旅と日常のあいだ

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じわじわと恐ろしい、道尾秀介『いけない』

 

読者が参加する謎解きゲームのような趣向のミステリー小説。全4章。

以下、構成や内容に関する記述あり。

 

 

 

 

各章を読んだあと、章末にある図(写真)を見て、本文には書かれていない事実を知るという趣向。図を見たからこそ気づく真相に、ひっくり返るほど驚いたり困惑したり、意味がわかってめちゃくちゃ怖くなったり……だった。

真相や動機のすべてが書かれているわけではないので、読者それぞれの想像や解釈にゆだねられている部分も大きい。自分の読みが合っているのかどうなのか、他の人はどう読んだのかを知りたくて、読後、ネタバレ&考察サイトを漁りまくった。というかむしろ、早くネタバレサイトを見たいがために、大急ぎで読了した。そこまで含めてがこの小説の楽しみ方だと思う。

それにしても、第一章の叙述トリックにはやられた。初読時にはそうと思わず読んでいるわけで、あとで真相に気づいたときの、えっ嘘でしょそういうことだったの!?の驚きと、言われてみれば伏線があちらにもこちらにも…!の鮮やかさときたら。ミスリードうますぎない? しかもトリックがひとつではなくたたみかけ。なるほどこういうことか、のあとの追い打ち、さらにもうひとつ、という連発で頭こんがらがる。読んでてドキドキする、読書体験としては楽しいタイプの混乱。

第四章は、前三編のタネ明かし&後日譚という趣。それまで語られなかった謎の真相がほのめかされる。しかし、この章末に掲載されている写真は、意味するところの衝撃が強すぎて「ひいぃぃぃぃ!」ってなった。目を疑い、見たものが信じられなくていったん本を閉じ、また写真を見る。いやもうこれは、後味が怖い。そして第四章のタイトル「街の平和を信じてはいけない」が、すべてを読み終えたあとだとなおさら怖いのだった。

心臓に嫌な汗をかきながらも読むのをやめられなかった。写真で謎解きという企画の勝利。おもしろいながらも全体としてはゾッとする、そんなタイプの作品だった。