旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


暴風雨の住宅街であやうく遭難するとこだった

今日の金沢は夕方から大荒れ。雪混じりの冷たい暴風雨でひどい目にあった。

バスに乗り、行き慣れない町にある行き慣れない病院へ。ルートを勘違いしてたのと読書に気を取られていたため、下りるべきバス停を見逃して一つ先のバス停まで運ばれる羽目になった。ああいうとき、はっと我に返って状況を認識するタイミングって、なんで目的地を通り過ぎた直後なのか。だいぶあとでもなく直前でもなく、ドアが閉まって発車するかしないかの直後。しまったぁぁ!と舌打ちしたいんだけど、あわてているのを悟られたくなくていかにも平静を装っているあの感じ。

さも、「すべて予定通りです」という顔をして次のバス停で降りる。ここはどこ。傘が吹き飛びそうな強風に耐えながら、行き過ぎた道をとぼとぼと歩いて戻る。そういうときに限って運悪くバス停とバス停のあいだの距離が長い。しかも急な上り坂。ほうほうの体で病院にたどりつく。

診察が終わる頃には外は真っ暗。雨風の勢いが増している。最寄りのバス停は待ち時間が長いので、少し離れた別路線のバス停に向かうことにする。初めて歩く細く入り組んだ住宅街なので右も左もわからず、スマホの地図だけが頼りである。風はますます強くなり、あらゆる方向から吹きつけて傘をさすのもままならない。冷たい雨雪に太ももから下は全部びしょ濡れ、指先もスマホも冷え冷え。瞬間、ゴオオッという強風に巻き付かれるような感じになり、もう進めないわ、これ以上外にいると危ない気がするというレベルに。バスはやめて、先に帰宅している夫に車で迎えに来てもらうべく電話する。

……。出ない……。ちょうど保育園でのお迎え中かも……。その矢先、スマホ画面が漆黒になり、完全に沈黙した。ちょっと!! ついさっきまで残り38%だったのに、カウントダウンをすっとばして急にゼロになるのやめて!  連絡手段を失い、地図アプリも失い、知らない町の知らない道で途方に暮れる女。雨の中、ごちゃごちゃした住宅地は道の見通しがきかず、どの路地もおなじに見える。現在地も方向もよくわからず、もはや自力でバス停に行くのは無理。マジでこのまま住宅街で遭難して野垂れ死んでしまうかもと結構本気で考えた。

病院に戻ってタクシーを呼んでもらおうと思い、しかし今度は病院への行き方がわからない。わたしはどの道を通ってきたんだ? 暴風のダメージをやわらげるため民家の軒先やマンションのエントランスに張り付くように移動(完全に不審者)。どうにか大きな通りに出て、歩いてきたのとは全然違う回り道で病院に戻ってきたのだった。ゴーーーール!!と自分で自分を褒めてやった。本当は、ゴールどころかやっとスタート地点に戻ってきただけなのに。

受付の方に「あれっ?」という顔をされつつ、「タクシーを呼んでください」と依頼。そしたらこの悪天候でタクシーが出払っており、到着まで30分か40分かそれ以上かわからないとのこと。そんなに待ちたくないので丁重にお断りし、「充電が切れちゃいまして」と説明して電話を借り、夫に連絡をとった。館内に公衆電話がなかったからなんだけど、「電話機を借りる」という行為が久々すぎだ。夫は「今はとてもじゃないけど外に出られない状況だから、雨風が弱まったら行く」との答え。子を抱っこして傘さして車のドア開けて…って、暴風の中でひとりでやるのはしんどいもんな。

というわけで、出入口にいちばん近い席に陣取り、ひたすら外を凝視して待つ。こちらはメールも電話も受信できないので、到着したよの一報を受け取れないのだった。なんて不便なんだ。車のライトが近づくたびに立ち上がって外に出て、ちがった、この車じゃなかったとすごすご席に戻る。そんなことを何度か繰り返した数十分ののち、ついに現れた夫の車を見て、「助かった、住宅街での雪まみれな野垂れ死には回避できた」と思った。聞けば保育園でのお迎え時も猛烈な悪天候だったそうで、子は、車に乗り込む前の数秒間、顔に雨風の直撃を受けてかなりのショック状態だったとか。なかなか強烈なエピソードだな。

帰宅して、夕食は簡単にレトルトカレー。やたらとおいしかった。なにかに似てると思ったら、登山で疲れ果てた先にやっとたどりついた山小屋で食べるカレーのおいしさと同類。体にしみるのよ。あと、スマホのバッテリーが急激になくなる問題もどうにかせねば。

外では相変わらず風が吹き荒れている。明日起きたら外は雪かな。本格的な冬の到来。

 

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雨が降り出す前、路地の陰影が幻想的だなと撮影。あとでこの薄暗さに苦しめられ、写真なんか撮るからバッテリー切れになるんだよっ!と地団駄踏むことを、このときはまだ知らない。