旅と日常のあいだ

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柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

柚木麻子さん『本屋さんのダイアナ』を読んだ。

ダイアナと彩子、二人の少女の成長と友情。二人とも読書が大好きで、物語から力を得たり生きる指針にしている。赤毛のアンが主要なモチーフのひとつになっていて、赤毛のアンが好きな私は随所で「わかる~!」とうなずきながら読んだ。

『本屋さんのダイアナ』においては、自分の力でぐいぐい道を切り開いていくアンではなく、「待っているほう」のダイアナ的存在を肯定してくれるところがいい。少女の多くは、自分のやりたいことにまっすぐ突き進んでいけるアンに憧れながらも、アンにはなれない。でもそれでもいいんだよと、ダイアナ側の少女を勇気づけてくれる。

信念を貫いてぶれない姿勢はかっこいいけど、自分にそれができないからと悩む必要はない。自分がどんな環境や立場にあっても、いまできることをできる方法でやってみることが、自信や支えになるんだよと語りかけてくれる。それに、決してぶれないように見える人も、まわりから見えない部分に実はコンプレックスや悩みや迷いや怒りを抱えているんだよね。そんな当然のことを改めて思った。

ああ、この本を中学生か高校生のときに読みたかったなー。きっと今よりもっと心の奥底に響いて、自分のあり方やこれからを考えるひとつのきっかけになっただろうと思う。でも読むのに遅すぎるということはなくて、いつ読んでもそのときどきの視点や受け止め方で楽しめるのが読書のよいところ。小学校~大学時代までが描かれるダイアナと彩子の立ち位置だけではなく、その親の立場になってしみじみと読むことができるのは、私が年齢を重ねたのと実際に親になったからこそだもんな。

ダイアナと彩子の、一度途切れた友情の復活がまぶしくて嬉しい。本当はお互いのことをずっと気にかけてうらやんで尊敬しあっていた二人。本という共通項で深まる関係性も素敵だし、関係を再び取り戻す場所が本屋さんというところも素敵。読後、前向きな気持ちになった。

読書を通じて自分の成長に気づいたり人の気持ちに近づけるのってすごいことだ。それだから読書はやめられない。これからもたくさんの本を読みたいし、本の持つ力の大きさにもっと触れたい!と思わせる一冊だった。あと、作中に出てくる村岡花子訳の赤毛のアンを絶対読み返さねば、と思った。

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

 
赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ1―(新潮文庫)