旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


大人だけど歯医者で泣く。【ワザナカ】で正統派カスタードプリンを食べる。

歯医者にて、歯の型をとることになった。下の歯全体に粘土っぽいものをギュ~っと押し付けられ、だらしなく口を開けたまま待つこと3分。ある程度固まったところで、技師さんが粘土をスポッとはずしてくれる……はずが、どれだけ引っ張ってもはずれない。私の目にはタオルがかかっているので周りは見えないのだが、「あれっ、おかしいな、なんで? これで取れるはずなんだけど」とつぶやく声が聞こえ続けている。焦りが伝染するからやめてほしい。

3分4分と格闘してもいっこうにはずれる気配なし。そして、ものすごい力でぐぐぐと引っ張られるのでめちゃくちゃ痛い。歯も一緒に抜けちゃうんじゃない?というくらいの強さと痛さ。歯の根っこにまでズンズン響くような激痛に思わず顔がゆがむ。開いたままの口から、ンンアアアア”ア”ッ!!!という声にならない声がもれる。全身から一気に発汗し、両目の端から涙がこぼれる。大げさでなくマジでそういう状況。途中何度も、「痛いですよね、痛いですよね」と言われたが、いや、確認するまでもなく痛いに決まってるだろう!

しばらくして、技師氏が熟練の先生を呼んできた気配。「水!」「はい!」「エアー!」「はい!」という指示が飛び交い、二人がかりで粘土と格闘。型をとるだけなのに、オペでも始まったかのようなことになっている。まだまだいっこうにはずれない。どうなっちゃってんの?! 先生にも「痛いですよね、痛いですよね」と聞かれる。歯を根こそぎ持っていかれそうな痛みのあまりのつらさに、自分の意志とは無関係に涙が流れてとまらない。

始まったからにはやりきるしかないこの感じ、途中離脱が許されない痛みの押し寄せぶり。涙をこぼしてフガフガ言いながら、私は陣痛のことを思い出していた。いやもう、そんくらいのやばさ。日常ではちょっとないレベルの痛さだった。ほとんど気を失いそうななか、やっと粘土がはずれた。さっきまでの苦しみが一瞬でリセットされる開放感。生まれたーーー!! 「おめでとうございます、元気な男の子ですよ!」という空耳すら聞こえてきそう。いやあ、難産であった。しかしなんでこんなに手こずったのかね? 型どりの時間設定を間違えてるんじゃないのか? あー怖かった。

 

そのあと、次の予定までの時間調整のため、行ってみたかったカフェへ。金沢寺町のワザナカというお店。レモンソーダと、カスタードプリン(歯にやさしそうだから)。

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プリンのたたずまいにときめく。しっかり自立する固めプリンと、カラメルソースと、少しのホイップクリーム。余分な飾りはおかない、古き良きプリンの姿。味も食感も、これぞ求めていた「ザ・定番プリン」という感じで、見た目を裏切らない。とてもおいしかった。

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店内に大きな書棚があるほか、カウンター席にも本の並んだボックスあり。平野啓一郎からみうらじゅんまで、緩急さまざまな品揃えであった。広すぎず狭すぎず、席の間隔は広く、音楽のボリュームや店員さんとの物理的距離もほどよく、非常に居心地のいいい雰囲気。予定の時間まで、持参していた『三体』第三部を読みふけった。たいへんはかどった。歯の痛みも忘れ、「プリンがおいしかった」というポジティブな思い出が上書きされたので結果オーライ。