とても好きな小説だった。少女が主人公の作品に私が期待するものが全部詰まっていた感じ。少女ならではの自意識や清冽さや意地や純粋さは、読んでいて息が詰まりそうなほど苦しいのに、同時にまぶしくてきらきらして見える。
舞台は北海道に新設された中高一貫の女子校。地元出身の特待生で誰もが憧れる美貌をもつ少女と、東京出身でピアノと学業に優れた少女が出会い、学年主席を争うなど互いに思いっきり意識しながらもそれを口には出さずにいる。二人とも、周りから見ればうらやましい才能と境遇なのだけど、実はそれぞれ人に言えない悩みをもち強い劣等感を抱えている。
10代の頃の逃げ場のなさ、現状を打破したいのにその方法がわからないもどかしさ、現状に甘んじることもできるけどそれを認めたくないという潔癖さ。彼女たちの孤独や虚勢がどうしようもなく伝わってきた。それだからこそ、友人や近しい大人のなんでもないような言葉や態度が彼女たちの救いになるとき、読んでいるこちらも本当に救われた気持ちになった。
作中に登場する印象的なフレーズで、帯にも書かれているのがこれ。
「絶対大丈夫。人が思うよりもずっと、この世で奇跡は起きるから。」
本文を読む前は、楽天的なセリフだな~と思うのみだったけれど、読後、こんなにも強力で希望のある呪文はないなと思い直した。実際、人生には奇跡的に思えることが起きる。浮いたり沈んだりしながらも、悪いことばかりでは全然ないよと、一足先に大人になった者として少女たちに声をかけてあげたい。
ラスト近く、主人公たちが心の素直な部分を相手に見せるところ、それを拒まずに互いが受け入れる気持ちになるところがうれしかった。作品の結末もよかった。できれば、高校卒業後の、さらに未来の彼女たちのことも知りたいなあ。
▼少女が主人公の小説ではこちらもおすすめです。