旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


雪は強くパン屋は遠い。私は往生際が悪すぎる。

朝から晩まで吹雪の水曜日。仕事が休みだったので水曜と金曜しか営業しないあるパン屋さんに行ってみようと考えていたのだが、天気が悪すぎて外出はあきらめた。バス&徒歩10分の道のりなのだけど、行ったことのないおそらくせまい住宅街を、深さ10~20センチくらいのびしゃびしゃ雪がたまっている状況で地図を見ながら進むことが億劫になったので。仕事なら行くけど(行かざるを得ない)、パン屋さんは不要不急だもんね。

といっても、断念するまでには気持ちが二転三転。一度は行くつもりで防寒対策ばっちりで外に出たのだが、通りに出たところで風がびゅうううんと強くなり視界が一瞬で真っ白に。ホワイトアウト!? いや、メガネが曇っただけだぞと冷静にツッコミつつ、視界と足元の悪さにやる気をなくしてすぐ帰宅。

しかし30分後、雪が小降りになってきて、なんなら雲の切れ間から日の光も見えたりして、これなら行ける!と思い直して再び出陣。ストーブを消し、脱いだコートを着直し、マフラーを巻き手袋をはめニット帽をかぶりブーツのひもを締める。メガネが曇るのは相変わらずだけど、びちゃびちゃ雪をかきわけてなんとかバス停手前の交差点までやってきた、そのタイミングで、乗るつもりのバスがスーッと走り去っていくのが見えた。待って待って、乗りますーーー!という私の念は届かぬまま。再びやる気をなくして帰宅。これはもう、今日は外出するなという神の思し召しに違いない。このあと絶対に翻意はせぬ!と誓う。いつのまにか雪も強くなってきたことだし。

と・こ・ろ・が。パン屋訪問の夢を捨てきれない私、部屋にいてもバスの時刻と空模様ばかりを気にしてちっとも落ち着けない。30分ほど経ってまた雪がおさまってくると外出意欲がわいてくる。雪が降ろうが足元がびちゃびちゃだろうが、本気で行こうと思って行けないわけがあろうか、いやない! 先ほどの誓いをあっさり撤回し三度目の外出。ストーブを消し、コートを着て、マフラーを巻いて(以下略)。

今度はバス時刻にちゃんと間に合ってあとはバスが来るのを待つばかり。一体、さっきまでの私は何をごちゃごちゃとパン屋に行けない理由を並べていたのかしら…。と思う間にも風が強まってきて、細かい雪が上から下から視界全面びっしりと覆う始末。えっ何これやばい、こんな真っ白でずぶ濡れでびちゃびちゃな中を、わざわざバスに乗ってパン屋に行こうだなんて正気か? 無理無理無理。別に今日じゃなくてもいいよね、退却だ! というわけで、いま来た道を引き返して三度目の帰宅。今度こそ絶対に、もう出かけたりなんてしないぞ、絶対だ、ってつぶやきながら。

家に着いたら無性に疲れた。私は何をやってるんだろうか。最初の外出(未遂)からすでに1時間半が過ぎている。雪の中を行ったり来たりコートを着たり脱いだり、こんなことしてる間に普通にパン屋さんを往復できたのでは。そして気づけばお腹が空いている。料理する気もわかないので、家にあった食パンをそのままかじった。トーストもせずキッチンに立ったまま。なんだこれは、素敵なパン屋さんで素敵なパンを買うという選ばなかった未来との落差が激しすぎて笑えてくる。そしていま、「パン屋さんに行かなかった」というだけのことに1400文字も費やしている自分にもちょっと笑える。いつか行けたらまた報告します。とりあえず、雪はもういらん。

 

▼雪つながりでもないけれど、南極に行ったときの話。3年前のちょうどこの時期に17日間の旅が始まったので記念に貼っておく。最近よく写真を見たり旅行記録を読み返したりして、すごいところに行ったよね、思い切ってよかったねと夫と話している。

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