旅と日常のあいだ

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史実にない国をめぐる、遥かなる運命。『約束の果て 黒と紫の物語』感想

高丘哲次『約束の果て 黒と紫の物語』を読んだ。

「本の雑誌」で、〈変な小説ですごくおもしろいけど内容は説明不可能〉と紹介されており、これ以上に興味をそそられる紹介文ってあるか?と思いながら手に取った一作。大森望さんが推していたのだが(私は大森さんの選書や書評を絶大に信頼している)、読んでみてもう最高だった。作者の想像力の広さと深さが、圧・倒・的!!!

大きなくくりでいうと「古代中国的な架空世界で繰り広げられるファンタジー」なんだけど、今までに見たことも聞いたこともない、あり得ないような設定があって、でもその世界観を鮮明に思い描けるし納得できてしまうのがすごい。物語にすっかり没入させる構成力と筆力のなせるわざ。物語中の彼らがどこにどう行きつくのか、期待や不安や緊張をもって感情移入しながら読んだ。

現代パートと古代の物語が複層になってるのもうまい。読者である私がずっと読んできたこれは、結局実際にあったことなのだろうか、それとも文字に書かれただけのまったくの創作なのだろうか、というメタフィクション的な視点。本当のところはわからないけれど、入れ子のような構造に惑わされてあれこれ想像することこそ読書の楽しみだともいえる。

壮大なボーイ・ミーツ・ガールものだという捉え方もいい。彼と彼女の間のあと5メートルが届かなくて、それを埋めるために五千と七十年の月日がかかったという果てしなさ。あぁ~~、ときめきすぎて胸が痛い。そして、タイトルにある「黒と紫」の意味がわかると、一面にそれが広がって視界いっぱいに散りばめられていくようなイメージが浮かんできて、その幻想性と切なさにたまらなくなる。ともかくいい作品だった。出会えてよかった。大好き……!

往年の日本ファンタジーノベル大賞っぽさがあるなあと思ったら、まさに受賞作だったことをあとから知る。中国系架空歴史ファンタジーという点で、第1回受賞作の酒見賢一『後宮小説』(これもすばらしい)を思い出した。