旅と日常のあいだ

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孤独を救う一条の光。『かがみの孤城』感想

 

辻村深月『かがみの孤城』を読んだ。

学校でもそれ以外の環境でも、自分の居場所がないと感じているあらゆる人に、そこだけがすべてじゃないよ、逃げていいし、その先にあなたを待ってる人や場所が必ず存在するよと強く強く伝えてくれる物語。

引きこもり生活をしている自宅の鏡の中に実はもう一つの世界が…という設定。こんなファンタジー要素満載な出来事は、残念ながら現実には起こらない(たぶん)。が、こんなファンタジーな話はあるわけないよと頭からはねつけるのではなく、ひとつの希望として悩める誰かに届いてくれ!と思った。

主人公が、人の目や心理を深読みしまくって緊張したり傷ついたりする心の動きの描写がとても丁寧でリアル。(やや丁寧すぎてしつこく感じる点もあったが)中学生ごろの多感な時期ならではの、こういう繊細さやしんどさってあるよなぁと思い返しながら読んだ。

最後に明らかになる、時間を超えた出会いと導かれ方の仕掛けがとてもよかった。人生悪いものじゃない、生きてないと味わえない奇跡があるよねということを信じられる結末。

いつかの自分がどこかの誰かを救い、そのことで未来の自分が救われるというような関連性が、ほかでもない自分自身にも、気づかぬだけできっとたくさん張り巡らされていると考えたら……。それだけで生きてる意味があるし、前向きになれる気がする。