旅と日常のあいだ

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凪良ゆう『わたしの美しい庭』

凪良ゆう『わたしの美しい庭』を読んだ。すごく好きだった。読後感さわやか。屋上庭園にあふれる光や緑、そこに集う人たちの優しさやまっすぐさを思って、心がキュッとなる。開放感のあるカバーイラストが、読後の印象にぴったり。

登場人物の多くが世間の「普通」からはみ出した事情を抱えていて、章ごとに主体が変わりながら物語がつながっていく。血のつながりはないけれど親子として暮らす父娘、同性愛者であることを家族に拒絶された男性、仕事に追われてうつ病になった男性、高校時代に亡くした恋人を思い続ける未婚女性。状況としてはヘビーな面が多々あるけれど、読んでいて重苦しい気持ちにならなかった。凪良さんの文章は読みやすい。透明感のようなものがある。テンポも私にあっていた。

そもそも、「普通」からはみ出している、なんていうのは、自分のことを普通で多数派で一般的だと考えている人による勝手な分類に過ぎないのだよね。どんな自分であっても、自分の意志や感覚を信じることはできる。そして、他者のあり方をそのままに認めようと努力することもできるはず。登場人物たちが、ときに打ちのめされそうになりながらも現実から目を背けることなく立ち上がる姿勢が愛おしかった。彼らみんなに、幸せになってほしい。

あと、この素敵な庭がきっとどこかにあって、登場人物たちがお茶をしながら話しているんだろうなと想像すると、なんとも穏やかで明るい気持ちになる。

▼作中、印象に残った文章。

 ”形がないって自由でいいねというと、形があっても自由にしていいんだよと返される。”

 ”人の心のうちなんてわからない。けれど、それでも、今かすかに触れたかもしれないと思える瞬間、それがあれば十分だと思える。”

 ”事実というのものは存在しない。存在するのは解釈だけ(ニーチェの言葉の引用として)”

わたしの美しい庭

わたしの美しい庭

  • 作者:凪良ゆう
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: Kindle版