梧桐に眠る    澤田瞳子
51    エレガンス    石川智健
52    マリエ     千早茜
53    蜻蛉の夏    垣根涼介
54    ストーナー    ジョン・ウィリアムズ55    月ぞ流るる    澤田瞳子
56    夜明けまでに誰かが    ホリー・ジャクソン

57    ソヨンドン物語    チョ・ナムジュ
58    緑十字のエース    石田夏穂
59    派遣者たち    キム・チョヨプ
60    イン・ザ・メガチャーチ    朝井リョウ

 

≪小説以外≫
1    母親になって後悔してる、と言えたなら ―語りはじめた日本の女性たち―    依田真由美

2 地図なき山    角幡唯介
3    なぜ働いていると本を読めなくなるのか    三宅香帆
4    漫才過剰考察    高比良くるま
5    羽田圭介、家を買う。    羽田圭介
6    パリの砂漠、東京の蜃気楼    金原ひとみ
7    誰でも、みんな知っている     高橋源一郎
8    穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って    村岡俊也
9    これは、アレだな     高橋源一郎
10    ザ・エッセイ万博     万城目学
11    Street Fiction by SATOSHI OGAWA    小川哲
12    これも、アレだな だいたい夫が先に死ぬ    高橋源一郎
13    山奥ニート、やってます    石井あらた
14    挑む人たち。    奥野武範
15    幻獣ムベンベを追え    高野秀行
16    祖母姫、ロンドンへ行く!    椹野道流
17    LIFTOFF イーロン・マスクとスペースXの挑戦    エリック・バーガー

▼年越し本はこれでした。まさかイーロン・マスクに夢中になる日が来るとは。